見出し画像

社会実装してナンボでしょ

前回の”9つの数字から考える”という投稿の中で、マーケット規模と社会実装に大きな乖離があると感じていると書いたが、今回はその点をもう少し深堀りしてみる。


なぜマーケット規模と社会実装に大きな乖離が生まれているか?

それを大きく5つに大分すると、以下のようにまとめることができる。

1) エッジに対する期待値が高すぎる
2) エッジの技術が追いついていない
3) 現場が各々が抱えていることが解決できる問題として認識されていない
4) IT技術者の不足
5) 経営判断として投資ができていない

1)2)に関しては、新たなテクノロジーが生まれるたびに必ず起きる通過儀礼的な問題で、本質的に技術や可能性を理解している人が少なく、その他周辺の人々が断片的な情報から自分なりの補助線を引いてしまう。しかしその補助線が大幅にずれてしまうことが多々あり混乱が生じる。

あとは、作っている側も前のめりになりすぎていて、必要以上に製品を大きく見せてしまう場合が多い。誇大広告とまではいかないにしても、半年〜1年先ぐらいのRoadmapにある内容も2〜3ヶ月で実装可能のように強がってしまうため、聞いている側に不要な期待感を抱かせて混乱させてしまう。

この手の話のときによく目にするGartner のHype Cycleを見ると、一目瞭然だと思う。

画像1

Edge Computingをこのグラフに当てはめると、今ようやく“Slope of Enlightenment” に差し掛かったところ。ちょうど1年ぐらい前にマーケットの幻想が解け初め、そこから生き残ったエッジとそうでないエッジとで選別され始めた。
生き残っているところに共通していることは、きちんとお客さんやマーケットとの対話を重ねている、すなわちきちんとマーケットと自分の立ち位置を理解し、今そこにある問題を解決し続けている点だと思う。

スタートアップをやっていて常々思うのは、以前も書いた“ピボットの重要性”に尽きる。何かに固執するのではなく今自分たちの置かれている状況を常に理解して、どう環境が変化しているか見極めつつ判断をしていく。
マーケティングに偏りすぎるとさっきの幻想を生み出す元になり、幻想バブルが弾けたあと生き残ることはできない。かと言って全く何もしないと、一切日の目を見ることなく、風前の灯的な経営となり墜落する。

絶妙な高度とスピードを保ちながら最小の消費燃料で航続することを要求される。スタートアップでよく使う単語に、”Runway”や”Burn Rate”などあるが、本当に本質を捉えた単語だ。

3)に関しては、現場の人が常日頃抱えている課題を、その場その場で人手で乗り越えていくケースが見受けられる。やはり現場では人が足りていない、時間がない、膨大な作業の中で改善をするのが後回し、など日々ぎりぎりのオペレーションをしていることが多い。

そんな中いきなりエッジコンピューティングで解決しましょう、なんて言われたって、「兄ちゃん何言ってんだ?」ってことになる。

これはその後の4)5)とも関係する点だが、もし現場にITに詳しい人間がチームとしてきちんと入れば、その部分のカルチャーも含めたギャップを埋めることが可能だが、この慢性的なIT人材不足の中そんな人材は現場になかなか居ない。

やはり解決するには、最終的にはお客さん企業が会社としてどうするか?どうしたいか?という経営判断にかかっている。

これは別にエッジコンピューティングだけに限った話ではなく、クラウドやAIなど何をやるにしても、会社として真剣にIT・デジタル化に投資をしなければ何も前には進まない。

どんなに現場が幾ばくの予算を振り絞って頑張ったって、すぐに立ち行かなくなる。
だからPoCの屍の山になっている。

もうこの現実は見飽きたし聞き飽きた。

社会実装してナンボでしょ。

"The value of an idea lies in the using of it."
--Thomas Edison, co-founder of General Electric


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?