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プロダクトは究極のエゴから始まる

この記事は、プロダクトマネージャー Advent Calendar 2020 11日目の記事です!

こんにちは!マネーフォワードのプロダクトマネージャーの後藤です!
来年リリース予定の新規プロダクトのプロダクトマネージャーをしています。

社内で「酔っ払いが書いたブログ」と評された前回の記事とは打って変わって、今回は真面目なことを書きます。今回は酔っぱライターではありません。ご期待いただいていた方がいらっしゃっいましたら、申し訳ございません。

僕らはどんな世界を目指す?

僕はプロダクトマネージャーなので、毎日プロダクトに関わっています。
読んでくださっている皆様も、何かしらの形でプロダクトに日々関わっている方が多いんじゃないかな、と思います。

プロダクトは、何かしらの価値をユーザーに提供するものです。
価値にはいろいろな種類があると思います。一般的には何かしらの課題に対するソリューションが価値であることが多いように思えます。
B2Bのプロダクトは特にその色が強いです。僕が作っているプロダクトもB2Bのプロダクトなので、例に漏れず、ユーザーの課題を解決するようなプロダクトを目指しています。

課題とは、理想と現状とのギャップです。
理想がない限り、そこに課題は存在しません。

この理想、言い換えると「目指す世界」はどうやって決まるものだと思いますか?

最近はプロダクトマネージャー関連のナレッジも日々増えているので、課題の発見方法や、その課題に対するソリューションの考え方などのナレッジはよく見かけます。
一方で、その課題を生み出す大元の、「そもそも僕らはどんな世界を目指すんだっけ?」についてのナレッジはまだあまり見かけないように思います。

今日はこれを考えるアプローチを一つ、シェアします!
「僕らはどんな世界を目指すんだっけ?」「その世界観をどう扱えばいいんだっけ?」
こんなことに対する自分の考えをつらつらと書いてみます。

突破するデザイン

「僕らはどんな世界を目指す?」を考える上で、とても参考にさせていただいた本があるので、はじめに紹介します。
ロベルト・ベルガンティ先生の「突破するデザイン」です。

従来、目指すべき世界がある程度決まっている状況下では、その世界を実現するためのソリューションを考える、すなわち問題解決のイノベーションが主流でした。
ここでは「外→内」向きのアプローチが王道です。このアプローチは、ユーザーや他者などから課題を発見し、それに対してソリューションを検討する、という類のものです。
このアプローチでは数多くのソリューションが生まれます。そして全てのソリューションが今よりも少しいい世界、すなわち今の世界の延長線にたどり着くためのものです。

一方で、現代は目まぐるしく環境が変わっているので、今の世界の延長線にたどり着くだけでは置き去られてしまいます。生き残るためには、イノベーションを起こす必要があります。
イノベーションを起こすためには、従来の意味に囚われない、新しい意味を考えることが大事です。その際は、従来と逆の「内→外」のアプローチが有効です。そのアプローチとは・・

みたいなことが書いてあります。

本の後半では具体的な方法論が書いてあり、当記事はそれを教科書として実践してみた内容が多く含まれます。

僕らのプロダクトってなんであるんだっけ?

僕らがプロダクトを作るときも、必ず同じ問題に突き当たります。
僕らはどんな世界を目指すんだっけ?僕らのプロダクトの意味ってなんだっけ?

そこで目指す世界が今の延長線ならば、次は課題を見つけてソリューションを考えるステップです。
でも、今の世界の延長線を良いと思っていないなら、自分で新しく目指す世界を生み出すしかありません。

その世界はまだ誰も知りません。ユーザーに聞いても、他人に聞いても、出てくるものではありません。
自分で考えて、作り上げるしかないんです。

どうやって目指す世界を考える?

自分で考えて作り上げる方法は本当にたくさんあると思います。
自分でじっくり考えたり、チームで議論したり、他ドメインの勝ちパターンを輸入したり。
特に体系化もされてないですし、王道の考え方もまだないです。ここは本当に自由ですし、逆に一つの方法に囚われるべきだとも思いません。
目指す世界を考える人が、その人に合った方法で自由に考えるのが一番だと考えています。

僕も、僕らのチームも、自由に考えてみました。適宜突破するデザインに頼りながら、基本は手探りで進めました。
方法論の一つとして、僕らのプロセスをシェアします!こういう人、こういう考え方もあるんだなぁ〜なんて目で読んでみてください!

僕らのアプローチ

大きく3つのステップで目指す世界を言語化しました。
1. ドメインの解像度をあげる
2. 自分の中で言語化する
3. チームと壁打ちする

1. ドメインの解像度をあげる
元々ドメインエキスパートではなかったので、まずはドメインの解像度をあげることに注力しました。

ここでは特定の方法に囚われることなく、思いつくこと全てを片っ端からやっていくスタイルでした。
具体的には、社内外を問わず、ユーザーへインタビューしたり、書籍やWebで知識をインプットしたり、実務をされている様子を後ろで眺めたり、といったことを行いました。
なるべく解像度高く理解するため、メインの業務だけでなく、些末なサブタスクや、イレギュラーなどもきちんと把握するよう、心がけていました。

解像度にゴールはないので今も同じ動きは取り続けていますが、ある程度一通り把握できたな、と感じたタイミングで2のステップに進みました。
具体的には、業務に対する「それってどういう業務?なんのためにあるの?」という質問を自分の言葉で説明できるようになったり、業務について実務の方とあるべき論をディスカッションできるようになったり、といったくらいのレベル感です。

2. 自分の中で言語化する
ドメインの解像度がある程度上がったと思った時点で、自分の中でどういう世界を作りたいのか、を言語化しました。

このステップでは、後でチームと壁打ちするための叩きを作るのが目的です。
そのため、自分の考えを収束・洗練させるというより、自分の考えを拡散・展開させることを意識しました。
元々ドメイン知識がなかったので、ドメインの解像度をあげる上でたくさん違和感を感じるポイントがありました。そういった違和感を言葉の種として、どんどんと言葉を紡ぎ出すイメージです。
「自動」「手作業がなくなる」「給料日の後に特に意味なく口座を見に行くような感覚」など、言葉のフォーマットにも拘らずにどんどんと言葉を出しました。

日々情報が増えるに従って紡ぎ出す言葉もどんどんと増えてしまうので、一旦時間でお尻を決めて3のステップに進みました。

3. チームと壁打ちする
2のステップで洗い出した言葉群を叩き台に、どんどんと磨いて行きました。

チームメンバーには、基本的に批判的な姿勢で叩いてもらいました。「なんでそう思うの?」「それってどういう意味があるの?」といった問いを中心に、言葉群の幹の部分はより深化させ、逆に些末な部分を削り、を繰り返します。
チームメンバーの考えなども織り交ぜながら、だんだん言葉群を一つの塊に収束させていき、最後に僕が納得できるような一文に落とし込みます。

自分が心から納得し、これを実現するためなら何を注いでも惜しくないな、と思えるような世界観を作りあげられたら完成です。とある日の夜に3時間くらい時間をとって、一気に進めました。
突破するデザインのフォーマットに倣って、「私たちは〜〜を作る。なぜなら〜〜からだ。」という文章をアウトプットとしました。
また動画も撮ることで、後からでもプロセスを見返せるようにしています。

このようにして、僕らのプロダクトが目指す世界を言葉に落としました。僕らが本気で目指している世界です。
まだリリース前プロダクトなのでなかなか外には出せていないのですが、少なくともプロダクトの説明をする際には必ず伝えていますし、社内共有資料でいつでも見れるようにはしています。

出来上がった目指す世界観をどう扱う?

出来上がった世界観には、誰よりも自分が情熱を注ぐべきだと思います。

今までの世界の延長線とはズレたところにあるので、初めは誰も理解してくれないかもしれません。もしかしたら批判や反発もあるかもしれません。
それでも自分はその世界観を信じて、そして理解してもらえるまで真摯に伝え続けるしかない、と考えています。

周りに世界観を伝える上で、自分がその世界に熱中していなければ、周りの人は必ずそれを見抜きます。
産みの親が、そして伝えてくる人が熱中していない世界なんて、誰も好きになるわけがありません。

自分が熱中して、そしてその世界への情熱を語るからこそ、その世界に共感してくれる人も現れます。そういった人たちがユーザーになってくれるんだと思います。
自分が狂うほど愛しているからこそ、ユーザーも安心してその熱に巻き込まれに行けるんです。

全て、自分が世界観に誰よりも熱狂しているからこそ生まれるんです。

プロダクトは究極のエゴから始まる

ここまで書いてきて、自分勝手だなこいつと思われている方も多いんじゃないかと思います。
そうなんです、明らかにエゴなんです。

でも、本当に価値をうむ、そして本当に愛されるプロダクトってそういうものなんだと思います。
自分のエゴから作り出した世界観を狂うほど愛して、そして一緒に愛してくれるユーザーを探す旅、それがプロダクトマネジメントなんだと僕は考えてます。

これからも僕らが目指す世界観、そしてプロダクトを誰よりも愛しながら、プロダクト作りを邁進していきます。
リリースした際には、ぜひその愛を語りにいかせてください!

それではまたリリースしたときに。

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