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中国黒河流域において水資源に関する研究

世界中の灌漑農業地域における地下水の過剰揚水による地下水位低下の問題の例に違わず、 研究対象地域である中国甘粛省黒河流域においても、 中流域での灌漑水の利用によって、下流域に河川水が届かなかったり(河川の断流)、 地下水位の低下が報告されている。近年は河川水利用の規制が強化されたことで、河川の断流は改善されつつあるが、 中流域では河川水の代替として地下水の利用量が増えており、地下水位の低下を招きかねない状況となっている。

先行研究では、乾燥地での地下水涵養(地下水が「できる」こと)プロセスは、 その地域の特性によって大きく異なることが知られている。 それに対して地下水の化学的特徴から地下水涵養プロセスを探っていくという手法が有効な手段であるが、 化学的特徴からでは地下水の量的な推定は難しい。

そこで本研究の目的は、半乾燥地域である中国北西部黒河中流域の灌漑農業地域において、 人間活動を含めた地下水の涵養・流動プロセスおよび河川と地下水の交流関係を解明することを目的として、 無機溶存成分、酸素・水素安定同位体比、トリチウムなどのマルチトレーサーを用いた調査を、 2008年9月および2010年8月に行った。2008年には黒河および支流の梨園河を含めた灌漑地域全体を対象に、 2010年には中流域の村落である平川(Pingchuan, 以下PIC) 地域に絞って現地観測を行った。 加えて地球化学的なデータおよび地下水滞留時間などを用いて、地下水の更新性についての検討を行った。

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詳しくは、以下の論文をご覧ください。
●Abe, Y., Tsujimura, M., Nakawo, M. (2014): Groundwater Recharge Revealed by Multi-tracers Approach and EMMA in Semi-arid Irrigated village, Heihe River Basin, Northwest China. Journal of Arid Land Studies, Vol.24, No.1, p97-100.
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●安部 豊・辻村 真貴・中尾 正義・肖 洪浪 (2016): 中国・黒河流域の灌漑地域におけるトレーサー手法による地下水涵養プロセス. 水文・水資源学会誌, Vol. 29, No.5, p283-293. DOI: 10.3178/jjshwr.29.283
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