イカと大根が時間を共有すれば

厚めの半月切りにした大根
米の研ぎ汁がないので
水にひとつまみの米を入れて
大根を炊いてやる
沸騰したら火を止めて
鍋のまま冷ます
冷めた頃には
大根が透き通る

立派なシロイカ(ケンサキイカ)を
二杯頂いた
まだ活きている
指で触ると
色が変わるくらい

刺身
天ぷら
昆布締め
なめろう

何にして食べようかと
思案している内に
大根の煮物が食べたくなって
ついでにイカと一緒に
炊いてしまえ
という思いに至った

シロイカは
下足と内臓を胴から引き抜いて
目と内臓とクチバシを取り除き
食べやすい大きさに切る

鍋に湯を沸かす
沸騰しない程度の熱湯で
イカを湯通し
火が通ったら湯から上げる

鍋に大根とイカを入れ
砂糖と酒を入れ
落し蓋をして
火にかける

沸騰する前に火を弱め
醤油と味醂を加え
アルコールが飛んだあたりで
火を止める

あとは冷めるまで放置

音が聞こえる
大根にイカの旨味が
染み込んでいく音だ

台所に広がる
煮物の匂い
煮物の時間

待つ間に
部屋を掃除したり
選択したり

その間に
大根とイカの時間は
積み重なっていく

大根が色付いた頃

大根の育った時間と
イカの育った海に
思いを馳せながら
美味しく頂く

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