税率の課税自主権 ~京都市は住民税が高いは本当か~
はじめに
「京都市は財政が厳しいから住民税(個人市民税)が高い」という声を市民からいただくことがあります。
自治体には課税自主権があり、自治体の権限で税率を決める裁量権があります。その中で、住民税の仕組みを理解するとともに、京都市や他都市の住民税の課税実態を知って頂きたいと思います。
税率の種類と個人住民税の税率
地方税は、大別すると「一定税率」「標準税率」「任意税率」の3つの税率に分類されます。
「一定税率」は国が決めた税率で自治体に裁量権がないものです。
「標準税率」は国が通常の税率を定めているものの、自治体に裁量権があり「制限税率」を上限とした範囲内で自治体が税率の上げ下げができるものとなります。
「任意税率」は、国が通常の税率を定めておらず、「制限税率」を上限とした範囲内で自治体が税率を自由に決められるものとなります。
個人住民税は、制限税率のない標準税率です。標準税率は、均等割が5,000円(道府県が1,500円、市町村が3,500円)、所得割が10%(道府県が4%、市町村が6% / 政令市は道府県が2%、市が8%)となっています。
住民税の超過課税
個人住民税を標準税率を超えて課税することを超過課税と言います。令和3年度の超過課税の状況は以下の図の通りです。
個人住民税の均等割は、市町村では横浜市と神戸市のみが超過課税となっており、道府県では46道府県のうち37府県が超過課税となっています。所得割は、市町村では兵庫県豊岡市のみが超過課税で、道府県では神奈川県のみが超過課税です。
京都市在住の場合、所得割は標準税率通りで府市あわせて10%、均等割は森林環境税分の府民税600円が超過課税として上乗せで府市あわせて5,600円となっています。
都道府県の均等割の超過課税は、森林環境税で宮城県が1,200円と最高額で、以下、岩手県・山形県・福島県・茨城県・岐阜県・三重県が1,000円、秋田県・滋賀県・兵庫県が800円、栃木県・群馬県・愛媛県が700円、京都府が600円、富山県・石川県・山梨県・長野県・愛知県・奈良県・和歌山県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・高知県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県が500円、静岡県が400円、神奈川県・大阪府が300円となっています。
市町村の均等割の超過課税は、横浜市が900円、神戸市が400円となっています。
所得割は、税率なので所得によって税額は変わりますが、神奈川県がプラス0.025%、豊岡市がプラス0.1%となっています。課税所得400万円でそれぞれプラス1,000円、プラス4,000円の税額となります。
名古屋市と田尻町の住民税の減税
一方で、個人住民税の減税を行っているのが、名古屋市と大阪府田尻町です。
名古屋市は、均等割がマイナス200円の3,300円(愛知県の超過課税500円を考慮するとプラス300円)、所得割がマイナス0.3%の7.7%となっており、課税所得400万円であれば税額でマイナス11,700円となります。
田尻町は、均等割がマイナス300円(大阪府の超過課税300円分を減額)、所得割がマイナス0.6%の5.4%で、課税所得400万円であれば税額でマイナス24,000円となります。
余談になりますが、標準税率が定められていると、超過課税の場合でも、減税の場合でも、地方交付税の算定は標準税率で計算されるため、地方交付税額には影響がありません。
京都市の住民税が高いは本当か
ここまで見てきました通り、京都市の個人住民税は、ほぼ中間値と言えますから、京都市の住民税が高いということはありません。
むしろ、自治体によって差が出るのは、上下水道料金や国民健康保険料になりますが、こちらも京都市は両方とも目立って高いということはありません。
おそらく、財政危機への対応で行財政改革が行われ、学童保育の利用料や各市営施設の使用料の値上げを行ったことによるイメージが先行しているのではないかと推察されます。
まとめ
京都市は財政が厳しいから住民税が高いという声がある
個人住民税は、均等割が5,000円、所得割が10%の標準税率が定められているが、課税自主権により超過課税・減税ともの行うことができる
個人住民税の超過課税をしているのは、大半の道府県とごく一部の市町村で、京都市は超過課税をしていない。ただし、京都府は年額500円の超過課税をしている。
個人住民税の減税をしているのは、名古屋市と大阪府田尻町。
京都市在住の場合の個人住民税は、ほぼ中間値で高くはない。
上下水道料金や国民健康保険料は、自治体によって差が出るが、京都市は目立って高くない。
行財政改革による利用料・使用料の値上げのイメージが税金も高いと連想になっていると推察できる。
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