税の徴収率の落とし穴 ~捕捉できていない税~
はじめに
京都市の令和3年度の市税徴収率は99%と極めて高い数値です。全国的に見ても、令和2年度実績で全国平均が98.7%と同様に高水準となっています。
しかし、徴収率とは、納税金額が確定し納税者に通知された税のうち納入された率でありますから、捕捉されていないものは分母に入っていません。
高い徴収率の裏で、捕捉されていない税の実態について、知って頂きたいと思います。
徴収率向上の取組み
京都市も、平成初期は徴収率が90%前後で約1割の税が徴収できていない状況でした。口座振替やクレジット収納の推進、督促や差押えの強化、弁護士等の専門家の活用など、この30年間で様々な取組みをして徴収率99%まで向上させてきました。
歳入増の施策の1つとして、徴収漏れを改善してきたわけです。全国の他の自治体も程度の差はありますが同様です。
この取組みは、素晴らしいことではありますが、一方で、冒頭にも書きましたが、徴収率はあくまで税額確定して納付書が手元に届いた税のうち、納税されたのがどの程度かということですから、捕捉できていない税があれば、徴収すべき税(徴収率の分母)に反映されません。
償却資産税にみる捕捉できていない税
償却資産税は、機械や備品、建物の付属設備(内装や空調等)などの事業用の固定資産(10万円以上の資産)に課税する固定資産税です。毎年1月1日に保有している対象の固定資産を市町村に申告し、保有資産の評価額の1.4%が課税されます。ただし、資産評価額の合計で150万円未満の場合は免税となります。申告受理から課税、徴収まで市町村が行います。
京都市の場合、償却資産税を申告している事業者数が3万数千社ですが、京都市の全事業者数は約7万社あります。対象資産を全く保有していない場合は申告義務はないものの、半分以上の事業者が10万円以上の資産を全く保有していないということはあり得ません。
つまり、申告義務があるにもかかわらず、無申告のため、京都市が捕捉できていない事業者が相当数あるということです。国税であれば、税務調査で捕捉していくわけですが、市税事務所では人員体制などの制約から十分な捕捉が出来ていないのが実態です。なお、これは全国どこの自治体も同じ状況です。
徴収率だけでなく捕捉率向上に取組む必要性
償却資産税は市町村で完結しているため象徴的に取り上げましたが、税務調査の網に掛からず所得の捕捉が漏れていることで納税されていない住民税(国税の所得税や法人税と連動する)も多くあるでしょう。連動して、国民健康保険料や介護保険料なども捕捉漏れが想定されます。
京都市の場合は、既に施行されている「宿泊税」や近々施行予定の「空き家・別荘税」などの独自の法定外税もありますので、これらの捕捉漏れも一定程度は発生するでしょう。
高い徴収率の裏で捕捉されていない税が、各税目で相当金額にのぼることが推計されます。徴収率99%を100%に近づける努力も必要ですが、現状の数字を踏まえると捕捉率を高めることの方が必要な取組みです。
まとめ
京都市の税の徴収率はこの30年間で大幅に改善し、99%という高水準。
全国の他の自治体も様々な取組みで同様に高い徴収率を実現。
徴収率は税額が確定して納付書が手元に届いたもののうち、どれだけ納税されたかなので、捕捉できていない税は分母に入っていない。
事業用の固定資産に掛かる償却資産税、京都市の全事業者の約半分しか申告されておらず、捕捉漏れが相当ある
償却資産税は捕捉漏れの一例で、他の税目でも同様に捕捉漏れがあると推測される。
徴収率の向上はもはや余白無し、捕捉率向上の取組みが必要。
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