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経営健全化出資債 ~京都市財政を苦しめる市営地下鉄~

はじめに

京都市の財政危機の一因としてよく言われるのが、建設がバブル期と重なった市営地下鉄東西線の負債です。

公営企業である市営地下鉄の経営状況と、それがどのように京都市の財政に影響をしているのかを知って頂きたいと思います。


京都市営地下鉄の歩みと業績推移

京都市営地下鉄は、南北に走る烏丸線と東西に走る東西線があります。

烏丸線は、昭和56年に北大路~京都間が開業し、昭和63年に京都~竹田間、平成2年に北大路~北山間、平成9年に北山~国際会館館がそれぞれ延伸され開業しています。

東西線は、平成9年に醍醐~二条間が開業し、平成16年に醍醐~六地蔵間、平成20年に二条~太秦天神川間がそれぞれ延伸され開業しています。

平成20年度 京都市高速鉄道事業経営健全化計画
平成20年度 京都市高速鉄道事業経営健全化計画

東西線の着工が平成元年だったためバブル期に工期が重なり、総事業費が当初の2倍以上の5,500億円まで膨らんだことと、烏丸線と合わせて1日389,000人の乗客を見込んでいたのが、平成11年度では302,000人と大きく下回ったことで、同じく平成11年度では毎日5,000万円以上の赤字を垂れ流すこととなってしまいます。

平成20年度 京都市高速鉄道事業経営健全化計画

ただし、赤字と言っても、日々の運営費は運賃収入で賄えているのですが、建設費用を分割して計上する減価償却費により赤字となり、資金繰り面では建設費用の借金の元利の返済資金が不足するという状況です。

その後は少しずつ乗客数が増え、また、経営改善によるコストカットも行ったため、平成19年度には1日の赤字は4,300万円まで縮減できていますが、依然として厳しい経営環境でした。この巨額の赤字が続いたことで、累積資金不足が膨らみ、平成21年度には財政健全化法に基づく経営健全化団体に転落してしまいました。

京都市交通局市バス・地下鉄事業 経営ビジョン【改訂版】(2021-2028)

経営健全化団体に転落してからは、国にも経営改善計画を出しながら経営改善(人件費・経費の削減や企業債の借換による利子負担の軽減、設備更新期間の延長など)を繰り返し、また、インバウンド特需にも助けられ、平成27年度に黒字化、平成29年度に経営健全化団体の脱却に成功します。令和元年には1日の乗客数が400,000人/日に到達しています。

しかし、コロナ禍に突入し乗客が激減し、令和2年度が267,000人/日、令和3年度が295,000人/日と大変厳しい状況に陥り、令和3年度に再び経営健全化団体に転落し、現在に至ります。


経営健全化出資とは

経営健全化出資とは、平成15年度に国において創設された制度で、全国的に経営状況が厳しい地下鉄事業について、財政基盤の強化を図るため、国が健全化団体の指定を行い、起債措置に基づく一般会計から出資を認めるものです。

つまり、自治体で「経営健全化出資債」という市債を発行して資金調達し、その資金を「経営健全化出資」という形で、地下鉄事業の赤字の補填にまわすことができるという制度です。

京都市は、この制度を使い、平成16年度から平成30年度の15年間で、累計1,200億円の「経営健全化出資債」の発行と「経営健全化出資」による赤字補填を行いました。

経営健全化出資債は、通常の市債と違い、返済時に国からの支援のない(交付税措置がない)特例的な市債ですので、累計1,200億円の借金は京都市が全て自力で返済しなければなりません。

※特例的な市債に関する詳細はこちらを参照下さい。


経営健全化出資債の財政的インパクト

令和3年度京都市決算資料

京都市の令和3年度の決算時点では、経営健全化出資債の残高は739億円となっています。累計で1,200億円の発行をしていますから、平成16年度からの約20年間で461億円の元本返済を一般会計から行っていることになります。利息支払い分を考慮すると更に数十億円から100億円程度の一般会計の負担が増えます。

京都市持続可能な行財政審議会資料
令和3年度京都市決算資料

京都市の一般会計の平成16年度以降の特別の財源対策(一般会計の赤字の補填額)の累計(給与カット分を除く)は、1,514億円であることから、京都市の赤字の約1/3は、地下鉄の赤字の補填ということになります。

新規の経営健全化出資債の発行はなくりましたが、現時点で返済は半分も済んでいません。令和3年度では、元利含めた返済負担は約40億円となっています。年々負担額は減っていくものの、今後20年以上に渡り、毎年、数十億円もの負担をし続けなければいけません。

また、京都市自体が財政破綻の危機に陥ったことから、一般会計からの支援はしないことは決まっていますが、コロナ禍以降の市営地下鉄の経営状況の改善に関しては現時点でも目処が立っていません。引き続き、厳しい状況が続いています。

※特別の財源対策に関する詳細はこちらを参考にして下さい。


まとめ

  • 京都市営地下鉄東西線は、工期がバブル期と重なったことで建設費が当初の倍以上膨れ上がった。

  • 開通後も、乗客数が伸び悩み当初目標に達しなかったため、膨張した建設費(減価償却費)を考慮すると毎日5,000万円の赤字を垂れ流すこととなる。

  • 京都市は一般会計で「経営健全化出資債」を発行し資金調達し、地下鉄事業の赤字を累計で1,200億円の補填をしてきた。

  • 京都市の赤字のうち、地下鉄の赤字の補填分は約1/3にのぼる。


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