インターネットポルノ依存症について 後編

今年の4月ごろだっただろうか、「ドーパミン復活禁欲法」というペーパーバックを読み、「あれ、インターネットポルノ依存症って有害かも…」って思い始めた。そして、辞めた方がいいかもしれないと薄々気づき始めた。その本に書いてあったポルノ断ちする方法は、ポルノを見ることによってどんなデメリットがあるか知り、食べたら死んでしまう毒キノコには食欲が湧かないように、そもそもインターネットポルノを見たいという欲求そのものを理性によって湧かなくさせるというものだった。その本を読んでから、オナ禁を決意し、avを見ない&シコらなかった日にはスケジュール帳にスタンプを押すようにした。手帳によると、4月6日から4月21日まで16日間オナ禁し、そのあとは×が目立つようになった。デメリットとかどーでもよくなって、また、avを見てシコる生活に後戻りした。
そして、自分が依存症だと確信したのは、「ドーパミン中毒」という本を読んだときだった。この本は、依存症の仕組みや患者の実例、筆者の依存症、依存症からの回復について書かれた本である。

依存症というと、どういうものを想像するだろうか?
薬物やアルコール、ギャンブル、もしくは、タバコ、スマホ、ゲームといったものを思い浮かべるだろう。この本の筆者の依存症は、恋愛小説に現れる特定の性的な描写に対するものだった。これを読んだときに、「あっやっぱり自分って依存症なのかもしれない。」って思った。このとき、依存症っていうのは曖昧なものなんだなって思ったし、どんなものでも依存症になりうるんだなと思った。自分が依存症になっているとき、大抵自分で気づくことは難しいということも分かった。その理由として、依存症に陥ることで脳機能が低下し、計画的な行動をとることが難しくなり、長期的な利益よりも短期的な利益を求めるようになり(報酬の先延ばしができない)、その行為による快楽に溺れてしまうからだと書いてあった。

また、依存症者の例からも、やめたくてもやめられないという状況、病的なほど取り憑かれている状況が自分と重なり、自分が依存症であると確信した。

なぜ、インターネットポルノ依存症になってしまったのか。

まず第一に、自分のスマホにはフィルタリングがされておらず、容易に親の目を潜り抜けることができたこと(因みにフィルタリングされてる端末を使っていた友達が頑張れば見れたと言っていたので、フィルタリングに意味があるのかも微妙)。

そして第二に、検索さえすれば容易にavを見れるようになっていること。わざわざ、18禁コーナーでレンタルしなくても、いつでも、どこでもスマホ一台あれば見ることができる。pornhab, missav, spankbang, TKtube, マスタべ, eronuki…数えればキリがないほどエロ動画サイトで溢れているのが現状。しかもこれらは、ゾンビのように、消えても違う形で同じようなサイトが生まれていく。ハードルが低すぎるせいで、小学生でも見れてしまう。ちなみに、歌手のビリーアイリッシュさんは「(11歳からポルノを視聴していたことが)私の脳を破壊したと思う。多くのポルノにさらされたことで信じられないほど気持ちが荒んだ。」と発言して注目を集めた。

そして第三に、暇な時間が多かったこと。高校を卒業し、一人の時間が増えるにつれ、退屈な時間をポルノを見ることで潰して過ごした。郵便局でバイトをしているときの悩みも「休日に何をすれば良いか分からない。」というものだった。ポルノ以外でも、やることといえば決まったことばっかり。ゲームをするかyoutubeやamazon primeを観る、読書をする、音楽を聴く、それか買い物に出かける。別にこれらを自分が本当にやりたいことなのかも分からない。なんというか、ここまで真面目でいなきゃという思いで高校行って勉強してきたけど、視野の狭い指示待ち人間になっただけじゃないかって思った。自分から新しいことしようとは全く思わなかった。まあ、目的意識がないまま周りに流されて生きてきた自分が悪いけど…

第四に、ポルノを見るよりも打ち込めることがなかったことだ。自分の夢や理想について全く考えずに生きてきた。何がしたいか全く分からない。楽しいことといえば、友達と話すことかポルノを見ることだった。

インターネットポルノ依存症になって何がマズいのかということを書いてみようと思う。ここについては、ネット上でも論争が巻き上がる部分だと承知している。科学的根拠なんてないが、自分が考えたことを書きたいと思う。

まず、ポルノによって得られる偽の高揚感が自分を満足させ、自分自身と向き合い、自分の弱点を見つめたり、自分は何をしてるとき楽しいのか考えたりする時間を与えないことだと思う。偽の高揚感は自分が今のままで大丈夫だと錯覚させる。また、先に述べたように、ポルノを視聴すること(ドーパミンがたくさん放出される行為をすること)で短期的利益を追求するようになる。ということは、長期間の努力を要する何かを志し、計画を立てることなど難しくなるだろう。

第二に、日常の小さな喜びが感じなくなることだろう。脳内物質であるドーパミンは「したい」という気持ちを発生させる。例えば、ドーパミンの受容体を取り除いた(放出されたドーパミンを脳内で受け取らないようにした)マウスは目の前にえさを置いても口にせず餓死してしまう。つまり、食欲が全く湧かないのだ。1日に放出されるドーパミン量は決まっており、「avを見たい。」「セックスをしたい。」「もっと過激なavを見たい。」「オナニーをしたい。」という欲求はかなりのドーパミンを放出させるため、枯渇してしまう。何かをしてみたいという気持ちが湧かなくなるのだ。興味・関心の喪失である。自分の場合、感情がよく分からなくなり、生きているのか分からなかった。それゆえに、決まったことしかせず、保守的でつまらない生活を送ってしまったと思う。

第三に、性愛に向き合えなくなることだろう。セックスとはそんなものだという幻想を信じ込んで幻滅したり(avはほぼ全てフィクションである。)、自分はavの中の女性で十分だと思ったりすることで、現実の女性に踏み出そうとしなくなるということだ。近年、中年世代(40代〜60代)の孤独死が問題化している。異性との付き合いにコミットできないということは、孤独死する原因になりうる。いずれにせよ、一人で虚しさや孤独感を感じながら生きていくことになる。友人を超えた存在は自分に(お互いに)安心感を与え、心の支えになると思う。さらにいえば、友人との関係を軽視することだと思う。自分は人間関係が充実していると勘違いしていることに後になって気づく。学校に行かなくなって初めて、自分って一人なんだ。悩みを話し合えるような友人は一人もいないんだということに気づいた。

どうやって、立ち戻るか。
あの本には、多くのヒントがあった。まずは自分で制限することだ。依存状態になっているものと物理的に距離を取る。

私が最初にやったのは、スマホを郵便受けの上面にガムテで貼り付けるという作戦だ。これは失敗した。lineやメールの確認のために一度中に持って入ったら衝動的にエロ動画サイトに飛び、抜いていた。これを何度か繰り返し、繰り返すたびに後悔した。繰り返しても、この方法を変えようとは思わなかった。

そして、一ヶ月くらいこの状態が続いた頃、やり方を変えないといけないと悟った。そして、スマホは基本的に使わないことにした。だがこれもうまく行かなかった。macbookの存在を忘れていたからだ。モバイル機器は全てアダルトサイトと繋がりうる。だから、applewatchを除く自分が持つモバイル機器全てと隔離する必要があると分かった。自分で制限するというやり方で気をつけないといけないのは抜け道を残してしまうことである。例えば、僕の場合、pinterestのアカウントを残していたことが大きな障害になった。あれはポルノまで行かなくとも露出の多い女性の写真などが多く、その画像の引用元のブログから過激なav女優の写真を見ることができる。そして、もはや衝動に打ち勝てずavサイトに飛びシコってしまう。この悪循環を何度繰り返したことか…

それから徐々に自分が置かれている状況のヤバさに気づいていった。そして、自分で縛るという方法では無理だと悟った。ここで、最後の手段に出た。そう、母親に正直にインターネットポルノ依存症であると伝えることだ。そうすると決めてから、何度も迷った。私がそんなことを言ったら、親は怒るだろうから言わないでおこう。そう考えることもあったが、ここは自分のためにも言うべきだと思い決断した。意外にもちゃんと聞いてくれた。母は子供のプライベートな部分にはなかなか関わらないようにしていた。確かに、性生活については親も触れにくいんだろうなと思った。そして、全てのモバイル機器の管理をお願いした。

それからまだ1週間しか経っていないが、打ち明けてから何かが変わった気がする。親に隠れてavを見てシコっていたため、avを見るために言い訳をしたり嘘をついたりすることもあった。そういったやましい思いから解放されたのは大きかったと思う。あの本に書いてあったのは、徹底的な正直さが信頼関係を強め、自覚的に生きることに繋がるということだ。自分の弱さを打ち明ける強さが依存症を克服するのに役立つかもしれない。

ちなみに、「ドーパミン中毒」によれば、依存症になった脳は変形し、ドーパミンの分泌量が減ってしまうが、それを元の状態に戻すためには4週間かかるという。
つまり、私はavを見てシコると言う行為を1ヶ月封印する必要がある。その間に何が起こるかまた報告したい。ちなみに1週間経ったが、この1週間は絶望感に襲われることが多かった。死への恐怖、将来への不安、生きている実感の欠落。これがav断ちとどこまで関係があるか分からない。あらゆる悩みを抱えているからかもしれない。1ヶ月後からはスマホやmacbookとの付き合い方も考え直したい。

p.s.
今このnoteをmacbookで書いている。親への管理を頼んだが、スマホで店の予約をしたりgooglemapを使ったりと今の生活と切っても切り離せない関係である。良いテックを活用するが、依存症にはならないという”テックとのかしこい付き合い方”も探るべきだと思った。スマホが生活に欠かせないものだからこその、インターネットポルノ依存症から脱却する難しさがあるのかもしれない。ただ、親を裏切りたくない気持ちは確かなものになった。スマホでしたいことが一通り済んだら管理をしてもらおうと思う。


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