長く愛せているものって意外と始めはそんなに好きでもなかったよね、ということについて

キリンジ、Steely Dan、Port of notes

どれも僕がとても好きなミュージシャンで、15年くらい飽きずに聴いている。
10年間ずっと、ブーム関係なく聴いているな、っていうミュージシャンというと、まずパッとこの3組(に加えて、スピッツとBill Evans、Miles Davis)が浮かぶけれど、初めて聴いた時はさほど良いな、と思わなかったのが共通している。

キリンジを初めて聴いたのは1999年。当時、高校生だった私は名盤「3」を友人から借りて聴くことになった。が、当時はビジュアル系ブームや、ベースを始めたばかりで僕のアイドルはRed Hot Chili Peppersのフリーだったこともあり、さほど心に残らず、借りたCDもダビングしたりせず、すぐに返してしまった。あの名曲「エイリアンズ」さえ僕の心にささらなかったのだ。

大学に進学して間もない頃に、当時バンドを一緒にやっていた友人のススメでSteely DanやDonald Fagenを聴いた。ベタに「AJA」と「Nightfly」だったと思う。
しかし、聴いてもまったくよくわからない。名盤だというし、それに当時はiPodが登場した時代で、自分のお気に入りを丸ごと詰め込んで持ち歩き、聴いているというのがクールだったのもあり、とりあえずリッピングだけしておいた。プレイリストにも入っていなかった。(どちらもジャケットはめちゃくちゃカッコ良かった)

Port of notesは社会人になって数年、当時付き合っていた彼女が友人から借りてきたCDを勝手に拝借して出会った。リキッドルームでのライブアルバムで、1曲すごくいい曲があったので、それだけずっと繰り返して聴いていた。他の曲には見向きもしていなかった。

どのアーティストも、今では折りに触れて聴き返したり、新譜は必ずチェックしていたり、アレンジメントや演奏のインスピレーションの源泉になっているアーティストです。

似たような話かはわからないけど、ベースを初めて10年くらいの間、ジャズベースの音がどうにも好きになれなかった。
あのくっきり、はっきりした堅いだけの音がどうにも好きになれなくて、スティングレイでゴツゴツバキバキいわせたり、PJや5弦のフレットレスとか弾いてたりした。

しばらくベースをやめていた時期があり、また再開しようとなった時、どんな音楽がしたいかもわからなかったので、1番潰しが効くっていうし、コスパも良いだろうから適当に買っておくか、と思いフェンダージャパンのジャズベースを初めて手にしたのだけど、今はもうジャズベのあの音が基準になり過ぎて、手放すことが考えられなくなってしまった。

私はこのアーティストに出会って運命を感じました!みたいなことって美談として語られがちですけど、そんなことってまあほとんどなくて、大抵は青春時代の恋愛のように、一時期の熱に浮かされているだけ、であることは多い。歳を重ねていけば、あの時あんなに好きだったのになあ、というものがどんどんピンとこなくなっていくもんですよね。もちろん、そんな熱の積み重ねで好みは成熟されていくんですけど。

だから、友人にすすめられたり、レコメンドで出会ったりしたものがピンとこなくても、それでいいと思います。
いつか耳が育って、好みが変わって、求めるものが変わって、きっとその音楽があなたに刺さる瞬間がくるはずだから。

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