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【西日本豪雨】交通対応最前線ダイアリー:7月7日-状況把握

7月7日(土)

徹夜の山口・宇部往復から早朝に戻り,眠りについたものの,9時過ぎには目が覚めた.ニュースを見ると,やはりそこそこ被害は大きそうだ.ただし,この時点では被害の全容を把握できているわけではなかった.
パソコンを立ち上げ,メールを読もうとしたが,メールサーバーに繋がらない.どうやら,メールサーバーが落ちたのか,停電かが発生したようであった.こういう時に,クラウドのサービスは強い.民間企業にいた時には,BCP(企業の事業継続計画)を意識しており,こういうことが起きない,業務を止めない仕組みがなされていたが.
テレビでのニュースを見ていくと,どんどん広島や呉の被害の状況が明らかとなっていく.尋常ではない.この時,4年生(大学1年生相当)のクラスを受け持っていた.クラスの学生の安否がまずは気になった.同僚の先生に.「安否確認しようと思うけど,どう思う?」と意見を尋ねたが,「学校から指示があるまで,待ったほうが良い」との回答.うーん,これは指示を待つよりも動くしかないか.非常時には安否確認をまず行い,状況を把握することが危機管理の基本である.

幸い,学校の連絡網は外部のクラウドサービスを利用しており,停電の影響を受けていなかった.また,クラスの学生全員との連絡ツールとして,LINEのグループを作っていたのも大きかった.google formで集計画面を作り,学校の連絡網とLINEのグループで,自身と家族の安否,身近での被害の状況を報告するように伝えた.

▼安否確認用のGoogle Form入力画面

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このような連絡用に,Google Formを用いることが,特に当時は「Google」のツールに対する警戒感も強く,その是非の議論になり得ることも想定された.そのため,念には念を入れて,誰が入力したのかがわかる人しかわからないような工夫を入れた.

全員の安否は比較的短時間で把握できた.クラス44人中,38人はGoogle Formに入力してくれた.残り6人は,クラスのLINEで,xx君を見たりした?と尋ねた.その返事で,「xx君は三段跳びをしていました!」とか,「バレーボールしてます」という返信も実際にあったりした.ちょうどこの日から,「中国地区高専大会」が山口で開催されていた.その大会に比較的多くの学生が参加しており,「目撃証言」に頼ることができた.16時には,全員の安否が,また,家族の安否も確認できた.ただ,自宅が被災した学生はいた.その学生に電話して,自宅の状況を尋ねた.
また,「困っていること」を自由記述の形式で尋ねたが,その記述から,広島や呉で,どこで何が起きているのかを把握することもできた.

安否確認の連絡の依頼を発信した後,全員から連絡が集まるには少し時間がかかるだろうと思い,その間,市内(広島の人は,広島市中心部のことを,何故か”市内”という)の様子を少し見回ることにした.あれだけ雨が降って,川の水位が上がっていて,結果どうなっていたかが気になった.

意外に,何もなかった.静かだった.
広島駅付近の「開かずの踏切」も,開きっぱなし.電車が来ない.こんなことは初めての経験である.

▼「開かずの踏切」(山陽本線・芸備線愛宕踏切),7/7 11時ごろ撮影

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自宅に戻り,安否確認も終了した.一応,学校に「全員無事」の報告は入れておいた.

その後は,ひたすらネット&SNSサーフィンをしていた.Facebookで,Twitterで,多くの方が,様々な情報を発信していた.西日本豪雨でのSNSの写真,特に交通関係の写真が多く掲載されていた.山陽道の土砂崩れ・流入の様子,JR山陽本線の瀬野駅の線路が水に浸かっている様子....あちこちで,しかも幹線となる交通網がやられていた.「これは時間がかかるな」と.
余談であるが,この時,FacebookやTwitterで情報を集めていてあれこれ感じたことから,後に,災害時のSNSの言語処理をテーマとした研究に繋がった.

▼当時のSNSなど収めたiPadのアルバム

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このような災害が発生すると,国土交通省の各地の国道事務所は,情報の収集と発信が非常に早い.国土交通省中国地方整備局広島国道事務所のホームページを見ると,地図上にどこが通れなくなっているかを素早く発信していた.そして,呉市役所は呉市内の道路をさらに詳しく発信していた.とにかく驚いたのは,道路での被災箇所の多さである.その数が半端なく多かった.
国土交通省がまとめた道路の被災箇所の情報は,国土交通省の職員や委託業者の方が現地に出向いて確認されていた.呉市がまとめて発信していた情報は,呉市の道路の情報を得つつも,呉市の職員の方を国や県の事務所に派遣し,情報を得て作成していた.市から国や県に電話で連絡してもなかなかうまく情報を得られず,職員の方が事務所に居ないと,タイムリーに情報が得られないための判断であった.

▼呉・東広島エリアでの道路被災箇所(国土交通省広島国道事務所ホームページ)

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▼呉市内の道路被災箇所(呉市ホームページ)

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iPadで情報を見つつ,テレビでニュースを見たところ,パッと映った被災地の映像が目についた.見た瞬間,どこの場所であるかすぐにわかった.普段通勤で通る,広島呉道路の天応東IC〜天応西ICの側道部の映像であった.道路が土砂で覆われ,そして,川があるはずが土砂で埋もれてしまっている.
通勤で少し時間がある時は,広島市内から国道31号で南下し,呉ポートピア前の分岐部から広島呉道路方向に向かい,そして映像に映った場所を通り,天応東ICから広島呉道路に乗って,呉にある職場に向かっていた.よく知っている場所がこのような様子になっている映像を見て,非常に強い衝撃を受けた.天応地区では亡くなられた方もあり,さらにこの土砂の状況からすると,天応地区の復旧は相当時間がかかるなと思った.この映像は,自分のスイッチが入るきっかけとなった.

▼呉市天応地区の被災状況を映し出すテレビの様子(7月7日夜)

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