「トランプ復権」共和党との関係修復が急務の大リーグ機構

去る5月17日(月)、日刊ゲンダイの2021年5月18日号24面に連載「メジャーリーグ通信」の第92回「「トランプ復権」共和党との関係修復が急務の大リーグ機構」が公開されました。

今回は米政界の動向と大リーグ機構の関わりを検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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「トランプ復権」共和党との関係修復が急務の大リーグ機構
鈴村裕輔

大統領退任後、日本ではすでに「過去の人」となった感のあるドナルド・トランプも、米国では依然として政界の「話題の人」の一人だ。

4月21日のニューヨーク・タイムズに「北朝鮮の非核化に失敗した」という韓国大統領文在寅の談話が掲載されると、ただちに反論の声明を公表したことなどは、人々に「トランプ節は健在」と思わせるには十分な出来事だった。

また、4月の日米首脳会談や5月のG7外相会議の共同声明で台湾を取り上げたのは、バイデン政権の対中政策が敵視策を採用したトランプ政権の延長線上にあると考えられた。

あるいは、5月10日にイスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区を攻撃すると、バイデンは事態の鎮静化を呼び掛けたものの、国連では米国代表部の反対により安全保障理事会の公開会合の日程が延期された。これも、バイデン政権がトランプ政権と同様に米国のイスラエル寄りの姿勢を示した指摘されている。

実際、バイデン政権の高官がトランプ政権の対中政策の一部を継承したことを明言しているし、中東への関与の度合いを低下させたいという考えはバイデンもトランプも同じだ。

さらに、5月12日は共和党で「反トランプ」の象徴であった下院議員のエリザベス・チェイニーが、党下院序列第3位の党会議議長を解任されている。

2022年に中間選挙を控え、共和党支持者の多くから信頼を集めているトランプの存在を無視しては選挙を戦えないという党の事情の結果であった。

これらの出来事からは、国民の団結を唱えたバイデンが政権を担当しても、「トランプ的なもの」が人々の間に深く根を下ろしていることを思わせる。

一方、ジョージア州で有権者への規制を強化する州法が成立したことを受けて、大リーグ機構が今年のオールスター戦の開催地をジョージア州アトランタからコロラド州デンバーに変更したことは、保守的な機構にとっては珍しい進歩的な対応と評された。

これに対し、共和党上院議員のテッド・クルーズなどは大リーグに対する独禁法の適用除外の停止を提案するなど、機構の措置に反発している。

米国において、目に見える政治上の対立を収束させるためには、ロビー活動や政治献金などが不可欠だ。

今年1月、大リーグ機構はあらゆる政治献金を一時的に停止して政治と距離を置く姿勢を示した。

しかし、やはり大リーグ機構と同様の宣言を行った他の有力企業が献金を再開させている。政界の球界への反発という現状を考えれば、機構や多くの球団経営者は、長年支持してきた共和党との関係を本格的に修復させなければならないのである。
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[1]鈴村裕輔, 「トランプ復権」共和党との関係修復が急務の大リーグ機構. 日刊ゲンダイ, 2021年5月18日号24面.

<Executive Summary>
The MLB Shall Fix Relationships against the Republicans (Yusuke Suzumura)

My article titled "The MLB Shall Fix Relationships against the Republicans" was run at The Nikkan Gendai on 17th May 2021. Today I introduce the article to the readers of this weblog.

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