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第17回(令和3年度)紛争解決手続代理業務試験受験レポ!

少し間が空いてしまいましたが、「目指せ特定社労士への道」シリーズの最終回として、紛争解決手続代理業務試験の受験レポートをまとめました。自身が特別研修を申しこんだ際にあまり情報がなくて困ったこともあり、これから特別研修を受験される方向けに以下シリーズとしてまとめてきました。
↓特別研修のグループ研修~ゼミナールまでの受講レポは以下にまとめています!↓

試験は研修最終日と同日実施!?

私自身、特別研修を申し込んだ後に初めて知って、一番衝撃だったのが「紛争解決手続代理業務試験は、特別研修の最終日の当日午後にそのまま実施される」ということでした。

試験当日の午前中までみっちり特別研修が開催されています。(特別研修が終わって一か月後ぐらいにあるのかなー、なんてとんでもない勘違いをしていました・・・汗)

会場、試験用紙、筆記用具

午前中の特別研修が終了後、一旦控室(もしくは各自会場外に出て)にて待機することになります。私のときには試験会場には集合時間の10分前から入室可というルールになっていました。

試験に使える筆記用具は黒の万年筆、黒ボールペンしか持ち込めません。(消せるフリクション等はNG)

解答用紙(原稿用紙)は「A3サイズ」で配布されます。解答用紙のマス目は大きめですがマスの左下を活用して小さい文字で詰めていきます。これは修正があった場合に、二重線で修正して、マスの余白に加筆することになるため、しょっぱなからマス目いっぱいに書くと間違えたときに修正できなくなります。

試験開始直後に全体を掴む

試験開始の合図直後にページ抜けの確認を兼ねて、まず第一問をざっと眺めて出題パターンだけ認識しました。第1問は解雇、雇止め、退職金請求などの定番パターンが出題される傾向であり、原則として特別研修(グループ研修&ゼミナール)でそのパターンの論点は一通り網羅しているはずです。
「よし、今回は雇止めか!」と思って少し安心しながら、ページをめくります。

まず「倫理」から取り組むべし。割ける時間は最大「35分間」

この試験の成否を決める最大のカギは「時間配分」です。多分どんなに筆記試験の手が早い人でも時間が余ることはほぼないと思います。試験時間終了ギリギリまで頭と手をフルで動かし続けることになります。

私の戦略としては、まずは第二問の「倫理」を先に着手することにしていました。第二問の倫理については足切りがあるのと、第一問とは異なり設問の文章も短文のため、まずはサクサクと回答を進めながら試験全体のリズムを掴もうというねらいでした。
ちなみに感覚的にはこの第二問の倫理で「35分以上」試験時間を費消すると、第一問の設問を全て回答するのが厳しいと思います。倫理でウンウンと悩み過ぎて時間を使い過ぎないようにしたいところです。

下書きの時間はない/箇条書き戦略

残念ながらこの試験には完全な下書/清書を行う時間はありません。一方、文章の論理構成が最も大切な試験なので、完全に殴り書きではNGです。

ということで、まずは以下の解答構成要素をまず「箇条書き」で並べます。

【構成要素を箇条書きで並べる】
■ブロック①:法律要件 〇〇〇〇(〇〇文字)
■ブロック②:法律効果:〇〇〇〇(〇〇文字)
■ブロック③:事実のあてはめ/解釈:〇〇〇〇〇〇(〇〇文字)

この箇条書きを全体設計図として、いきなり原稿用紙に直に書いていきます。たとえば、第二問(倫理)の小問1なら、以下だけさっと下書きします。
■ブロック①・②:社労士法第2条第3項「和解交渉を行える期間」=紛争解決手続の開始から終了に至るまでの間に和解の交渉を行うこと(100字)
■ブロック③:あてはめ・解釈:本件では既に合意不成立により打ち切り済み(150文字)

もし各構成のブロックで想定字数を超えたら、その後のブロックで書きながら文字数を再調整していきます。

最終日もしっかり講義を聴こう!

倫理についてはゼミナール最終日、つまり試験日程の午前中に講義がありますので、記憶がフレッシュな状態で試験に臨めます。

試験が気になって集中できないという可能性もありますが、試験対策としてかなり集中して講義に向き合うことをお勧めします。

第17回試験においても、上記のとおり、社労士法2条3項2号「紛争解決手続き開始から終了に至るまでの間に和解交渉を行うこと」という条文の意味を正しく理解できているかどうか、がポイントになる問題が出題されています。過去問にはなくて意表を突かれた!という意見も多かったようです。

ただ、上記の論点もちゃんと午前中の講義の中で弁護士の先生がしっかり小問解説の中で解説されていました。

まずは社労士法2条、22条CHECK→その後に16,21条への該当性CHECK

倫理問題では、社会保険労務士法2条や22条(業務を行い得ない時間)的にはNGとは言い切れないけれど、これを受任するのはどうかなー??という微妙なニュアンスの問題が出てきます。このときには第16条(信用失墜)、第21条(守秘義務)に照らして考えます。

特に「受任できるかできないか」の問題については、この事件を受けたときに依頼者や相手方がどう感じるか?という視点で、なるべく保守的にみていくとよいかと思われます。(実際の特定社労士になった後も、これは実務上大切なポイントなのだとゼミナールで先生も仰っていました。)

第1問小問(1)はMUSTで正解を!

第1問の小問(1)については、ほぼ毎年同じパターンで出題されており、ここはマストで点数を取りにいきたいところです。地位確認請求の記載と、それに基づく賃金請求の 記載で、まずはしっかりと定型フレーズを覚えることがポイントです。

第1問小問(2)&(3)は要件・効果・事実

第1問の小問(2)と(3)は労使双方の立場で、必要な主張・事実を抜き出していきます。まず、それぞれの言い分を読み始める前に、まずは今回のテーマはどのカテゴリの案件なのかを判断します。解雇なのか、雇止めなのか、退職金事案なのか、懲戒なのか・・・それぞれのカテゴリごとにグループ研修テキストで法的な要件・効果を整理してきているはずです。(「法律要件⇒法律効果」については下記の記事で解説しています!)

それぞれの立場で行うべき主張は、どんな事案でも以下に収斂されると思います。
【主張内容】
■「〇〇法〇〇条」の法律要件を満たすOR満たさない
<から>
■「〇〇法〇〇条」の法律効果は生じる/生じない

小問(2)(3)は、上記の【主張】を行うための生の事実(要件事実)をそれぞれの言い分から抜き出していくという作業になります。Xの主張についてはXの言い分から、Yの主張はYの言い分から読みだしていきます。
第17回のような「雇止め」の問題であれば、労働契約法19条の法律要件と効果の関係を見ていきます。

「択一式」みたいに正解がある試験ではない

社労士試験の【択一式/選択式】になじんでいる我々からすると、試験には唯一の「正解」があると思ってしまいがちで、たとえば倫理の問題であれば「受任できるか、できないか、どっちが正解?」ということばかりに拘ってしまう方も多いです。また、設問1の法的見通しも、労使のどちらが勝つのが正解?というところを必要以上に意識を持っていかれる方もおおいようです。
ただ、そもそも白黒が明確になるような案件なら、あっせん・ADRには持ち込まれないわけで、むしろ「結論」よりもその結論に至るまでの法的思考を求められている試験なのだと感じました。

過去問よりも「特別研修」の内容を優先すべき

ネットの記事を見ていると、グループ研修やゼミナールが試験対策とは全くの別物だという意見もよく見かけますが、私は全くそんな風には感じませんでした。

私は過去問は一年分だけ時間配分確認のために本試験と同じ時間で解きましたが、それ以外は出題パターンを把握するために使っただけでした。(時間があるなら、もちろん解いた方がいいです。)

もし過去問と研修の予習・復習を両方やる時間がないならば、優先すべきは「特別研修の予習・復習」だと私は思います。また、市販の対策本や試験対策講座で勉強されていらっしゃる方も多いようですが、これも研修の予習・復習が完璧な方がさらに余裕があれば取り組むと、いう程度でいいのではないかと思います。

正直、テスト対策のために研修の予習・復習がおざなりになるのであれば、特別研修の内容に集中する方が合格率が高まると感じました。

特別研修にどれだけ「能動的」に参加できるか?

研修の主催者や試験の出題者に立場になって考えてみると、「特定社労士になるために必要なことはしっかりと特別研修のカリキュラムに入れ込んでいるはず」です。

そして、その特別研修で学んでほしいことをしっかり技能として定着させたかどうかを測る試験が「紛争解決手続代理試験」という構成になっているはずです。

ということは何度も繰り返しになりますが、特別研修の予習・復習がもっとも大切であり、そもそも「グループ研修やゼミナール当日に、どれだけ自分自身の脳味噌をフル回転させて議論に参加したのか。分からないところを徹底的にグループリーダーや弁護士の先生に質問して解消したか?」が、試験対策上、最も大切なファクターになってくると思います。

過去問の回転数とかはあまり関係ない?

もちろん時間配分などの最低限の試験対策としてのチューニングは必要ですが、通常の社労士の本試験対策とは異なり「過去問を何回解いたとか」「テキストを何冊もやった」とかはほぼ関係がない試験なのだろう、というのが全体的な所感です。それよりもゼミナールで弁護士の先生から教えてもらえる「法律要件」―「法律効果」―「要件事実のあてはめ」で法律条文と事実を取り扱う、この感覚を養うことが試験対策上も求められており、またこの特別研修で得ることのできる最も素晴らしい果実ではないかと思っています!

とにかくオススメ

ということで、開業社労士にとって特別研修は本当にオススメの研修です。ADRを業務でやる/やらないの方針に関わらず、受講を悩まれている方はぜひ前向きにご検討ください!

※以上の記事はあくまで私のいち個人としての体験談であり、主観を含んでおりますのであくまでご参考程度に活用頂けますと幸いです。


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