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8年経営した会社を破産に追い込まれた“トラブル”について

表題の件、よく聞かれるので書いておこうと思う。全貌を全て説明するのは時間がかかり過ぎるので、これ読んでもらったら、おおよその流れがおわかりいただけるというものを残しておきます。あとは、同じようなトラブルに巻き込まれないように、スタートアップ経営者の方は見ておいてもらえればと思います。


ことの発端は、とある会社、というか団体からの仕事の依頼でした。当時、僕の会社は、Webデザイン〜システム開発の受託事業をやっており、特にSNSの開発においては、検索上位に入るくらいの位置にいた会社でした。そこの団体から来た依頼もSNSの開発、ということでした。

そこの団体は、かつてホワイトスペースといわれていた、電波の空きを利用した地域地上波放送の実証実験の資格?を持っている団体でした。それを使って秋葉原に放送局を作る、そのサイトを作って欲しいという話でした。

で、きちんと与信などをしていなかった当時の私の会社では、その団体の仕事を受けることにしました(これが失敗の原因の一つ)。そして、当時私の会社では、先に請求金額の半分を前金として請求させてもらうことにしていて取りっパグれを防ぐということをやっていたのですが、同時並行で開発には着手するということをしてしまっていました(意味ない)。そして半分位できた段階で、「そろそろ前金払ってください」という話をしていたのですが、なかなか払ってもらえず、交渉を続けていると、「上司が会いたいと言っている」と言われ、その”上司”とやらにあって直接交渉しようと、その団体のオフィスに言ったのでした。

そうすると、その団体のオフィスはマンションの一室で、社員は相対していた人ただ一人で、”上司”とやらがいるだけのところでした。さすがに「これはやばいなぁ」ということをそこではっきりと認識をしたのですが、時既に遅しでした。そしてその”上司”は、いかにも…なお方だったのでした。

”上司”とやらは「うちのもんが発注したらしいが、俺は承認していない。だから払えない」という趣旨のことを話されて、流石に意味がわからなかったのですが、更に意味のわからないことに「そう言われても困るだろうから半分の額は払ってあげる。代わりにうちの事業を手伝わないか」という斜め上の提案をしてきたのでした。

当然ながら、そんな事業を手伝う理由もなく、あきらかにやばい団体とは関わりたくなかったので断ってお金だけもらうことにしたのですが、その”上司”の方に目をつけられてしまったのか、見初められてしまったのかわかりませんが、後日オフィスにまで来て、「今度銀行に融資のことで会うことになったんだが、システムについて俺はわからない。だからうちの団体の人間として説明をして欲しい。名刺は作った」と、とんでもない行動力を見せつけられ、仕方なくOKしてしまいました。

が、そんな融資話はなく、その団体に取り込まれるための策にハマったことを後日知ります。融資話の当日オフィスに行くと、改めて事業に参画しないかという話をされました。そして、最初は断っていたのですが、システムについてあれやこれやと聞かれるので、職業病で答えているうちに、いろいろとアイデア出しをやってしまっていて、なんとなく少し手伝うことになってしまっていたのでした。

そして、その後、何度かオフィスに行って、事業の計画を練っている時に、「事業をやるには資金が必要だ。最低でもテレビ局をやるからには1億は必要だと思わないか?これまで資金調達した経験はあるか?ないならやってみないか?今月中に1億集めてみよう」というような話をされました。

で、人のいい私はそれを真に受けて、たしかに資金は必要だ、と思って、いろいろな人に資金を出してもらうようにお願いをしていたのですが、まぁそんなにかんたんには集まりません。事業的に見てもごく一部のエリアで、コミュニティFMよりも狭い電波範囲で、まして地上波放送をやるという、どれだけ小さな話か。そんな話に乗ってくる人などいませんでした。

そして、その月が終わる最終日。結局1億はおろか、1銭も集まらず。「今月集まりませんでした」という報告をすると、その”上司”は、急に態度が変わって怒鳴り始めるのでした。「俺との約束をお前は破った。お前が集めるといった1億は俺の持ってる権利をお前に譲るためのものだ。俺のところに1億をもってこい。先に権利を渡してるのだから、1億は借金だ。お前は俺に1億の借金をしてるということだ。早く1億返せ」ということを、延々と怒鳴られながら夜遅くまで語られたのでした。

正直あっけにとられました。こんな論法があるんだという反面、「1億の借金」というパワーワードにかなり頭が混乱しました。その”上司”、それまでの話の中で、昔暴力団にいたことや、今でも付き合いがあることなどを笑顔で話をしていて(だいぶやばい)、私も「そうなんですねー」となんとなく流していたのですが、急変した彼の態度を見ながら浮かんできたのは家族や妻の顔。すでに自宅や実家を伝えてしまっていて(うまく聞かれていた)、そこに金を取りにこられたらどうしよう、家族に危害を加えられたらどうしよう。ということが頭をよぎります。最悪殺されるんじゃないかと思いました。完全に脅迫でした。

そこからは、家族や妻を始め、友人・知人などからお金を借りて回る日々。毎日”オフィス”という名の彼の自宅に”出社”させられるようになり、「1日100万はもって帰ってこい」と怒鳴られたり、時には優しく諭されたりを繰り返されていく内に、どんどん洗脳されていっていました。「この人のためにお金を集めないといけないんだ。それしかここから抜け出す道はないんだ」と思っていました。ある種、依存関係にもなっていたと思います。人質に取られた人が犯人に親近感を覚えるというやつですね。とんでもない間違いだったんですが…

家族や妻はお金を出してくれたり、知人や友人でも出してくれる人もいて、1000万以上はお金を払ったんですが、1億には全然届きません。

それが出来るまで抜け出せず、かれこれ1年〜2年くらいはそんな日々が続いていました。給料はなく、”オフィス”に出社するための交通費すらないくらいで、なんとか身の回りのものを売ってお金を捻出する日々でした。お金を借りて回るのに交通費がないので、東京駅から品川まで歩いたり、なんてこともありました(”オフィス”は品川)。

結局最後は、会社の印鑑と通帳を取り上げられて、並行してやっていた本来の事業からの売上も全て持っていかれ、従業員にも給料が支払えない状態になりました。

従業員や、業務の委託先からも訴えられ、会社で借りていた融資も返済できず、銀行や政策金融公庫などからも督促の日々。

もうどうにもならない。と思い、意を決して最後は連絡を断って逃げました。そして、自分と会社は破産手続きに。多くの方にご迷惑をおかけすることとなりました。

だいぶ途中を端折りましたが、ざっとこういった経緯があったのを「トラブル」として説明しています。

今思い返せば、途中、引き返せるポイントは何個もあったし、もっとはっきり明確に断ることや交渉することができていればこんな事にならなかったと思います。自分に足りないところを相手にうまくつけいれられたんだな、と今では思います。

何より一番は、いろいろな人に迷惑をかけたことについて、今もずっと反省をしていますし、二度とこんなことに巻き込まれないようにしたいと思っています。

みなさん、断るべき時にはきちんと断りましょう。そして、逃げるべき時には迷わず逃げましょう。それが私の経験からの教訓だと思います。ここまで読んで頂いたみなさま、ありがとうございました。

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