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優しさの行方

夏の夕方、陽が傾きかけた頃、静かな公園のベンチに一人の青年が座っていた。彼の名は大輔。

学生時代から友人や家族に「優しい人」と言われ続けてきた。しかし、今の彼はその優しさが重荷となり、疲れ切っていた。

「みんな、自分の正義だけを振りかざして…」

大輔はつぶやき、スマートフォンの画面を見つめた。SNSには、友人たちの意見や主張が溢れている。彼はいつも中立的な立場を取ろうと努めていたが、最近はその努力が虚しく感じられるようになっていた。

「人の正義は無視して言いたい放題…」

彼は続けてつぶやいた。人々が自分の意見を押し付け合い、他者の感情や考えを顧みない様子に、彼は心を痛めていた。そして、自分もその中に巻き込まれていることに気づいた時、さらに心が重くなった。

「優しい人って言われる僕の慣れのはて…」

彼の優しさは、いつしか自己犠牲に変わり果てていた。他人の意見を尊重し、対立を避けるために自分の感情を抑え込んでいたのだ。しかし、その結果、彼の心は疲れ果て、ポジティブな気持ちを持つことが難しくなっていた。

「なんかゴメン  ゴミ箱がもういっぱい…」

大輔は頭を抱え、ため息をついた。彼の心の中には、他人の悩みや問題が詰め込まれ、自分の感情を吐き出す場所がなくなってしまったのだ。

「ポジティブになれない…」

彼は深呼吸をして、立ち上がった。公園の出口に向かって歩き始めると、夕日の光が彼の影を長く引き伸ばしていた。

「これ以上は受け止められない…」

大輔は心の中でそう呟き、決意を新たにした。これからは、自分の感情や意見をもっと大切にしようと。優しさは大切だが、まずは自分を大切にすることから始めようと彼は心に誓った。

そして、その日から、大輔は少しずつ自分の心を解放することを学び始めた。他人の意見を尊重しつつも、自分の感情を押し殺すのではなく、正直に伝えることの大切さを知ったのだった。彼の優しさは、今度は自分自身にも向けられるようになり新たな一歩を踏み出していった。

自己犠牲の上に成り立つ優しさではなく
自分愛のある強い優しさを持った自分へと変わる為に

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