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恥を捨てる。歯医者に行く。

歯医者が恥ずかしいのは私だけだろうか。

最近は度重なる惰性によって歯を磨かずに寝るという禁忌を犯すことが多くなってしまった。歯の医者に通ったがいいという知り合いの言葉通り定期検診に通ってみるも、歯医者というものはなぜこうも恥ずかしいのだろうか。数ある医療機関の中でも一番である。

口内は普段誰に見せるものでもない。小さい頃は親に口を開けて物を食べるな、口の中の物が見えるのはお行儀が悪いことだというのはさんざ習ったがそうした親から教わった教訓(これはむしろ私の日頃の暮らし方や貞操観念を形づくるものですらある)の壁すらも容易く超え、恋人にすらめったに見せることのない恥部をあろうことかその場で出会った赤の他人に自らの意思で開帳し、ぴかぴかの金属棒が手入れしようと奥まで入り込まんとするのをただ受け入れるしかない。椅子に横たわり大口を開けて口内の不快感と時折走るちくちくした痛みにただただ耐える様子は、端から見たらどんなに滑稽であろうか。

ああ恥ずかしい。みがき残しがありますね~なんて笑顔で言われようものなら、今すぐにでも逃げ出したくなる。私がガサツで自分をきれいにすることになんら関心のないことが露呈してしまうではないか。虫歯ありますね~なんて言われてみろ。ああこいつはきっと常日頃からお菓子とかをたらふく食べるくせに歯を磨くなんていう簡単なこともできない意志薄弱野郎なんだな。きっとそうに違いない。そんな視線を向けられているようにしか感じないのである。

普段から歯を丁寧に磨こう。そうしよう。そんな気持ちになるのである。


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