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リフレクティッド・ヒューマン

ここ最近のあるところに、おじいさんが住んでいました。ある時おじいさんはショッピングセンターに行きました。エレベーターに乗るためです。おじいさんはショッピングセンターを遊園地だと思っており、エレベーターをアトラクションだと思っています。なのでおじいさんにとってはエレベーターがメインで、お店がおまけなのです。

おじいさんが1階でアトラクションを待っています。もう7年ぐらいこのアトラクションに乗り続けてきたので、さすがに飽きてきたおじいさん。「ピンポン」エレベーターが到着した時、おじいさんひらめきました。乗ってくる人の降りる階を予想することにしました。

ドアが開き中に入るおじいさん。4階のボタンを押しました。最上階です。フワァーっと上に上がる感覚で頬が緩むおじいさん。到着しました。ドアが開きます。期待するおじいさん。誰もいません。「あぁ〜」と残念がった後、人が横切ったので、すっと真顔になり、ドアを閉めるおじいさん。

1階と4階を往復するおじいさん。全然人が乗ってきません。ドアが開く直前まで変顔をする遊びをはじめてしまいました。ちょっとずつ変顔の時間を長くしていきます。少しドアが開いてもセーフということにしました。

1階でドアが開きました。お母さんと男の子が立っています。変顔を見られてしまいました。何事もなかったかのように振る舞うおじいさん。

何階で止まるか予想するのを忘れていたおじいさん。お母さんが3階のボタンを押してしまいました。変顔を見られてしまったので、気まずい空気が流れています。おじいさんも気まずいです。3階に着きました。お母さんと男の子が早歩きで出ていきます。安堵するおじいさん。

1時間くらい人が乗って来なかったので、おじいさんはアトラクションを降りることにしました。牛丼を食べに来たおじいさん。食券を買おうと財布を取り出します。23円しか入っていません。券売機を蹴っ飛ばしたくなる衝動に駆られながら、退散するおじいさん。

宝石店に入るおじいさん。買う予定のないジュエリーを眺めています。0の数を数えていたら、店員さんが近づいて来たので、急いで退散するおじいさん。

再びエレベーターに乗るおじいさん。再度1階と4階を往復しはじめます。退屈なので変顔ゲームをはじめてしまいました。10分ぐらいした時、急に3階で止まりました。

ドアが開きます。先ほどのお母さんと男の子が立っていました。また変顔を見られてしまいました。気づいたお母さんが、男の子を連れてエレベーターから離れていきます。寂しそうに後ろ姿を見つめるおじいさん。

エレベーター酔いになりかけているおじいさん。降りる階予想ゲームが全然できてないので、こんなところで諦める訳にはいきません。間で休憩を挟みながら、何度も挑戦するおじいさん。

おじいさんが乗っているところにもう一人のおじいさんが乗ってきました。おじいさんはとてもとても喜びました。今度は忘れず予想します。1階にすることにしました。

おじいさんは、自分が下に行くために1階を押しました。ところがもう一人のおじいさんはボタンを押しません。おじいさんは予想の的中を確信し、にやにやが止まりません。

1階に着きました。おじいさんがもう一人のおじいさんが降りるのを待つため、開くボタンを押しています。しかしもう一人のおじいさんは降りません。不思議に思いながら、おじいさんは4階のボタンを押します。

4階に着きました。ドアが開きます。またももう一人のおじいさんは降りません。おじいさんだんだん怖くなってきました。そういえば斧の絵柄の黒いTシャツを着ています。身長もおじいさんよりこぶし2つぶん高いです。おじいさん体が固まってしまいました。

2往復した頃、ふいにもう一人のおじいさんがおじいさんの方を向きました。おじいさん震え上がりました。もう一人のおじいさんがおじいさんに近づいてきます。おじいさん心臓バクバクです。

もう一人のおじいさんが言いました。「ハープってここで売ってますかね?」……おじいさんしばらく沈黙した後、「わかりません」と震えた声で答えました。ドアが開き1階に着きました。おじいさん振り返らず一目散に逃げ出します。

こうしておじいさんはエレベーターがトラウマになり、2度とアトラクションとして使うことはなくなりましたとさ。

めでたしめでたし。

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