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韓国ドラマ「ミセン」感想

「親切にしなさい。あなたが出会う人は皆、厳しい戦いをしているのだから」

プラトン(古代ギリシャの哲学者)

プラトンの名言が、「ミセン」で厳しい戦いをしている商社の社員達の姿と重なりました。
棋士の道を諦めた社会人経験ゼロのグレ(イム・シワン)は、知人の紹介で商社のインターンになりますが、電話の取次もコピーを取ることも初めてのことばかりです。
グレは周囲の人たちに、会社員として続かないと思われ軽く扱われますが、プレゼンで合格点を取り、無事に契約社員として入社をすることに。
営業3課に配属されたグレは、先輩や同期から仕事とは何かを学びます。

「ミセン」は、グレが配属された営業3課を中心に繰り広げられるヒューマンドラマです。仕事の内容は難しいところもありましたが、イム・シワンさんの思慮深く、まっすぐな演技が光る感動作でした。

グレはすぐに会社になじむことができず、厳しい現実に直面することになりましたが、グレではなくても、失敗して落ち込んだり、自分に自信が持てなかったり、どんな仕事をしていても悩みや考えもしなかった出来事が起こります。

グレは人の話をよく聞き、よく考え、行動に移すことを繰り返し成長していきます。つらい出来事にも謙虚な態度で取り組み、逆境を乗り越えていきます。

営業3課のオ課長(イ・ソンミン)は時々、グレや他の新人を困らせる同僚がいると、その人の足を引っ掛けて転ばせます。
初めは、「転ばせるのはひどい!」と思いましたが、オ課長はウラオモテがなく、さり気なく新人の味方をする魅力的な人物でした。


グレの同期は、それぞれ上司との関係に悩み自分と戦っていました。
重要な仕事を任せてもらえず転職を考える者、ストレス発散に屋上で叫ぶ者、戦うのを諦めて下手に出る者。同期4人は一緒にお酒飲んで親交を深め、ときには寄り添いながら、悩みから抜け出す道を模索します。
途中から営業3課に加わったチョン課長は、営業3課と専務との板挟みに悩まされ屋上でつぶやきます。
「人生はつらいことばかりだ。疲れるよ。」
答の出ない悩みを抱えるチョン課長はとても苦しそうでした。
出来事はいつか過ぎ去っていきますが、悩みの中にいるときは本当につらいものです。


グレはジョギングをする習慣があります。
「何かを成し遂げたいならまず体力をつけろ。自分の悩みに耐えられる体を、体力なくして精神力は発揮できない」グレの囲碁の師匠の言葉です。
私は運動が苦手ですが、歩くことだけでも落ち込んだ気分を回復させることの効果を実感します。
いつも体を鍛えている人にとっては、体力をつけることが精神に良い影響を与えることは当然のことなのでしょう。
グレが仕事中に地図を逆さまに眺め、アイディアが閃くシーンがありますが、悩みや思い込みを変えることにも物事を逆から眺めることは効果がありそうです。

グレは上司や同期と揺るぎない信頼関係を築いていき、物語は終わりへと向かいます。
このドラマはつらい時もどんな時でも、生きることを味わい、その瞬間に没頭することが人生なのだとグレを通して伝えているようでした。
「ミセン」に登場するグレやグレの同期、オ課長達は役者さんが演じている「役」ですが、私にはグレ達がこの世界の何処かで、一瞬一瞬を大切に生きているような、そんな気がしています。



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