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#3 『試験に出る哲学 「センター試験」で西洋思想に入門する』 〜ゆるり書評〜

※ポッドキャストは来週まとめてアップ予定です。



これは果たして書評の体を成しているのか。
自信はありませんが、引き続きゆるりと書き記して参ります。
今回読んだものは、



『試験に出る哲学 「センター試験」で西洋思想に入門する』斎藤哲也著



でございます。
著者の斎藤哲也氏はTBSラジオの「文化系トークラジオLIFE」でお馴染みで私自身も欠かさず聴いております。またライター・編集者として活躍されております。
試験やら哲学やらの言葉が並んでいるわけですが、早速以下ポイントに絞って評していきます。

◆センター試験の設問とは、「ここだけは理解していてほしい」メッセージで溢れている。
◆どうやら哲学は、批判することから始まるもののようであること。
◆教養としての「宗教」と「神」を理解しておくこと。

では早速ゆるりとスタートです。



◆センター試験の問題とは、「ここだけは理解していてほしい」メッセージで溢れている。

本書の構成は大変シンプルになっております。

①実際のセンター試験問題を引用。
②問題の主題となっている人物や考え方の解説
③引用された問題の答え合わせ。

タイトルがそのままこの本の主旨を表しており、センター試験の設問が西洋哲学の入門として最適であることがベースとなって書かれています。ここで自分がこれまで受けてきた数多の試験と、対策となっていた授業を振り返ってみると、教師の言う「ここ試験で出るからな!」というポイントがほぼ必ずといって良いほどあった訳であって。つまりここでいう「ここ試験で出るからな!」=「ここだけは理解していてほしい」ポイントであったのでは、という考えに行き着くのです。
実際に本書でも哲学を語る上で欠かせない西洋の哲学者を丁寧に、しかしできる限り分かりやすく理解する為に「ここだけは理解していてほしい」ポイントを、設問を使いながら解説されています。もっと言うなら解説を読む中で正解がなんとなく分かってくるので、③まで到達した時の読後のスッキリした感覚を初めて味わいました。



◆どうやら哲学は、批判することから始まるもののようであること。

歴史の面白さってどこに感じるものでしょうか。個人的にはある対象(人物や国など)の歩みを追って行くことによってその時代そのものがリアルに感じられ、浮き彫りになっていく点に感じます。本書の魅力はそうした時代ごとの価値観を順に追いながら、常に先駆けの考えを否定し新たな哲学を論証していくという哲学史ならではの面白みを感じられる点でしょう。
そしてここでははっきり恥ずかしがらずに述べておきましょう。つまりそれぞれの哲学者が“キャラ立ち”しているのです。本書の解説内ではそれぞれの哲学者が書いた書物が多く引用として出てきます。もちろん翻訳されているものなのですが、そのどれもが主張に熱いというか、暑苦しく感じられるものもあります。つまり哲学者の生身性、人間性をリアルに感じられることができ読んでいて引き込まれるのです。



◆教養としての「宗教」と「神」を理解しておくこと。

数多の本を読んでいく中でちょくちょく出くわす「宗教」と「神」という言葉。本書でも特に前半は「神」がどのように地球や事物に関わっているのかが大きな争点となっています。ここで無宗教に近い人からすると少し縁遠い話に感じられるかもしれません。
しかしその部分を比較的気にせずとも読める構成になっている本書を優れたバランス感覚を感じられます。もちろん「神」という言葉は頻出する訳ですが、哲学においては「神」は何を指すのかという論じられ方をされています。つまり、その時代において「神」をどう捉えていたのかの考察であり、「神」自体を論じるわけではなく「神」を内容したシステムを論じているのです。

ただし、私自身としては最低限の「宗教」や「神」に関する知識を持っていたほうが、特に欧米や宗教観の強固な地域から出てくる本(だけではなくカルチャー全般も同様)の一歩踏み込んだ理解ができるでしょう。なんとなくですが、三大宗教は世界の半数以上のシェアを誇っているものなので浅くても良いので知識は取り込むのがおすすめです。




さぁ、ここまでとしましょうか。
哲学とはどういうことなのか第一歩におすすめです。
あと試験をもっと楽しめばよかったと後悔もしました。
そんな気づきのある本書、ぜひお手にとってみてください。
では、次回乞うご期待。



yururi

※作品情報
タイトル:『試験に出る哲学 「センター試験」で西洋思想に入門する』
著者:斎藤哲也
出版元:NHK出版新書
価格:税込946円

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