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人を撮る

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人を撮ること、それについて思うこと
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#家族

さぁ、おうちで写真を撮ろう

出張撮影というお仕事をしていると。ご自宅での撮影をお申し込みされる際に時々、申し訳なさそうに申告されることがある。 「賃貸で狭くて…」「散らかっていて…」「官舎で殺風景で…」 おうちが写真映えしない、と皆さんおっしゃられるのだ。しかし小さい子供さんがいると、しかも複数だったりすると…それはもう物が増えるのも片付けが追いつかないのも当然だ。犬しかいない我が家でさえ、犬が来てからはあっちにこっちにとお気に入りのおもちゃを持ち運ぶせいで雑然としてしまうのだ。さらに知恵と機動力の

家族写真の保存と活用、どうしてる?

出張撮影というお仕事をしていての素朴な疑問なのだが、皆さん写真を撮ってもらった後はどうしているのだろうか? データで納品された写真をパソコンやスマホで確認して、その後は…? 安い出費ではないはずなので、見た後はそのままデータとして保管しているだけ…というパターンは少ないと思うのだけれど。今日は、その辺りについて少し書いてみたい。 写真を失わないために ~プリントで保存しよう~ もし、そのままデータとして保管しているだけなのであれば。ぜひ何らかのアウトプットをおこなって、

心を揺るがす、ちまっこさ 4

泣く、眠る…そんな赤子の生存本能に負けた大人達。 1時間の撮影もほぼ終わりに近づき、「しょうがないから撮れる物を撮ろう」という空気になりつつあった。 コントロールできないものは、もうしょうがない。 というわけで、眠るままにあれやこれやと好きにされる赤ちゃん。 しかし、お父さんが大好きなカービィを大量に並べ始めたところ… そこでパチリと目が開くという奇跡が!! 今だ!この時を逃してはならぬ!! 皆の心がひとつになり、再び高速で始まるとっかえひっかえ。 お父さんお母さんの

心を揺るがす、ちまっこさ 3

撮影時間のほとんどが、泣いてばかり寝てばかりの赤ちゃん… そんな姿もかわいらしいけれど、どうにか起きてる写真を撮りたい大人達。 とはいえ、人生経験18日にあまり無茶ぶりをするわけにも行かず… 「とりあえず、今撮れるものを撮りましょう!」とご提案してみることに。例えば赤ちゃん写真では定番の、サイズ感の違いがわかるような写真。 小さな赤ちゃんは幼児と違って動きも少なく、表情の変化も乏しくて…あかちゃんだけを撮影していると、単調な写真になりがちなもの。 こんな風に大人に

心を揺るがす、ちまっこさ 2

今回撮らせていただいたお子さんは、なんと生後18日。 この世に出てきて、まだ1ヶ月も経っていないというホヤホヤちゃん。 もう何もかもが小さくて「人間、始めました」というスタートラインに立ったばかりなので、まだ何もかもに慣れていない。目もよく見えないはずなので、それまで寄り添っていた温かな身体が突然なくなると不安になるのだろう…床に置かれると全身で不満を表明してくる。 そして泣く。小さいなりに、精一杯の抗議をしてくる。 気持ちはよくわかる。 あったかくて柔らかくて気持ちの

心を揺るがす、ちまっこさ 1

近年、増えてきた撮影に「ニューボーンフォト」というものがある。 生まれたばかりの小さな小さな新生児の頃を写真に残しておきましょう、というものだ。 しかし画像検索をして出てくるのは、小道具にこだわったものや合成だろうと思われるポーズのものがほとんどで…自分のスタイルとは合わない気がして、撮影メニューとして積極的に押し出してはいなかった。 とはいえ、全く撮影したことがない訳ではない。 ただ基本的には、自分の撮影だと自然体でのスナップが中心となるので… ああいう検索結果を見

語りかけてくる手を見つめて

昔から、手の写真というのが割合に好きだ。 そのせいか、先日撮影に行かせていただいた結婚式でも…無意識に手元の写真をあれこれ撮っていたことに、現像しながら気がついた。 ブーケを支え持つ新婦の、わずかな緊張を湛えた薄いレースの手袋に包まれる手。 ピアノ演奏の出番を待つ新郎のお父様の手は、膝の上でそっと握り締められていた。 いざ鍵盤を鳴らし始めてからの、思いを込めて音を紡いでいく指先の確かさは先ほどの手とは別人だ。 それに合わせて唱和する参列者の手は、歌詞の載った式次第を

動きのある写真、動きのない写真

この秋は、ひたすら写真と向き合っている。精神的な意味合いではなく、物理的な意味で。 七五三で撮影が立て続けに入っているおかげで、写真整理と現像でとにかくずっと写真を眺め続けているのだ。 子供ってジッとしていないし、大人だって集合写真の時には瞬きしたり視線を逸らしたりするものだ。だから確実な仕事をしようと思うと連写は必須…という訳で、1時間の撮影で500枚は撮っている。下手したら1000枚近い枚数になることもある。 これを納品用に80枚前後という数へと絞り込まねばならない

大人が写真を撮るとき その4

「大人が写真を撮るとき」シリーズとして掲載している、今回のこの宮島フォトツアー。お祖母様の米寿のお祝いということ以外にも、もうひとつリクエストがあった。 それが「年をとってしまった愛犬を、今のうちにたっぷり撮影して欲しい」というもので。 正直これは心に響いた。自分も犬を飼っている身としては、いつか来るその日は他人事ではない。「それはもう、沢山撮りましょうね!」とはりきって応え、心の中でコブシをグッと握りしめた。 移動の合間に、人と同じようにパチパチと撮影していく。この子

大人が写真を撮るとき その3

家族写真といえば、まず確実にリクエストされるのが集合写真なのだけれど…実はそんなに得意じゃない。 というか、何カットかを連写で撮って数十枚のストックがあっても。ほぼ必ず誰かが目を瞑っていたり、カメラのレンズ以外を見ていたりするのはなぜなんだろう。 もちろん、そうならないように色々とお声がけしながら撮っているのだけれど…にも関わらず、かなりの確率でそういった写真が存在するという不思議。 なので、人数が少ない方が安心して撮れる。それでも「なぜか瞬きのタイミングがやたらシャッ

大人が写真を撮るとき その2

大人は、写真を撮られる機会が少ない。 さらには撮られること自体を好まない人も多い。 だけれども、この撮影の中でお客様もおっしゃられていたのだけれど。人間いつでも「今日がこれからの人生の中で1番若い」のである。であるからには、写真を撮るのであれば。常に「今、この瞬間」に残すのがもっともベストな選択であるといえるはずだ。 わたしもあなたも、これから先、今日より若い日はないのだ。 ほら、後ろで鹿も「そうだそうだ」という顔をしている。 だからご家族での出張撮影においても、でき

大人が写真を撮るとき その1

最初にご依頼を伺った時に「素敵だな、羨ましいな」と思った。 自分には訪れなかった幸福の形は、いつでも眩しい。 「祖母の米寿のお祝いに身内で集まるので、宮島で撮影をお願いしたい」、これはそういうご依頼だった。 少し我が家の話をさせてもらうと。かわいがってくれた母方の祖父母は、米寿を迎えるよりも随分と前に早々と亡くなった。父方とは色々とあって子供時代以降は疎遠であり、やはり既に亡くなっている。 そのせいかこんな風に身内で集まって米寿をお祝いする、ということにどこか憧れめ

写真とは、過去と未来を結ぶもの

周りの人の話を聞くに、どうやら自分は幼い頃の出来事をよく覚えている方らしい。振り返って、1番古い記憶は2歳の頃だろうか。 家の駐車場で砂遊びをした後で、バケツをそのまま放置していたら。仕事から帰ってきた父の車に轢かれて割れてしまい、悲しくて悲しくて大泣きをした。父も母も慰めてくれたけど、いつまでも泣き止まないので最後には「遊んだ後に片付けんかったあんたも悪かったんじゃけん…」と諭された。 家族で行ったぶどう狩りから帰ってきた時。母が持ち帰ったぶどうの一部を隣の家の人に渡し

子供の撮影とは、走り回ること

小さなお子さんの撮影は、もう本当にこれだと思う。 とにかく走る、走り回っている。後ろから追いかけても、顔は写らない。だからとにかく走って走って回り込むのが、カメラマンの仕事だ。 坂道も、大股でガシガシとのぼる。子供に先回りできるように、勢いよく駆け上る。おかげで当日の夜には太腿が筋肉痛になっていた。 こうやって必死に前に回り込んで、やっと顔が写せる。そしてそのまま前方を維持したまま2列並んだ滑り台の片側に素早く陣取り、子供よりも一瞬早く滑り出すことによって臨場感溢れる滑