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「ツッコミどころが満載」とはどういう意味か?

「ツッコミどころが満載」という表現は多用されるけどよくよく考えてみるとどういう意味なのだろう?なぜツッコミどころは「満載」になってしまうのだろう。Primeビデオで『野球狂の詩』(’77)という映画を観たんだけどツッコミどころが満載だったのである。

ツッコミが成立するためには相手がボケていなければならないが、上手にボケていれば「満載」にはならないわけで、「ツッコミどころが満載」のコンテンツはけっして上手にボケているわけではない。

『野球狂の詩』の原作は水島新司先生の野球マンガだ。プロ野球初の女性投手の誕生と活躍が描かれている。いまなら現実味があるが当時は1977年であり、プロ野球界には女性投手を受け入れる空気はなかった。作中でも「おんなのくせに!」などというセリフが平気ででてくるが、今どきこんなことを言うのはタリバンくらいのものである。

そもそも当時は「セクハラ」という概念自体がなかったわけで、いまなら製作段階で「セクハラでは?」とボツになるアイデアがそのまま映画になっている。スタッフがツッコんでない代わりにプライム会員がツッコまなければならない。

主人公は女性なのだが新人なので寮に入る。この展開にすごーくムリがあるのだ。いま女性を男性寮に入れたらセクハラで訴えられるが、そこがスルーされて皆なんとなーく受け入れているのである。水原選手が入寮すると他の選手が「よろしくな!」などというのだが「よろしく」どころではない。

たとえば水原勇気が寮のお風呂に入っていると、先輩キャッチャーがとびこんできて「風呂の中で変化球の握りをトレーニングしろ!」とボールを渡たす。これはスパルタトレーニングという扱いになっているが、演じている俳優やスタッフは「なんかおかしーな」とうっすら感じていたはずだ。

また先輩選手が風呂に入る際に、「水原、背中を流してやれ!」などといわれて、水原勇気がはだかの先輩の背中をながすシーンがあるけど、風俗にしか見えない。しかし先輩は「水原、がんばれよ!」とはげまし水原も「はいがんばります!」などといいつつ流し続けるのである。

このようにツッコミどころが秒単位で発生するわけで、つまりアイデアがザツなのである。

だがザツさゆえに楽しめる要素も多い。プロ野球はいまでこそ大谷翔平選手のようなさわやかなイメージで、球場もきれいで女性ファンもおおい。しかし昭和50年代のプロ野球は品が悪く、球場はぼろで、おやじのヤジが飛び交っていた。そういう雰囲気をたっぷり楽しめる。

いまのところはPrimeで見れるけど、有料ストリーミングサービスの【日活カルト映画の世界】というシリーズにラインナップされているので、そのうち見れなくなる可能性が高い。なんだかんだ言ったけどよくできており、面白い作品です。珍品です。


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