見出し画像

『E.T.』の余波で『食人族』がヒットした話

サンガリアの「ミラクルボディV」ドリンクというのがある。

これはサントリーのデカビタドリンクのパクリであり、デカビタは瓶詰だけど、ミラクルボディCは缶に入っている。

ただし、缶にデカビタっぽい瓶の絵が描かれており、そしてデカビタよりも量があって、デカビタよりうまいと評判だ。

こういう実力のあるパクリみたいな作品が好きだ。たんなるパクリ精神ではこうはいかないのである。本家よりおいしくて安くて、しかも量がある。足りないのはブランドだけだ。

映画にもこの手の作品はある。たとえば『グーリーズ』。

タイトルは『グーニーズ』のパクリだけど、内容は『グレムリン』のパクリで、しかもどちらよりもおもしろい。足りないのはスピルバーグ・ブランドだけである。

ぼくはLDを持っているけど、DVDも出ているらしい。あまり知られていないけど、どこかで見かけたらおすすめです。

さて、日本には「もったいない」という言葉があるように、ムダを出さないことが尊ばれる。

日本の自動車も野球も、欧米のパクリみたいに言われているが、野球はスモールベースボールだし、クルマも燃費がよくて壊れない。パクリだけど実力があるわけだ。

ぼくもこういう感じのものが好きである。コンパクトに仕上げたタイプの「粋な小品」をこのむ。そして、そういうものを確実に仕上げてくる渋い職人監督も好きである。

ジョン・バダム監督が80年代に手掛けたSF映画もそういう意味で好きだった。『ウォーゲーム』、『ブルーサンダー』、『ショートサーキット』などなど。

派手さはないが、確実におもしろい。『ショート・サーキット』なんかあきらかに『E.T.』のパクリなのだが、それでもしっかりとおもしろく仕上げてくるところがいい。

この記事には、『ショートサーキット』が『E.T.』 のパクリであるにもかかわらず、どういう風によくできているかが語られているんだけど、その中で『E.T.』がいかにヒットしたかという逸話が紹介されていて感動した。『E.T.』は

渋谷の上映館では、あまりの列の長さに鑑賞を諦めた人々が、隣の映画館で上映していた『食人族』(80)を鑑賞したため、異例のヒットを飛ばしたという伝説まで残している。

当時、ぼくは田舎にいたので『E.T.』は問題なく見られたけど、渋谷に行った人たちは『E.T.』をあきらめて『食人族』をみたのだそうだ。

ちなみに、ぼくは『食人族』は見ていない。

アマゾンの秘境に出かけたレポーター一行が失踪。発見されたフィルムには彼らが食人族と出会い、やがて喰い殺されるまでが写っていた。

こういうストーリーだとわかっているので、見たらうんざりしそうで見ていない。しかし、わざわざ渋谷まででかけてハートウォーミングな『E.T.』をあきらめ、グロい『食人族』を見た人々はよほど追い詰められていたとしか思えない。

そして、そういう人たちだけで『食人族』がヒットしたというのは、それだけ多くの人が追い詰められていたということであり、よほどのことだ。『E.T.』がそれだけすごかったということだが、『食人族』もある意味すごかったわけだ。

なんだか『食人族』を見なければならないような気がしてきた。いやだなあ。いやだけどこのエピソードに感銘を受けたので、DVDを借りてしまいそうな気がする。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?