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「元気」がきもちわるい・・

かつて「Web 2.0」ということばが流行ったが、みんなが使っているわりにはなんのことやらわからないことばだった。

震災の直後には「寄り添う」ということばもはやった。ただし、響きはいいけど、具体的になにを意味しているのかがわからなかった。

「遺憾」というのも空疎なことばだ。日本政府はなにかがあるたびに遺憾の意を表明するので「遺憾砲」とよばれる。北朝鮮がミサイルを発射すると、すぐさま遺憾砲を発射する。

遺憾とは「期待通りではなく不満だ」という意味だそうである(ウィキペディア)。そうすると、きわめて遺憾である、というのは、

とても残念だね~

といっていることになる。そりゃあ残念なのはわかるが「ミサイルにどう対応するのか?」ときいているのに「そりゃ残念だよ~」しか言わない。

「日本を元気にしたい」とか「地元に元気をとどけたい」という人がいるが、あれもよくわからない。「元気にする」というのは、具体的になにをしてくれるということなのだろうか?

病気を治してくれるのか・・
お金をくれるのか・・
笑わせてくれるのか・・

ぼくがさしあたり気がかりなのは食うことだ。食糧難を心配している。気候変動が深刻化しても、サプライチェーンが寸断されても、地震が来ても、食糧が不足する可能性がある。なので、元気は届けてくれなくていいけど、食料なら届けてほしい。

というわけで以前ここでも書いたけど、農業をやっている知人から直接お米を買うようになった。この人は、エネルギー危機が起こってもコメを収穫できる体制をつくりあげている。

さて、そうやって食料についてのアンテナを張り巡らせていた去年の夏、実家にかえって近所の郵便局に行ったら1枚のポスターが目にとまった。地元で農業をやっているという若者10人くらいが作成したポスターである。

地元を元気にしたいのでみかんジュースをつくっています!

と書かれていた。みかんジュースがどういう元気をくれるのかわからないが、ぼくはコメと野菜があって雨露をしのげれば十分に元気である。みかんジュースなどいらない。きみらもみかんジュースより先にコメを確保しておかなければ元気なんかすぐになくなるぜ。

さて、14歳の不登校ユーチューバー氏が、日本中を回って「元気を届けたい」のでクラウドファンディングで数百万円集めたのだそうだ。

べつにこどもがユーチューバーをやってもかまわないし、お金を集めてもいいだろう。ただし、かれはメンタリストdaigo氏が高額納税と生活保護の件で世間に滅多打ちにされているときに、彼を非難する動画を上げていた。

それもいいだろう。カネの問題に介入するわけだ。つまり、大人の土俵に上がるわけだ。でも大人の土俵に上がるからには、生と性の問題にむきあってもらわなければ困る。「学校に行くか行かない」などというこどもの問題はどうでもいい。

人生の大問題は、つきつめれば生と性に行きつく。学校に行こうが行くまいがコメは食うし、性欲はある。

氏は、YouTubeの収益をどう管理し、だれの金でメシを食っているのか。
14歳でオナニーの悩みはないのか。
撮影が終わったらネットポルノを見るのか。

そういうのを抜きに「日本中の不登校のこどもに元気を届けたい」などといわれても、こどもの顔と大人の顔をじょうずに使い分けているように見えてきもちがわるい。

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