話題のドイツ人監督をまとめてみた2/2
ドイツ人監督たちの活躍、彼らの人数をみると、現代サッカーは彼ら無しに語ることができない。
では彼らは、どのようにして監督になったのか。勿論それはドイツサッカー協会のプロコーチライセンスを取得して、監督になっている。
そこで今回は、ドイツサッカー協会がどのようにして彼らを育成しているかに迫っていきたい。
指導者育成システム
戦後、スイスワールドカップで優勝。当時のドイツ代表監督ゼップ・ヘルベルガーは、1936~64年までドイツ代表監督に就任。ワールドカップでもドイツ代表は優勝した。その後ヘルベルガーが自身の後継者を三人指名。そのうちの一人、バイスバイラーは指導者育成の責任者として指名された。
バイスバイラーは指導者ライセンスシステムをケルン体育大学で始める。B級は少年指導ができるライセンス、A級はアマチュア全般指導できるライセンス、そしてプロライセンスがプロとアマチュア指導ができるライセンスとそれぞれ制定。
さらに2000年以降、ユーロ2000でのドイツ代表のGL敗退をうけて、ドイツサッカー協会は選手育成システム、指導者育成の改革を実行。
育成システムでは全国366か所にトレーニングセンターを設けて、優秀な人材をスカウトし、ドイツサッカー協会が育成するシステムを作った。また、ドイツの1部2部3部のすべてのクラブに、アカデミーを持つことを義務づけ、その指導者にもプロライセンス所有者を一定数雇用することも義務づけた。
そのためドイツの各クラブはアカデミー運営のため、プロライセンスを保持している人材が必要になる。そこにフルタイムジョブを求めて人材が集まるようになってきた。ドイツサッカー協会のプロライセンス講習は、年に1回であり講習、実務試験などをこなさなければいけない。
またドイツサッカー協会のプロライセンスの取得資格として、「ブンデスリーガ(1~3部)アシスタントコーチ、6部リーグ以上の成人チーム監督、U-19、U-17ブンデスリーガ監督、女子ブンデスリーガ監督」といった実績が必要になる。つまり、いくら選手時代の実績があったとしても、監督であったり、アシスタントコーチとして現場を経験しなければ、プロコーチ資格であるプロライセンスの講習すら受けることができないのだ。
他国との比較
例えばイタリアでは、代表選手としてユーロ、ワールドカップに出場した選手は、コーチ、監督として現場経験がなくても、プロライセンス講習を受けられる。そのため、ピルロなどは一切の現場経験なくユベントストップチームの監督に招聘可能だったわけだ。イタリアではカペッロ、アンチェロッティ、マンチーニ、コンテなどの元イタリア代表選手だった人材が監督としても優秀だったケースが数多くある。これらの事例に基づいてこのような仕組みを設けているのだろう。
他方、ドイツではそのような優遇制度がない。現場たたき上げの優秀な人材が、アカデミーを担当しながら腕を磨き、いずれトップチームに昇格する。しかも各クラブのアカデミーにプロライセンス保有者が必要であるため、彼らの数も多く、競争率も高くなり優秀な人材が輩出されるという仕組みだ。
ドイツでは、選手と監督ではキャリア、実力が別だ、という考え方のもと指導者が育成されている。どんな名選手でもライセンスを獲得するためには、アシスタントコーチやユース監督といった現場での下積みが必要なのだ。ここも優秀なドイツ人監督たちが数多く輩出される秘訣だろう。戦術的な選手と言われているバラック、シュバインシュタイガー、ラームの誰もまだ監督としては、デビューしていない。名選手だからと言って簡単に監督を任せてもらえない指導者の層の分厚さが、ドイツサッカー界の最大の長所と言えるのではないだろうか。
サッカー戦術のパラダイムシフトと言われたペップバルサ。そのペップの後継者と見られるような監督は、ペップの母国スペインから輩出されていない。
一方、クロップを生み出したドイツでは、クロップから影響を受けただけでなく、クロップやペップの戦術を独自解釈したうえで異なる戦術を採用する監督が数多く輩出されている。これは、明らかにドイツサッカー協会が、指導者育成のシステムによって優秀な指導者を輩出しようと考え抜いた結果だ。
個々の継承でなく、整備されたシステムによって優秀な人材を輩出するのは、選手育成でも監督育成でも同じ成功への近道だと言える。
参考資料
フットボリスタ・ドイツの指導者育成教官に聞く“ラップトップ監督”の育て方https://www.footballista.jp/special/36723
サッカーキング・【ブンデスラボ 】なぜ、ドイツには優秀な監督が多い?https://www.youtube.com/watch?v=558VeKod1oc
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