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不適合回路の恋

痛切に駄目だと思った。
昔から衝動に対する目論みが甘く、思い切りの割に土壇場で選択を迫られる事態が多かった、というよりわざとその状況に追い込んで選ばざるを得なくしていたようにも思う。

こんなにも誠実にどこまでも薄情だと自分で思う。結局のところ一人でいるのが大好きで、思考を乱されるのは仕事以外でなるたけ少なくしたい。誰かの人生に責任を持ちたくないし、あれをすべき、これをすべきという重荷を負いたくもない。縛られるのが一番嫌いでなのに一人はたまに寂しい。
優しい気持ちを持ちたい瞬間がある気もすれば、馬鹿ばっかりだって基本的に見下している。

こんな人間が恋というには回路は働かないだろう。正常バイアスの敗北。脳を騙せるほど欲望のレベルはそして高くなかった。


薬指のわたしが運命だと言ったとして


自己同一性という言葉は呪いであり、「あの時ああ言ったじゃん」と言われる度に申し訳なさを感じている。
毎秒ごとに違うわたしを愛してほしいとか言ってみたりしながら、全然誰にも一生分かられたくはないのだ。