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怪獣GIGA ガイアの愛すべき子どもたち

大森靖子さんプロデュースアイドルMAPA
2作連動シングルcalling box/いもうと
怪獣GIGA/レディースコミック

2021年末に発売し、去年1番聴いたアルバム四天王の3曲目レディースクリニックの女性を主人公に置いた、どうしようもない現実を飛躍させる為のイマジナリーフレンド、いやイマジナリー怪獣のMAPAちゃん達が織りなす4作があまりにすごい為、その全貌の一端でも言及出来ればと思う。

レディースクリニック

まずはレディースクリニックであるが、わたしは子どもを産んだことが無い。可能ならいつか持ってみたいと考えているが、命が一つ生まれるというのは待ったなしのどこまでも現実だ。泣いても怒っても喚いても後悔しても刻一刻と子どもは育つし、よーいどんはあってもタイム!やっぱ一抜けた!は基本的に無い。
細胞は分裂を止めないし、タイムリミットはもうそこだ。
おそらく望むタイミングではない子どもを持ってしまった待合室のベンチで、言葉を無くす女性が主人公だと仮定して文章を書いてみたい。
自分以外の人生を変える選択の重みに押しつぶされそうな彼女がほんの少し、痛みをやり過ごす為に想像の世界に浸ることは誰にも許される権利だ。

個人的なその後の解釈の時系列はこうである。

レディースコミック

カタカタと医者の指がキーボードを叩くようなイントロ、白い壁、壁、壁。赤ちゃん特集の雑誌は配慮の二文字でファッション誌と当たり障りのない占い雑誌に変わる、不妊治療の第一声は「パートナーと性交渉はありますか?」女が1人で立たされる白い地獄。
その隣の診察室では泣いて喜ぶ女、その反対の部屋で言葉に詰まるわたし。
どうせならエグい妄想で、下品で扇状的な煽り文ならアクセスを稼げるから、せめて視聴率を上げたいな。
どうしようもなく陳腐なよくある話だって慰めることくらい許して欲しい。黒塗りのベンツが追突してくるようなベタな展開じゃ無いと笑えない。
でも頭のどこかは冷静で、ああなんて言おうか、なんて切り出せばいいかがわからなくてiPhoneをキツく握りしめる。

calling box


記憶がないままなんとかお会計を終えて街に出る。今日も馬鹿みたいに人が多い、こんなに人が溢れているのに誰にもわかってもらえないなんて浸るのダサイ、わたしは被害者じゃなくて加害者でもあるのに、誰か、今この瞬間に大丈夫か?って聴いて欲しい。
そうしたら初めて大丈夫じゃないって言えるのに。
今すぐ逃げ出したくて、どこにもいけない。軽いはずの箱がいつの間にか重くなってもう動けない。
lineのトーク欄を見ても連絡できる人なんて1人もいないから、記憶を深く潜る。

いもうと

とうとう蹲ってしまった。
もう何もしたくない。思い出すのは少女だった頃のこと、こんな筈じゃなかったのにな。どこで間違えたのか、何も悪いことしていないのに。
「わたし可哀想」がストレス緩和には1番だから、今この瞬間だけは許して欲しい。わたしだけはわたしを可愛がってあげる。
少女の間だけは責任を感じないで済む。もう少ししたら立て直すから、今だけは何もしないでいたい。
現実に戻るまであと少し
わたしが築いたガラスのバリアが割れるまであといち、に、さん。
後ろの正面はもう決まっている。

怪獣GIGA


あーあ、と声を出して立ち上がる。
泣いても怒っても喚いても後悔しても変わらないならせめて一つだけでも出来ることをやろう。
少しでも納得のいく選択ができるように。
イヤフォンからは大好きな歌手の歌が流れる。
帰って、ご飯を食べて、お風呂に入って、今日をなんとか眠れたら、明日話をしよう。
どうにもならなくてもどうしたいのかを考えよう。ふ、と、昔好きだった絵本に出てきたカラフルな怪獣を思い出す。あの本、よくお母さんに読んでもらっていたっけ。
なにが好きだったんだろう。本屋さんにまだあるのかな。明日話が終わったら買いに行こうかな。わたしの命を大事にできるのはわたしだけ。
改札に向かう。思ったよりも時間が経っていてもう夕方だ。
明日の朝ごはんは何にしようか。
毎日、明日の朝ごはんを考えたら生きていける。

視界の外に怪獣がよぎったような気がして瞬きする。おかえりわたしの現実。


ちなみにどうしてGIGA?と考察してみた。
GIGAの語源はギリシア神話の巨人族ギガスは大地の女神ガイアの子ども達との事だ。
オリュンポスの神々による天界と地上の世界の支配に終止符を打つために始まるのがギガントマキアと呼ばれる神々の戦いだそう。

わたしたちの女神ガイアの腕は広く深く、留まるところをしらないらしい。
そんな彼女の愛すべき子どもたちの行進を出来ればもっと近くで見てみたいものである。

(まだまだギリシア神話には続きがある為今後の新曲が楽しみすぎるよ!)