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やはり団塊の世代には勝てないかもしれない 礎を築いた人たちに結局支えてもらうのか

10年前では思いもつかないような職種が今を席巻している。そして、10年後、今は思いもつかないような職種が現れ、世を席巻しているという。
実に、今の小学生の55%が、大人になったときに今存在していない職業に就くことになるという。つまり、今存在する職業の45%しか、10年後存在していないということになる。

世の中に数多ある職業の55%がなくなるなんて、にわかに信じがたい話かもしれないが、10年前を思い出してみると、あり得ない話ではないかもしれないと思えてしまう。2010年、平成22年はスマホひとつでこんなにありとあらゆることができるなんて思いもしなかったし。
さて、近い将来を心配してしまう話のひとつにこんなのがあった。10年前から言われていることだが、今このとき、一層現実味を帯びて見えてくる。そして、それが近い将来の仕事の奪い合いにならないことを願うばかりなのだが。

内容は至極単純だ。高齢者が派遣や内職という形で労働市場に流入しているという話。

<ケース1>
「高齢社」という平均年齢62.8歳の高齢者専門の派遣会社。登録する労働者は大手企業の管理職などを経験して定年退職した60代、70代の人。派遣先は大手企業の営業所から、マンションの管理人、布団屋など軽作業所の内部作業、コールセンターまで様々。
時給は1000円程度。年金がフル受給できるよう週に3日程度働き、月10万円ほどの収入の人が多い。急激に売上が伸びている。

<ケース2>
昔、日本に縫製工場が多かった頃、若い女性がたくさん工場で働いていた。その女性らは今、子育ての終わった60歳前後の主婦になっている。彼女らは工業用ミシンを操り、中国の工場に負けない生産性で服が縫える。この人達の内職を利用して、日本製の子供服を作っている会社の商品が売れている。日本にきた中国人観光客が「高品質な日本製の洋服をお土産に買って帰りたい!」というのだ。
ご主人も定年後だし、年金15万円にミシン内職で10万円が手に入れば大満足。もちろんご主人の食事とか家事には(子供も独立してるし)差し支えがない。

第二の人生を悠々自適に過ごしながらも、自分のお小遣いやお孫さんの喜ぶ顔見たさに労働を続ける。そして、その労働力を必要としている会社がたくさんある。働く高齢者側も、そして、雇う側も非常に満足度が高い。特に、雇う側の満足度が高いのに驚くが、その理由が最も至極すぎる。そして、その理由こそ表題の理由なのだ。

理由その①
安い給与に、労使双方が満足している

高齢者側は、“年金を減額されたくない”とか、“家事の合間だけで働きたい”とかの理由があるので、月10万~15万円くらいが望ましい収入と考えている。
これって若者なら“ワープア”と言われ、“結婚もできない、子育てもできない”と責められるレベルの収入だが、“年金15万円+退職後の派遣・内職で月15万円で、夫婦で30万円の収入”は贅沢はできずとも悠々自適の老後生活には十分な収入だ。
これから生活基盤を作っていくための収入が必要な若者は、年金というベーシックインカムがあり、ローンが終わっていて家賃支払いも不要で、生活費だけ稼げばよい高齢者に、労働市場におけるコスト競争力という点で、全くかなわない。

理由その②
高齢者はくだらない仕事でもまじめに働く

地味な軽作業を依頼している“雇う側”の企業の人の実際の台詞。「地味な作業だし、日中一人で働いてもらうことが多い。若者だとサボりもするが、高齢者はまじめ。仕事も丁寧です」と。
これもよくわかる。若者をひとりで作業所に放置し「これをやっとけ」的に指示しても、相当時間をスマホゲームやらツイッターやらに費やして、全然仕事が進みそうにない。一方の高齢者はそんな遊びはそもそも知らない(知らないは言い過ぎかもしれないが、そこまで熱心ではない)。
一般的には若い人ほど刺激を好むから、そういう作業は退屈すぎるし、先が長い若者の目にはそれらの仕事は全くキャリアアップにつながらない、将来性のないものに思える。一方の高齢労働者は、“キャリアアップの機会”なんていう面倒なものを求めない。そして雇う側も、そういう作業を淡々着々とサボらずやってくれる労働者を求めている
今や厳しい肉体労働は建設現場以外では多くない。まじめで、“先が見えないとか言ってすぐにやめてしまう”こともない高齢者は、多くの職場で、若者より圧倒的に“好ましい労働者”であると判断され始めている。

理由その③
高齢者は長年の職業訓練により、社会スキルが高い

高齢者派遣の会社に登録している人の多くが、企業で正社員として40年もの職業訓練を受けている。<1つの会社で勤め上げる>というひと昔前の美徳みたいなものが、結局その人自身を助けているのだ。

『高齢社』の派遣社員で60代の人がガス会社のアンケート調査員として働く人の評価は、初日から何の問題もなく仕事をこなしていて、“指導役”として付けられた31歳の社員が驚くほどのものだったらしい。
その人はもともと技術者で営業職ではなかった。それでもアンケートを依頼する際の話法はとても自然でスムーズで、かつ信頼感に溢れており上手だった。たとえ技術者でも40年勤め上げた人の持っているコミュニケーションスキルはこういうレベルなんだ、と感心したらしい。
こういう“顧客とのスムーズな話し方”を“トレーニングで、若者に習得させる”となると、教える方の手間と時間も膨大だ。客を怒らせてトラブルになったりしたら元も子もない。そういう仕事をほとんどなんの指示もしなくても、“再就職1日目”から難なくこなせる高齢労働者が、派遣市場に流入してきているのだ。これはもう雇う側の選択は明らかだ。

それはミシンの内職のケースでも同じだった。服飾学校に通う(その中でもスキルの高い)若い専門学校生が10分かかる作業を、内職の高齢主婦は2分以内で仕上げてしまうらしい。しかも、仕事の指示は口頭で数分で理解する。「こんな感じに縫って欲しい」と言うだけだそうだ。
若い子に、もしくは、外国人の作業者にやらせようとすると、詳細な縫製指示書が必要になる。この手間だけを考えても、依頼側のコストは高齢主婦に頼んだ方が圧倒的に少なくて済む。
長期間、正社員として企業社会で実地職業訓練を受けてきた高齢者の社会スキルは、非常に高いのだ。若者を雇うと企業に多大な負担となるトレーニングや指示コストが不要なほどに……。(かくして若者が実地訓練を受ける機会は益々少なくなる)

理由その④
客側も高齢者ばっかりになる

ずっと昔は女性には購買力がなかった。だから企業側も男性社会でよかった。現代は女性も消費の半分を担う。企業側も女性を活用することが必要になる。同じことが高齢化社会でも起っている。
上記のアンケート調査員もそうだし、ファーストフード店や小売り業の売り子さんだってそうだ。これからは客側も多くが高齢者になっていく。ファーストフード店のカタカナメニューのオーダーにもたもたしてしまう高齢の客にとって、悪気はなくても、なんでそんなことでもたつくのか理解もできない若い店員と、自分も同じ戸惑いを感じたことのある高齢の店員では、どちらが「客をリピーターにさせられる接客スキル」を発揮できるか、結果としてどちらの売上がよくなりそうか、結構あきらかだ。
加えて、上記に紹介した「高齢社」を起業したのも高齢者、というのがまた注目点だ。
今、それを体験的に理解できる高齢者が自ら起業を始めている。派遣社員や内職の担い手として働く高齢者だけではなく、社会の隠れたニーズを掘り起こし、リーダーシップを発揮して起業をする人まで“高齢者”になりつつあるのだ。

しかもこれらの高齢者は遊び気分で働いているわけではない。60歳の定年を無制限に延長できるほどの余裕は、もう日本企業にはない。すると大企業の“正社員”定年退職者は、年金支給が始まるまでのつなぎとして、かつ、年金への追加収入を得るために、「派遣でも内職でもいいから働き続ける」という道を選ぶ。これからも働く必要のある高齢者がどんどん労働市場に出てくるのだ。
彼らはたとえ退屈な仕事でも、若者よりも圧倒的にまじめに取り組む。月10万円の低賃金でも、年金もあるし、文句を言わない。正社員として長年にわたり受けてきた職業訓練は、育成費用さえコスト削減したい雇用主にとって非常に魅力的だ。その上、今後は消費者の大半が高齢者になるのだから、そもそもその気持ちがわからない若者を雇う必要がどこにある、とならないだろうか。

近年は「中高年正社員の雇用を守るため、若者が派遣社員に追いやられている」とか、「就職氷河期の再来」と言われているが、「若者が正社員になれない」などという贅沢な悩みが喧伝されるのはもうあと数年だけかもしれない。
なぜならこれからは若者は、正社員市場どころか、派遣社員や内職、アルバイト市場からさえ、高齢者の進出によって閉め出されてしまうかもしれないのだから。

今は「若い間は派遣でもなんでもできるけど、年をとった時に困るから正社員になっておくべき」という話も、もうこれからは「若い間は派遣でもなんでもできる」という部分さえ、成り立たなくなってくる可能性がある。正社員、非正規社員含めて、労働市場は、高齢者の、高齢者による、高齢者のための市場となるのかも!?

ただでさえ仕事がないのに……。

「若者」のみなさん、どうします?
そろそろ本気出さないと、本当に

○○○○人

になりかねないかも。

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