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13年前の育児日記⑪ はい 吸ったこと あります

少し前のことだが、乳腺炎の記事を読んだ。たまたま新聞で目にしたので思い出したが、このつらさと大変さは人ごとではなかった。

うちの場合は、息子の飲む量が少なかったわけではないらしい。その記事にもあったが、その原因は様々。薬に頼りたくなかったので、マッサージやらヨガ?やら、やれることはやってみた。アロマが良いなんて聞いたからそれも試みた。匂いでおっぱいが!?リラックス効果を狙ったのだろうか。どれも、効果はあったようだがイマイチ決め手にはならなかった。

そうこうしているうちに、もうこれ以上ないぐらいパンパンに膨れている。膨れるというか破裂しそうだ。こんなに硬くなるのかと驚く。

「私が吸おう」

これしかない。背に腹は代えられぬは当人も私も同じく。意を決した。
私と同じ決意を固めた育休男子は、全国に何人いるのだろうか。ぜひとも語り合いたいものだ。

さて、実際に吸ってみると、これが全くと言って良いほど母乳が出てこない。赤子はあんなに簡単に吸い始めるのに。私が吸えども吸えども全く出てこない。
「これ、本当にでてくるのか!?」
と思わず聞いてしまうほど。当人はなぜだか爆笑していた。そんなに懸命に吸う私の姿が面白かったのだろうか。苦しそうだった姿を見ていたので、爆笑していたのを見て思わず嬉しくなってしまった。

でも、肝心のおっぱいはまだパンパン。吸うしかない。何度も何度もトライしていた私の口の中は、ついに自分の歯で切れてしまった。
口の中に血の味が広がったそのとき……、
出た!出てきた!なんとも言えない母乳が、びゃーーーっと出てきたのである。
多分私も昔飲んだことがあるであろう母乳。しかし、その味の記憶は全くない。初めて飲んだって感じだった。なんとも言えない味。
飲むわけにもいかないので、吸っては吐き出し吸っては吐き出しを繰り返す。血と混じり合ってピンクになった母乳を、私はどんどん吐き出した。

こんなにたくさん出てくるものなのか!?そう思う暇もないくらい出てくるわ出てくるわ。その量を量れば良かったと今では思うが、その時は必死でそれどころではない。400mlか500mlか。いや、もっとあったかもしれない。口の中を切りながら必死に吸い続け、ついに「もうそろそろ良いかも」の言葉をもらった。

「めちゃくちゃ楽になったーーー!」

そう言ってもらえて、口の中が切れたのも忘れるほど嬉しかった。あれだけ苦しそうだった姿はどこにもなく、表情には笑顔が戻っていた。
笑顔が戻るとともに、あれだけパンパンだったおっぱいも半分かそれ以下にしぼんで?いた。いや、その収縮率にも驚いたよ。
相当苦しかったんだろうなって思えたぐらい。

私が吸いました。
口の中が切れるくらい吸いました。
今では笑い話だ。

そう考えてみると、赤ちゃんのパワーは計り知れない。歯がないから口の中が切れることはないだろうが、その吸引力は大人の想像を遙かに上回っているのだろう。
改めて、子どもの無限の力を身をもって知った。

これからも、必要とあらばいつでも吸います!

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