【新刊レビュー】オトメの帝国14巻

百合人ならみんな大好き『オトメの帝国』、最新14巻発売ですね!

なんか、最近ますます人気高まってませんか?
発売日当日に地元(本屋激戦区)の書店を数件回ってもなかなか見つからなくて、ポップの付いた最後の一冊をやっと手に入れたんですよ。

この人気からすると、メディアミックスも今後期待できそうな気もしますが、どうなんでしょう?
作品の雰囲気としては、アニメより実写のリアルな女の子たちで観たいけれど、このゆる面白さは、肩の力の抜けたセンスある演技ができるキャストじゃないと体現できないので、なかなか難しいところですね。広瀬すずと松岡茉優が十数人ほしくなっちゃいますね。

あと、いろいろな体型の女の子が絶妙な描写力で描かれているのも魅力の一つなので、似た体型の若い女性タレントが多い日本芸能界でキャスティングすると、途端につまらなくなってしまいそうな気もします。
太ってる痩せてるだけじゃなく、骨格ががっしりして大きい感じの人とか、骨格からして小さくて細い感じの人とかも描き分けて、しかも体型的な特徴と性格はステレオタイプに結びついていないし、それぞれ全員可愛いからすごい。

まあでも、もしも実写化するなら小野田ちゃんは芦田愛菜さんにやってほしかったりしますね。

山田姉妹を演じられるビジュアルの持ち主が、BILLIE IDLE®のモモセモモ・アキラ姉妹しか思い浮かばないのですが、彼女たちは歌い手さんで演技経験はおそらくないのが悩ましいところ…

(2番目に歌う前髪ぱっつんのかわいこちゃんが妹・アキラ、その次に歌う金髪美人が姉・モモセです。実の姉妹です。2人ともとんでもなく脚が長くて背が高い。)

演じなくても、コスプレだけでもしてほしい…
と、私の勝手なキャスティング妄想はここまでにして、14巻の感想とまいりましょう!

平和が訪れてますが…

どんどんみんないい子になっていってますよね。作者の岸虎次郎先生が、全キャラに愛情を注いでいるがゆえなのかもしれません。

受験のことばかりだった生徒会長・小野田さんは、成績優秀な不思議っ子・菜々沢さんと仲良くなって、何にでも真面目に向き合う性格の良いところが前面に出るようになり。
ほのかさんも、エリーシャに対してはツンデレのツンが抜けてすっかり好き好きモードになってるし、漫研ではバランス取ってくれるめっちゃいい後輩だし。

近刊で一番波乱を迎えていた文芸部の静香先輩と美緒が、ひとまずハッピーエンドな感じになったので、あまりにも全体的に平和になってしまった感もありつつ。

元々ほのぼの百合を安心して楽しめるのも、この作品の魅力だったりもするので、その辺に関しては良い塩梅でした。
安定してラブラブなあーちえ
綾乃美好の、気心知れすぎてなかなかラブな感じにならないけど、時々はみ出す愛がもどかしい幼馴染みコンビ。
SMカップル優茉莉+双子コーデまひまひのでこぼこな友情。
小野田・菜々沢ほのエリ響木みどりりあたりも、最新巻でも癒されます。

今後の注目カプ

今後波乱がありそうな最有力は、やはり最強女子山田かおる先輩と漫研のマスク先輩でしょうね…。
かおるさん、実際にいたら本気で受け入れられない部分もありそうなヤバイ人ですが、「この人はこのままでいてほしい」となぜか思ってしまう強キャラですね。しかし、棒ちゃんことマスク先輩も負けないでほしい。

個人的に気になっているのはディベート部ののののん先輩とゆみみ
ディベート部は、本気で最初の方怖かったんですよ。のののん先輩への後輩たちのいじりが、結構いじめレベルのヒヤッとする感じで。
でも今になって、既刊も含めて読み返してみると、それってだいたいゆみみ主導で、まゆゆとまりりは単にノリがよくて何も考えずに盛り上がってただけに見えて。先輩に対していきなり冷ややかな態度とったりするのも、実はゆみみだけなんですよね。

で、最近のゆみみを見ていると、のののん先輩に、ほかの後輩たちより自分を特別扱いしてほしい、差別化してほしい、みたいな感情を出してきている。それがちょっと支配っぽいコワイ言動になったりもしているんですが。

独占欲といじめの心理

『オトメの帝国』は、女の子同士の、好きな相手とのスキンシップのドキドキ感が巧みに描かれた作品ですが、これまでに同意のない関係性で触られることの嫌悪や恐怖の表現も時々織り込んできていて、岸虎次郎という作家の本質的なメッセージはそこにあるのかも…と思わせたりするところがあります。

恋愛的な文脈上での、「相手に特別に思われたい」「相手を自分のものにしたい」という感情は、「相手を支配したい」「相手をおもちゃにしたい」と」紙一重なところがあります。
優茉莉の関係は、強い信頼関係の上で、プレイとして「おもちゃにする/される」ということを楽しみながら人間関係そのものは主従にならないというバランスが保たれていて、まひまひとの友情で社会性も開かれ、とても平和なところに落ち着いたと思います。
はたしてのののん先輩とゆみみは、これからどういう関係性を築いていくのか。はたして、恋愛の独占欲と近いところにあるいじめの心理という、センシティブな問題に触れるのか否か。気になるところです。

しかしのののん先輩って、教室では作品内2大最強美女であるかおる先輩、静香先輩と仲良さそうなんですよね。高校生の学年マジックというか。部内では見られない「3年生の中にいるのののん先輩」に触れた時、ゆみみってどういう反応するのかなとか、見てみたいですよね。

あとは、むっつり変態奈緒ちゃんと鬼火先輩のあの展開は、何かオチがつくのかあのままつかないのかも気になるところです!

まだまだ続巻が楽しみな『オトメの帝国』14巻でした。

文・宇井彩野

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