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8ハウスを超えていけーー蠍座の本当の凄さ

先日、ある男性の言葉が私に会心の一撃をくらわせました。茫然と立ち尽くすしかないほどのクリティカルヒット。私たちは本当は死んでいるんですーーというフレーズから始まったその言葉。「自分はいないという視点(=自我の死)に立たない限り、本当に他者を許したり、自分を認めたり、今ここという地点に至ることなどできない」というお話でした。(その方の真意は違うかもしれませんが、私にはそのように聴こえたのです)



リアルと心象世界の境目が曖昧になるほどの鮮明過ぎる夢から目が醒めた時、現実と夢の区別がつかないで茫然とするーーという経験はありませんか?この私は本当に生きているのだろうか、もしかしたら、自分はすでに「あの世」にいるのに、ただ気づいていないだけではないだろうかーーそんな凍りつくような思いに駆られたことが何度かあります。



意識の世界を少し掘り下げていくと、それだって、ありえない話ではないと思うのです。在るは無い、美しいは醜い、素晴らしいは素晴らしくない、満たされるは満たされないーーとワンセットだからです。素晴らしいと言った瞬間、素晴らしくないを作り出してしまう、幸せですと言った瞬間、幸せではない無意識が垣間見えてしまう・・・そんな底なしの虚しい世界に、私たちは生きています。



つまり、生は死・死は生です。この世界は虚しいということ、どこまで行っても私という自我は底なしに虚しいーーという戦慄の事実を受け入れたくないから、必死で何かをやっているーーそれが私たちの姿です。私が占星術や意識の世界を掘り下げて、こうして発信しているのも、本当は自我を保つためであり、自己が崩壊しないためです。顕在意識では「これが私の喜び」だと感じていますが、奥底にあるものは「自我の戯れ・あるいは戯言」でしかないこともわかっています。



そんな愚かで不完全で、憐れな存在である自分を認めること。絶望を抱えながら希望に向かい続けること。それはまさに太陽と月の関係性に集約されます。無意識にある闇(月)をなかったことにして、光(太陽)に向かうことなんてできるはずがないのです。それなのに、みんなが太陽のふりをしている死にたくなるほど虚しい世界・・・でも、それをまるごと受け入れたい。受け入れて許した上で、それでも歩き続けたいのです。



築いては壊れる、出会っては別れる、生きてやがて死ぬ。その虚無を完全に受け入れる位置に立つことでしか、本当の実在に触れることはできません。綺麗ごとで済ませようとする自我が虚しいものだと自覚して、握りしめた手を離さない限り、もう次の世界へは進めないのです。



この世界は地獄なのに、それなのに、地獄の中に天国があります。だから、タチが悪いですw完全に絶望することさえできない。絶望してまた希望を持ち、やっぱり生きていく・・・虚しさを受け入れ尽くした時、自分自身と世界に溢れる嘘と矛盾という綺麗ごとを受け入れ尽くした時、本当の希望が見えてくるーーそのことを私たちは深いところで知っています。絶望を知らない希望なんて嘘なんです。死を知らない生なんて嘘でしかありません。



8ハウスが最も厳しい部屋であるーー私がそう思うのはこういった理由からです。8ハウスは年齢で言うと、50代くらいかと思います。アセンダントで肉体を得て、自我を確立して、社会の中でもまれ、結婚をして「他者」という存在と共に生きた結果、両極を知り、絶望から希望に向かって立ち上がる場所。死を内包した上で、再び、本当の生に向かおうとする場所。つまり、8ハウスは死んでなんぼの場所です。自我の死を意味しています。



そのエネルギーを強く保持しているのが蠍座です。冒頭の言葉を発した方は奇しくも蠍座ステリウムです。そして、自己の虚しさを受け入れた上で、再び立ち上がる人間の凄さを教えてくれた友人も同じく蠍座ステリウムです。これが偶然とは到底思えません。



占星術界の巨匠・マドモアゼル愛先生は「蠍座のミーハー化が起こっている」と仰いました。蠍座というサインを太陽に持っていたり、その性質が強い方が「深くて重く」なければおかしいと思うのです。深くて重いものから逃げていたら蠍座が泣きます。蠍座は絶望から再生してきた時、ようやくその本質が輝くサインだからです。



そして「蠍座」はすべての人の中にあります。誰もが冥王星という意識を保持し、8ハウスという現場を通過するからです。しかし、私も含め、ここから逃げることだってできるのです。でも、8ハウスから逃げたら、11ハウスには行けないことになります。いや、10ハウスまでは行けるかもしれません。


だけど、11ハウスという「本当の希望」には絶対にたどり着けないのです。だから、私も月という闇から逃げたくありません。8ハウスという現場から目を背けたくはないです。闇がない光なんてありえないーーそれを体現して見せてくれる蠍座の方たちに感謝しています。



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