見出し画像

キロン(カイロン)について

先月から、立て続けに「キロン」についてのご質問をいただいています。調べてみると、今月20日頃、キロンとドラゴンヘッドが牡羊座でぴったり合になります。2018年からキロンは牡羊座にあって、2023年7月にドラゴンヘッドが牡羊座入りしました。昨年の後半あたりから「よくわからない深い場所にある痛み」が刺激されたり、「ここから自由に飛び立ちたい」というような思いが浮上していると感じているならば、それは皆さまのキロンが疼いている可能性があります。

キロンは最も解釈の難しいもののひとつ・・・様々なキロンの解釈があれど「なるほど、これが私のキロンとして働いているんだな」と腑に落ちるまでには「深い内的考察」が必要ですし、自分のキロンがどのような痛みや抵抗やトリガーとして働いているのかを認識しようとすれば、一旦は強い抵抗感を感じるでしょう。



というのも、キロンの傷や痛みは、それを抱えていることを誰にも覚られたくない、決して知られたくないという無意識的なブロックが働くからです。それは屈辱や恥の意識とも関わります。それゆえ、占星術師も多くの具体的事例を知ることが簡単ではないのだと思われます。



私自身は牡羊座キロンが6ハウスにあります。恐らくはこれがキロンの痛みなのであろうと思いあたることがひとつありますが、確かにそれについては誰にも言いたくはありません。自分ではどうすることもできない宿命的な傷(先天的な傷)と言えます。また、それは他者には理解されないであろう事柄ですし、他の天体のように「でも、こうすればそれを活かせるよね」と単純に解決策が見いだせるものでもありません。



それはいわば「触れられたくないパンドラの箱」であり「自我を持つ人間特有の恥の意識」にも似ているかもしれません。キロンの痛みは人生のどこかで「死にたくなるほどの屈辱」として感じられた出来事や「他者からは理解されないけれど決して捨てることのできない独自の信念」「帰属する社会や集団から浮いてしまう異端児的要素」と関係しているように思います。



それはキロンの軌道からも想像ができるものです。キロンは土星と天王星の間を楕円状に(イレギュラーな軌道を描いて)動いている小惑星ですので、キロンは土星までの世界が象徴する「物質性・帰属する社会・規範・集団性」と天王星以降の世界が象徴する「精神性・霊性・形のないもの・自由独立」の間で揺れ動く意識を象徴していると考えられるからです。



自分のせいではないのに負わざるを得なかった深い傷=キロンを持って、私たちはこの世に生まれてきています。それは生々しく痛々しく、しかし、英雄的な傷です。傷のない人間は人の痛みがわからず、理不尽さに耐える強さも獲得できないでしょう。傷がなければ、いつまでも物質性に安穏として、痛みを伴う霊的成長へ向かう勇気と智慧も得ることができないでしょう。



キロンはカイロンとも言われ、ケンタウロス族のケイローンがその神話の主人公です。ケイローンはあらゆる医療と癒しの達人であったにも関わらず、ヘラクレスの放った毒矢によって受けた傷を癒すことができませんでした。父親が神であったため不死身で死ぬこともできず、その苦しみを終わらせるために、ゼウスに頼んで「死」を選びました。自らの神的属性・永遠性を他者(プロメテウス)に譲り、ケイローンは星(射手座)になりました。



神話から考えても、私自身のキロンを考察してみても、やはりキロンの傷は癒せないものだと思います。癒すことが目的なのではなく、傷を抱えたままで前に進み続けることが目的なのです。私たちは深い傷を抱えたままでも大丈夫なんだ、それでも生きていく勇気と強さを持っているのだという事実を示しているのだと思います。



誰もが他者からは理解されない傷を負い、孤高の異端児となる要素を持っており、それは非常に孤独な道ではあるけれど、「自分だけの生き方やオンリーワンのやり方を見つけていくことが必ずできる」とケイローンが励ましているように感じられます。



キロンの傷は肉体的傷や損傷がその象徴となっていることもありますし、自分ではコントロールの効かない衝動となって現れることもあると思います。たとえば、牡牛座のキロン、2ハウスのキロンを持つ場合、いくら物質的豊かさ、金銭的豊かさを得ても、得体の知れない「満足できない感覚」となって現れるかもしれません。または、手にしたお金をぱーっと使ってしまわずにはいられない内的何かが存在しているかもしれません。自分が豊かでいることに罪悪感や恥の意識を覚えるかもしれません。



4ハウスや11ハウスのキロンを持つ場合、端的に「どこにも属せない異端児」として癒せない孤独を感じるかもしれません。その孤独は自分のせいではなく、どうしようもない出生の傷です。6ハウスにあれば、どうしてもうまく職場や組織に従属できない孤独を抱えるかもしれません。または自分を社会の中の厄介な存在だと感じるような、特有の肉体的コンプレックスを抱えるかもしれません。



どのキロンであれ、その痛みをどうにかしようとしても、結局は仕方がないのだ・どうしようもないのだーーという地点に着地するでしょう。ただその傷があることを認めて、自分しかできないやり方で、傷を抱えたままで前に進み続けるしかありません。



どうしても自分のキロンがよくわからない・・・という場合、いくつかヒントにできることがあります。まず、キロンは天王星と深い関わりを持っていますので、出生図の天王星が示すその意味を考えてみること。天王星は「古い枠を壊して新しいやり方や価値観において、あなたが地上に具現化するべきテーマと事象」を示しています。皆さまの中の開拓者・賢者・異端児がどんな姿をしているのかを探ってみてください。



また、キロンのあるハウスから数えて4番目のハウスを見てください。たとえば、キロンが7ハウスにあれば10ハウス、12ハウスにあれば3ハウスです。その4番目のハウスはキロンの痛みがある故に活かされるはずの何かが隠されている場所です。



7ハウスにキロンがあり、うまくパートナーシップが結べないという孤独を抱えている場合、または、誰かと共に生きることへの得体の知れない恐怖がある場合、それがある故に、10ハウスのお仕事や社会的使命において、なにかしらプラスになっている恩恵や傷ゆえのモチベーションや信念があるはずです。そのように逆算して考えてみると、キロンの糸口がつかめるかもしれません。



キロンの傷を認めて、人の目を気にしない強さと異端児であり続ける勇気を得ることができたなら、キロンは「何らかの先駆的能力」として開花するでしょう。牡羊座キロンなら、あらゆるしがらみを超えて新しい独自の世界観を切り開くことができるでしょうし、牡牛座キロンならば、先進的で豊かなセンスや価値観を活かして活躍できそうですね。


もうすぐキロンとドラゴンヘッドが牡羊座で合となりますが、これは「傷があっていいじゃない。そのままでいいじゃない。そんなものに拘るのは止めようよ。傷は誰にだってあるんだよ。さぁ勇気をだそうよ。大丈夫だよ。私が応援しているから・・・」という星のメッセージだと思いますヨ。



おかしな自分でいいのです。傷があっていいんです。誰にも理解されなくてもいいのです。あなただけの道を歩きだしましょう。その勇気ある姿が他者を照らす光となるでしょう。そして、同じ傷を持つ人の癒しと勇気となるでしょう。天空でケイローンが勇気と英断の必要性を示してくれているように・・・私たちも傷を超えていきましょう!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?