郷愁

 私はその場の空気に酔っぱらって焼き肉屋を出た。前いた部活のそばにある店だった。

 そのとき一緒にいたのはサークルの人たちで、みんな賢くて真剣でいい人たちだった。ごはんを一緒につつくのも気まずくなかったし、けらけら笑うのも久しぶりだった。

 けれども、店から一歩踏み出すと、御影通りからかつて通い詰めた部活の思い出が立ち上るようだった。自然と「ああ、馬術部行きたいなあ」と声が出た。

  ふわふわした頭でゆっくりと自転車を漕ぎ出す。談笑する女の子の群れが近づいてくる。ぶつからないよう、自転車を転がす。そうしながら、交差点の角から見知った顔をひょいとのぞかせるのではないかと淡い期待を抱く。そんな瞬間が、たまにやってくる。

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