夜の川辺に面した部屋

 夜になって、少しだけカーテンを開けて眠りにつくのが好きだ。

 私の部屋は大きな通りに面していて、交通量が多い。そばにある川辺に集まる人の声もよく聞こえる。

 夜になっても、車の行きかうシャーっともゴーッとも取れない音は絶えないし、昨日は酔っぱらった女の子が楽しそうに、でも今にも寝てしまいそうな感じで大声で笑っているのが聞こえた。

 本当は窓を開けて寝て、川の音と車の音と人の声を聞きながら眠りたいと思うのだが、大通りゆえに暴走族がエンジンをふかせて通り過ぎていくこともあるので、さすがにそれはしない。

 かわりに、私はカーテンを完璧に締め切ってしまわないで、すこしスリットのある状態にしておく。そして、部屋の明かりを消して、ベッドの上に寝転がる。

 白い壁紙の貼ってある天井を見上げる。大きくてまるい電燈が月のように私の上に覆いかぶさっている。たまに、光の筋が車のワイパーのように私の部屋の天井を撫でては消えていく。

 そういうとき、私はまだ夜の闇のなかで人が活動しているのを感じて、不思議な気持ちになる。残業だろうか。木屋町か祇園あたりで飲んだのだろうか。一夜を共にしようとする相手と一緒にタクシーに乗り込んだのだろうか。それとも運送トラックの中で、運転手は一人目の前に続く道を見つめているのだろうか。

 私はそんなことを感じながら、眠りに落ちるのが好きだ。

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