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アイゴー展 美しすぎる100年前に向き合う

今年は関東大震災が起きて100年の節目となる。

そして、多数の朝鮮半島出身者が犠牲となった朝鮮人虐殺が起きて100年の節目である。

そんな中、日本、韓国、在日のアーティストが「関東大震災朝鮮人虐殺」をテーマにした「関東大震災、100年ぶりの慟哭(どうこく) アイゴー展」という企画展が始まった。

「同じ過去を繰り返さないために」と風刺画家の高慶日(コ・ギョンイル)さんが呼びかけ、実現した。

日本では8月16日から20日まで開かれた。9月1日からは韓国で開かれる。

私は日本での横浜市北部で開かれた展示会に足を運んだ。

これまで関東大震災朝鮮人虐殺関連というと、事件の発端や起きた場所、状況ということが多かった。

上記の周知活動もまだまだ足りていない。なので日本国内では引き続き認識を浸透させていかなくてはいけないのは事実だ。

これまで関東大震災朝鮮人虐殺を扱った行事や学習会は、歴史研究や文献、資料の展示と説明というものが主流だった。

今回はアーティストがテーマに沿った最近、あるいは今年の新作を展示するという斬新な企画だった。

ちなみにインスタグラム、Facebook、Twitterにも公式アカウントがあり、展示作品も掲載されている。

アイゴー展Instagram

スタッフに確認したところ、来場者が写らなければ作品の撮影はOKということだった。


展示内容の感想は、皆さんアーティストなので当たり前なのだが、とにかく「美しい」という印象だった。

もちろん、生々しい作品もある。本来ならそういった作品をもっと伝えたいところだ。

しかし、ジェノサイドという痛ましいテーマを、敢えて美しく表現されているのは、初めて見た。

かぎ針編みの花をつなげた木


誕生日まで吊るした白い網の下は赤く塗られ、そこに白い蝶が沢山止まっている


そして印象的な作品の一つがこちら。


この作品の傍には、下のような文が添えられていた。

この写真は虐殺の現場となった荒川の四ツ木橋である。

作者の金暎淑氏のこの想いに感嘆するばかりである。

そして語りかける言葉に、日本人として応えなくてはという引き出し方も素晴らしい。

展示が一方通行ではなく、まるで対話のような、来場者と作り上げるような作品だった。

その他にもピカソのゲルニカをモチーフにした作品など、今回は現代アートらしくCG作品も多かった。

40名のアーティストの中で日本人は一桁であった。

その1人岡本羽衣氏は、横浜市の中学校の歴史副読本で虐殺を殺害と書き換えられ、元の教材が溶解処分されたことをテーマに抽象的な立体作品に仕上げていた。

また、前田忠氏は鏡に1923.9.1と記し、虐殺の写真をそこに載せ、鏡に映る自分と対話する作品を出品していた。
こちらも来場者と双方向に語り合う作品になっていた。

日本での展示会は8月20日で終了し、9月1日からソウルで始まる。

日本では終わってしまった。
「見たかった」と少しでも思ってくれたなら、またこのような展示会が日本で開かれるよう、私たちの中から声を上げていけたらと思う。

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