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◆いちばん古い時計と、それよりも古い時計/JAEGER LE COULTRE レベルソクラシック

ひとは皆、はじめて購入した機械式時計にはなみなみならぬ想いを寄せるものです。たぶん。
僕にとってそれは、ジャガールクルト ビッグレベルソでした。

ビッグレベルソを購入したのは。確か10年ほど前です。当時の僕にとってそれはとんでもなく高い買い物でしたが、憧れのあまり入念なリサーチの上この時計を手にするに至りました。
この頃、ゴールドの時計に強く焦がれたのを覚えています。最近はもっぱらゴールドの時計を選びがちになりましたが、ステンレスのビッグレベルソを手にするとなにか原点を思い起こさせるような気持ちが湧き上がります。

時を経て、同じレベルソのサイズ違い、レベルソクラシックに縁がありました。
今回はこの小さくて気品に溢れた、少しだけ古い時計をレビューしようと思います。


◆JAEGER LE COULTRE

ジャガールクルトは、いわずと知れたマニファクチュールです。
創業は1833年、老舗メーカーです。ムーブメントには定評があり、かつてはあのPatek Philippeとも共同開発していたほどの実力。
代表的なタイムピースには「マスター」や「ポラリス」、そして「レベルソ」などがあります。
どれもクラシックな意匠ながら、豊富なカラーバリエーションなど挑戦的なラインナップも見られます。
ブランドの歴史や背景については語り始めると長くなりますが、とにかくエピソードに事欠かないのがこのメゾン。気になる方は一度調べてみてください。

https://www.jaeger-lecoultre.com/jp-ja


◆レベルソクラシック

レベルソにはさまざまなサイズ展開があります。以前はレベルソクラシック(小)、ビッグレベルソ(中)、グランドレベルソ(大)と、比較的わかりやすいネーミングでした。
2016年の刷新を機に「レベルソ・クラシック」というシリーズが発表され、そのシリーズ内でサイズ展開がなされました。つまり、2016年以前と以降では「クラシック」の指す意味が変わることになります。なんでそんなややこしいことした?

現代の「レベルソクラシック・スモール」。公式HPより引用

今回僕がレビューするのは1990年代のレベルソですから、現代の「クラシック」とは異なります。

◆かつてのレベルソクラシック

レベルソの歴史は1931年に端を発します。かつてポロ競技者が、試合中にも腕時計のガラスを守るための方法について考え、反転式機構がうまれたとされています。外せば良くないですか?

かつてのレベルソ。公式HPより引用。

◆僕の持つレベルソ

さて、そうした歴史を持つレベルソですが、今回僕の元にきた時計は少しだけ風変わりです。


こちらは1995年に発売された「レベルソクラシック」で、文字盤のデザインが現行のものと異なります。限定販売ではありませんが、通常のラインとも異なるようです。
目をひくのは美しく配置されたインデックスと、存在感のあるドーフィン針。
2種類の仕上げが施された文字盤と相まって、優雅な雰囲気を醸し出しています。

光の加減によって見え方も異なり、飽きのこないつくりです。凝っていながらも奇を衒っていない意匠であることもその印象を手伝っているようですね。
また、反転機構の裏側に施された仕上げも美しいものです。18金である証、ホールマークが刻印されています。


搭載されているムーブメントはCal.846。小さく、優秀な手巻き式ムーブメントです。巻き味もビッグレベルソに搭載するCal.822ほどではありませんが、小気味よく「チチチ…」と音を鳴らしながら巻き上げます。
手に取り、眺めるほどに奥深い魅力へと誘われるような時計です。

◆ビッグレベルソとの比較

せっかく2本のレベルソを手にしたわけですから、比較してみたいと思います。

サイズ、素材、デザインと全て異なるレベルソの比較ですが、どことなく共通されたデザインコードを感じます。しかしこうしてみるとビッグレベルソはいささかマッシブ。これだって単体で見ればスマートで装いに調和しやすい時計です。


ビッグレベルソ 側部
レベルソクラシック 側部

最も特筆すべきはその薄さでしょう。比較してみると一目瞭然。というか、こんなに小さい機械だったのか、と衝撃すら覚えます。

ビッグレベルソ
レベルソクラシック

着用した雰囲気はどちらも馴染みよいです。さすがはレベルソ、計算され尽くした黄金比率といったところでしょうか。でもちょこちょこ比率変えてらっしゃるけど……。

◆着用


やはり着用してみるとジャケットやシャツに映えるもので、調和のとれた美しさを体現しています。写真だと少し大きく見えますが、肉眼で見るとより小さく、エレガントです。

こちらはデニムにリネンシャツというややカジュアルな装いですが、日常に見事に溶け込んでいます。まるで長年寄り添ったパートナーのような佇まいです。
リラックスした雰囲気に小さなゴールドがよく映えます。

レベルソの反転機構は、腕に着けていても楽しむことができます。手巻きですが、巻くのを忘れて出かけてしまった場合でも着けたまま反転して巻き上げることができます。意外と便利なんですが、「意外と便利とか言い出すならもう自動巻き買えよ」といった声も聞こえてきそうです。

そして着用して再認識する圧倒的薄さ。レクタンギュラーケースでこれだけ薄く、小さく、ゴールドだとあまりにもエレガント。それなのにドレスカジュアルにもあう懐の深さ。名作たる由縁、垣間見たような気がします。

◆あとがき

拙い経験と文章ですが、僕の時計に対する愛情が伝われば幸いです。なにしろこの時計、本当に細部に至るまで気に入りました。装いに馴染むところなんかは、クラシックスタイル好きとしてはたまらないポイントです。

尾錠まで美しい

スーツ専用かな、とも思いましたが、先述の通りリラックスしたスタイルにもよく合いそうです。となるとかなり重宝しそうな予感。
他にも大切な時計はありますから、当然こればかりというわけにはいきませんが活躍の場はとても多そうです。
「ついつい手が伸びる」ってこういうことを言うんですよね。新しい相棒として、素晴らしい時計に巡り会えました。感謝。







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