走り屋vs書き屋さん
おげんきかしら?
まきむらよ。
わたしはげんき。
きょうは一日遊ぶと決めて、体操して朝ごはん食べて、ニュースをひととおり読んだ後、いろいろやって、夕方から赤羽の飲み屋さん街に繰り出しました。
赤羽、あなたは行ったことある?
おもしろいところね!
飲み屋さん街があって、それぞれのお店がタルやビール箱のひっくりかえしたやつみたいなやつを道端にまで出してて、知らないお客さん同士、街全体でわあわあ言い合って飲むのね。
わたしはそのへんの飲み屋さんで、「オラア!!」って感じの人の近くで青森リンゴサワーを飲みました。
「オラア!!」って感じだなあと思いました。
この「オラア!!」って感じをわたしはなんか知ってる気がして、なにかっていうと横須賀ヤンキーなのよね。なんていうかこう気合が入っていて、「おうトシ!」とか「ツネちゃんよお!」とかいう感じで周りの仲間を呼び、「オラア!!」という勢いを出している。存在の風圧が強い。横須賀で出会った、「衣笠ピエロ」ってチーム名で活動していた人たちに似てるなあという気がして、で、きいたのね。
「どこで走ってたんですか?」
そしたらよ。
「俺ぁ、川越毘沙門天だ」
川越!!!
毘沙門天!!!!!!!!!!
ビンゴで毘沙門天!!!!!!
ふつうにチーム名で名乗ってくれると思わなくて、「えっちょっとまって、いま音声検索するんで、すいません、川越毘沙門天!!!」っていってしまいました。
検索したらなんか、ニコニコ動画で有名な暴走族なの? 暴走族ときいてあなたのなかにいろんな感情が去来するかもしれないけど、わたしもいろんなこと思うけど(ねむたいのにバイクの音で起きちゃうなあとか、もっと重いこととか色々)、とりあえずわたしは、もうちょっと聞くことにしました。
「毘沙門天って武道の神様でしたっけ?やっぱり喧嘩するんですか?」
「ええ?なんの神?」
「おれが神?」
「ぎゃはははは!!肉食う?」
毘沙門天!!!!!!!!!!!!
暴走族、とは自称しないのねあの人たち、自称に従えば走り屋さんたちの文化についてわたしはよくしらないのだけど、とりあえず横須賀で聞いた知識としては、
「公道の走行権をめぐって争いあう風習があるんですか?」
「あーそうねー」
「うーん」
答えない!!
「肉食う?ぎゃはははははは!!」
ぼくをもぐもぐで黙らせようとしてくる!!!!!!!!!!!!
あんまり聞いて欲しくないみたいだったので、ホルモンを食べて、なんでもないことでぎゃーぎゃー言って大笑いして、いま、おうちにかえるとこです。
そんなことをいま、あなたに話したくてわたしは書いちゃってるんだけど、書いちゃっていいのかなあという思いもちょっとあって、まあでも個人特定できない書き方だしいいか、うん、と思って書いちゃっていて。
わたしが書く仕事をしている書き屋さんだと知ると、走り屋さんのひとたちって、一様にしゃべらなくなるか、もしくはめちゃくちゃ饒舌に武勇伝を語ってくれるかどっちかなのよね。
「書かないでよ!?」
といって笑う人もいれば、
「書いてよ!俺の伝説はベストセラーになるよ」
とかいって笑う人もいる。
わたしが「この人らは人を殴ったり危険走行で人の命をおびやかしたりしたのかもしれない」という警戒心を隠して走り屋さんと話すのと同様、相手も「この人はどっかに勝手に書くかもしれない」という警戒心を隠して話してるのよね。
そういうピリッとした感じを乗り越えて、「走り屋」じゃなく「その人」の話をきけたとき、わたしはうれしいと思うんだけど、青森リンゴサワーを一杯飲むくらいのひとときじゃあ、おたがいにこころを開くのってまだむずかしくて。
それでも、
「川越毘沙門天!!!!!」
っていう、今朝は知らなかった世界のひとかけらをもたせてもらって、今夜、おうちに帰るのでした。
知らないとこで知らない人と話すのはこわいけどおもしろいわね。
あなたは赤羽、いったことある?
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