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ヨーロッパ周遊記 #旅の瞬き

ヨーロッパ一人旅のつれづれを「旅の瞬き」と題して、少し遅れのリアルタイム旅行記として書いていこうと思います。今はウィーンからプラハに向かう鉄道の中。

毎日色々なことが起こる。嬉しいことも悲しいことも、経験出来ることが嬉しい。



2022年9月13日。いよいよ出発。エティハド航空17:00成田発のフライトで、まずはトランジット先のアブダビへ。

今日は起きてから調子が悪かった。生理前の重だるい感じで、ここからの長旅を思うと憂鬱なくらいだった。こんなんで無事に辿り着けるのか?夫も心配そうに私を見ている。心配だろうなぁ、と思う。夫は私が旅立つまでのドタバタっぷりを見てきた上、この顔色の悪さを見て心配にならない訳がない。私も自分が心配だ。すでに不安。

逗子駅から成田空港までは、始発から終点で一本で行ける。時間は2時間半ほど。ここはグリーン車を使ってちょっとでも体力の消耗を防ごう、ということで滅多に乗らないグリーン車で向かうことにした。

駅前の定食屋で夫と一緒にランチをしてから行くことにしたのだけど、注文をしてからなかなか出てない。結局慌ててご飯をかきこむことになり、小走りでホームに滑り込んだ。苦しい。電車の中から手を振って、しばしのお別れ。ここから本当に久しぶりの一人旅だ。

成田空港に着いて、とりあえず一息つこうとカフェを探したけれど、どこも開いていない。スタバもマックも。グリーン車が冷えていて、暖かい飲み物が欲しかったのだけど。やっぱり空港はまだ通常には戻っていないのだなと痛感した。

無事にチェックインを済ませて搭乗。うぅ、いよいよだ。エティハドの飛行機に乗るだけですでにテンションが上がる。まずモニターの表示が英語かアラビア語の二択というのに心が躍る。もちろんアラビア語を選択してみたけれどまったく解らず。違う惑星に来たみたい。

それにしてもせっかく窓際の席にしたのに翼の真上の席で、陸が良く見えないという失態をやらかす。大きく後ろを向けばなんとか。あぁ、帰りの飛行機は席を変更しよう、出来るかな。

航路をモニターで確認すると砂漠の上を通るみたいだった。楽しみすぎる。10年前、デンマークに行った時のフライトはずっと快晴で、どこまでも続く雪山の上を一晩中、ずっと眺めていた。飛行機の上から地平線の先まで見えて、全てが雪の中。それなのに極稀に家の明かりが見えて、ここで生活するって、一体どうやって??と、自分の想像には及ばない世界があることに感動した。

そんな経験からか、選べるときは絶対に窓際と決めている。それなのにー(笑)

機内食を食べる。チキンを選んだ。味はまぁまぁ美味しかった。ただ食べ終わってもなかなか下げに来てくれない。狭い機内、低い簡易テーブル。坐骨神経痛があるので長時間身動きが取れないと辛い。モゾモゾと身動きをしつつ、仕方がないので何か見て気を紛らわそうとモニターをいじる。タップしていくと、アブダビ特集チャンネルがあった。アブダビについて、何にも知らない。アラブ首長国連邦の首都ということと、イスラム文化なんだろうなぁというくらいで。

「Mega mosque」という番組に目が止まる。これが凄かった。

アブダビの埋立地に超巨大モスクを作るという、1時間ほどのドキュメンタリー番組。山奥から大理石を削り出し、そこから細かいモザイク片を、小さなハンマーを使って作っていて驚愕。え、そんなとこから手作りなの!?と目が離せない。何もかもスケールが大きい。モスク内に敷くペルシャ絨毯ももちろん手織り。何百メートルもある織り機に、何人もの職人たちが等間隔に座りながら、ひたすら織っている。す、すごい…。

そしてデザインがかわいい。白を基調とした建物に、草花の模様が、品の良い配色で装飾されている。イスラム教は偶像崇拝を禁止しているので、人間や動物、植物も特定のものと分かるようには描かれない。だからこそ幾何学やカリグラフィーが発展したのだけど、その緻密さはいつも、宇宙を思わせる。

いやぁ、思いがけず良いものを観させてもらった。いつかこのモスクにも行ってみたい。「Sheikh zayed Al Nahyan grand mosque」だって。場所をGooglemap にピンしておく。

一人感動していたら、ようやく食事を下げに来てくれた。機内はいつの間にか薄暗く、人工的な夜が作り出されている。窓の外は、遠く地平線の先に、ダークオレンジから宇宙までのグラデーション。この色は、地上から見ることは出来ない特別な空の色。

飛行機は今、中国の上空にあるらしい。Chengdu(チョンドゥー)のあたり。モニターに映し出される、行ったことのない地名を観て、どんなところなんだろうと思いを巡らせるのも好きだ。大きな街に差し掛かると、そこだけが光に包まれてよく目立つ。一生に一度も行くことのない街のほうが多いだろう。それがいつも不思議な気持ちになる。

それにしても移動中というのは、文章を書くのに最適だと思いませんか?特に飛行機はネットに繋がれないから、本を読む以外にやることがなくて、思考が行ったり来たりする。普段からこういう時間が持てたらいいのにね。

窓の外を見ると、翼の先に緑色の大きな火球が流れて、思わず「あ・・・」と小さく声が出た。この旅はきっと良いものになる、とこの時に確信した。

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