【過去記事2017.06.12】弾ける瞬間


「いなくなったときに、とても悲しいから」

ペットが飼いたいと私がねだると、母は必ずそう言いました。

昔からペットが欲しかったのですが、

上記の理由で、母は、飼うことを許してくれませんでした。

学生の頃は、よくペットショップに行って、

「うあー、かわいいなー」と思いながら、

子猫や、子犬を、ウインドウ越しに眺めることもしばしば。

でも、今は、その機会も少なくなりました。

だって、ね。




お前、私のペットだもんね?















ペットなのに、人の言葉を喋るのは、おかしいですよね。

口に出していいのは、

「わん」


それだけ、ですよね。


だって、あなたはペットなんだから。

だって、あなたはお犬なんだから。

私を見ると、すぐに尻尾をぶんぶんと

みっともなく振ってしまうような、そんな犬。

ね、そうですよね?

ほら、返事は?





ふふっ


ねえ、お散歩、行きましょうか?

あのね、デートじゃないですよ。

デートっていうのは、好きな人とするものです。

だから、あなたと外を歩く行為は、

デートじゃない。


ただの、お散歩です。


ご主人様と、犬の、お散歩。


これは、お散歩。

だって、あなたは、犬。

私の、犬なんだから。

だから、喋ることはできない。

犬が、人の言葉を喋るのは、おかしいから。

人の言葉を喋った時点で、

出来そこないの犬に成り下がります。

その時点で、私、捨てますからね。

だって、ペットなら飼ってあげてもいいけど、

ただの惨めなマゾ男なんて、気持ち悪いから。

ね。


わかりましたか?





ふふふっ




もう夏もすぐそこだというのに、

あなたには、タ-トルネックを着せるんです。

だって、そうしないと、目立っちゃうでしょう?

あなたにつけた、首輪が。



ふふっ


あなたと公園に行ったり、本屋さんに行ったりして、

ゆったりとした時間を過ごすます。

最後には、喫茶店。

向かい合うように席に座り、

メニューをしばらく見てから、店員さんを呼びます。

清楚系で、笑顔が素敵な、女性の店員さん。

私は、アメリカンコーヒーを注文し、

あなたに、微笑みながら、問いかけます。

「ね、あなたは?」


あなたは、喋ってはいけない。

喋るときは、「わん」だけ。

人の言葉を喋ったら、捨てられる。

私に、捨てられる。



「ね、早く注文しないと。店員さん、困っちゃってるよ?」



「ほら、大きな声で、言いなよ」



口許を緩ませて。


笑っていない目で、あなたを見つめながら。


すぐ近くに、美人な店員さんが、いる空間で。



「ほら、言って」





あなたなら、どうしますか?





くすっ

ん? サポート、してくれるんですか? ふふ♥ あなたのお金で、私の生活が潤っちゃいますね♥ 見返りもないのに、ありがとうございます♥