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記憶媒体としての冬

健康診断の結果がヤバかったので、通勤手段を自動車から自転車に切り替えた。本当はもっと前から自転車漕ぐ予定だったけど、汗ダラダラで出社するのも気持ちが悪いので。

車で通勤していたときはあまり気が付かなかったけれど、ラッシュ時の道路は排気ガスの臭いが結構する。出す側の人間には全然分からないものだなぁと思った。

車で通勤をしていると冷暖房のせいで気候が分かりにくいけれど、自転車に乗ると空気の温度が直に伝わってきて、夏の終わりをよく実感できた。

秋という季節は冬のイントロのようなものだと思う。数学的に言うと夏から冬への変曲点にあたる。だからこの時期になると冬の音楽が聴きたくなる。

冬は寒いし体調を崩しやすいけれど、雪の積もった道を歩きながら聴く音楽が一年の中で一番好きな瞬間かもしれない。だけど今はもう雪の降る冬を体験する機会はそうそうないなぁ…と物寂しい気持ちになった。

冬に聴いていた曲で思い出に残っている曲

▪ はつ恋 - 福山雅治
 ・・・ウォークマンに入れて中学生の頃に聴いていた。家族でスキー場に出かけるときに車で流していた記憶がある。特段冬の曲ではないけれど、暗い雰囲気が冬の寒さとよく合っていたので好んで聴いていたのだと思う。

▪ snow blind (album version) - fripSide
 ・・・高専に入学して一年目の冬に fripSide にドハマりして聴いていた。冬は自転車が使えないので、夜中にコンビニに行くときなど必然的に徒歩になり、そのタイミングで聴いていた。静まりかえった夜にぱらぱらと降る雪がオレンジ色の街灯に照らされて綺麗だったのを覚えている。
  あるいは、レポートやテスト勉強のために徹夜した日の夜明け前に窓の外を眺めながら聴いていた。この曲を聴くと孤独感が美しく感じられる。

▪ 冬がくれた予感 - BiBi
 ・・・高専の三年目の冬に聴いていた。学生寮から教室までのほんの 5 分くらいの徒歩移動の際に聴いていたと思う。曲自体もすごく好きだったけれども、西木野真姫 (CV: Pile さん) パートに出てくる「飾り」という発音の美しさに魅了された。今聴き返しても惚れ惚れするほどだけど、きっと誰にも理解されないだろうし、それは自分だけが分かっているだけで十分だとさえ思う。

▪ セカイのヒミツ - サンボンリボン
▪ ランニング・ハイッ - キャンサー
 ・・・大学の一年目の冬休みにスキー場のあるリゾートで調理のアルバイトをしていて、従業員の寮から職場までのバス移動・従業員出入口から職場までの徒歩移動の際に聴いていた。建物の中にある従業員専用の地下通路を通り、肌を刺すような寒さを感じながらコツコツと足音を立てながら歩いた。
  毎日 10~12 時間、休憩時以外は常に慌ただしく走り回りながら働いていた上に、人間関係もこの上なく悪かったので本当につらかった。出社するのが嫌で嫌でたまらなかったけれど、その気持ちを落ち着かせるためにこれらの曲を聴いていた。
  この曲を聴くと、今でも出社時の肌寒さ、料理の匂いなどを思い出す。非常に苦しい思いはしたものの、自分にとってはすごく大事な記憶なので、これらの曲は必要なときにその記憶を取り出せる記録媒体のような存在になっている。

▪ Snow in "I love you" - 777☆SISTERS
▪ Snow☆Love - アイドルマスターシンデレラガールズ (歌手名略)
 ・・・大学院に入って一人暮らしを始めた一年目の冬によく聴いていた。当時住んでいた札幌は朝から夜まで車通りが多く、最も静まり返る時間帯は夜明け前だった。近所のコンビニまで歩いてコーヒーを買い、誰もいない公園に立ち寄って冷えた遊具の温度を感じたり、カチカチになったイヤホンのケーブル越しに伝わる風の音とともにこれらの曲を聴いていた。
  冬はこの時間帯が最も美しいにもかかわらず誰も外を歩いていないので、冬をひとり占めしているような感覚になれて好きだったのだと思う。

大学院を卒業して以降はそれほど強烈に残っている冬の思い出がない。それはきっと愛媛県の冬に「冬らしい映像」が無いからだと思う。25 年ほど北海道で過ごしてきた人間にとって、雪の降らない冬は味気がなさすぎる。

そんなことを考えていたら無性に冬の北海道に帰りたくなったので、今まで溜めていた JAL のマイレージを解放して新千歳空港までの往復航空券を取った。久しぶりに夜明け前の冬道を散歩して、その時聴いている音楽に新しい記憶を刻み込みたい。

3 年前の冬に取った大学構内の写真、いいねえ

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