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りょうちゃんには幸せになってもらいたい #03

この記事は、自分勝手連載「りょうちゃんには幸せになってもらいたい」の第3回目の記事です。

今年の8月に宝塚歌劇団を退団するりょうちゃん(宝塚歌劇団現月組トップスター 珠城りょうさん)に向けて、「りょうちゃんには幸せになってもらいたい」と称して、ぽつりぽつりと書いていきたいと思います。

この記事を見た誰かがりょうちゃんに興味を持ってくれたり、何かの間違いで退団後にりょうちゃん本人が見てくれたら嬉しいなと思いつつ。

前回の記事はこちら


りょうちゃんとの出会い

りょうちゃんと出逢ったのは、彼女のトップお披露目公演。「グランドホテル」「カルーセル輪舞曲」の、東京公演。

りょうちゃんを初めて認識して、初めて拝見したのが、東京宝塚劇場内だった。私はなんの予備知識もなく、劇場の椅子に座ったのだった。劇場に慌てて飛び込んだ、という表現に近い。

それまで20年近く宝塚から離れていて、長年の夢のグランドホテル再演にひかれての観劇。子育てが少し落ち着いて、米国滞在から帰国し生活と心が落ち着き始めて、やっと観劇したい気持ちになれたときだった。

「グランドホテルだけでいい」

念願のグランドホテルをやっとやっと映像として見れたことに感動して、初めて見た日の夜に熱を出した。

その後、嬉しくて合計3度見た。立ち見もした。会社帰りに、娘を連れた休日に、何度も何度も劇場付近に行った。毎回ポスターを撮影して、家の中にもポスターを貼った。

「あ、たからづかー!」と、娘。


りょうちゃんの男爵は、とても格好が良かった。爽やかで、華やか。甘く切ない。初演の久世さん男爵の大ファンだけど、りょうちゃんの男爵も良かった。

グルーシンスカヤの寝室で長椅子に跨がって座るところは、ほんとうの男性のようで、ドキドキした。

真っ直ぐな若さと、不器用さと、生まれながらの高貴な感じ、死に向かう一直線な感じ、今思うと、若くしてトップお披露目公演に臨んだりょうちゃんの必死なところとリンクしていたのかもしれない。

なによりも、最後の回転扉の演出がとても良かった。今でも思い出しただけで、涙が出てしまう。

りょうちゃんの美しい鼻梁のラインと、品のある口元、男爵の衣装にぴったりだった。

…そんなに好意的に見れたのに、わたしはやはり、グランドホテル以外に興味をまだ持てなかった。

正直に言うと私は、カルーセル輪舞曲を見ないで劇場をあとにしようとしていた。

忘れられない笑顔

グランドホテルを見に来た気持ちが強すぎて、満足してしまい、誰一人知らない月組のショーを見る気持ちがなかった。

ほんとうにほんとうにひどい話だけれど、ショーはなくていいのに、グランドホテルだけ見て帰りたい、とも思っていた。

そんな私の目に、りょうちゃんの笑顔は眩しかった。

ぴかぴかに輝いていて、とても幸せそうで、若くてつやつやしていて、ふくふくしくて…陽のオーラを纏っていた。こんな人がいるのかと思った。ある意味衝撃的だった。今でもあのときの衝撃は覚えている。

私達は楽しく幸せにやっているよ、観てるあなたも楽しんで!…そんなメッセージを感じて、毎回、終演まで見た。

「こんなに幸せそうなタカラヅカの人は見たことがないかもしれない」と思った。「順風満帆のトップさんなのだろうな」と思った。

りょうちゃんが、順風満帆にトップになった人ではなく、とても大変なストーリーがあったと知ったのは、それからだいぶあとのことだった。

衝撃を受けた。

トップになるまでに、二番手時代がほとんどなかったこと。

前のトップさんに千秋楽で「泣くな!」と怒られたこと。

りょうちゃんがトップになるにあたって、たくさんの人事が動いたこと。

たくさんの宝塚ファンが、いろんな思いを抱えたこと。

それを知ったあとで、カルーセル輪舞曲でのあの笑顔を思い出すと、なんて健気なのだろうと、胸が締め付けられそうになった。

私は天海さんと久世さんの関係性が大好きだったから、自然にりょうちゃんとるりさんを応援したい気持ちになった。

りょうちゃんは恩人

その後は取材記事でも書いていただいたとおり、エリザベートでるりさんに出逢い、宝塚の世界に再びぎゅいんと戻された。

でも、あのカルーセル輪舞曲でのりょうちゃんの笑顔が無かったら、私はエリザベートを観には行かなかったかもしれない。

私がまたこうして、素晴らしい宝塚歌劇の世界に戻ってこれたのは、あのときのりょうちゃんの笑顔のおかげ。

りょうちゃんに惹きつけられて、るりさんにしっかり固定された、そんな感じ。

20数年前、私は天海さん、久世さん時代の月組を見ていたけれど、たまたま今もこうして、月組に帰ってきた。なんだかそこにも、縁を感じる。

そこからの月組は全て見て、今に至る。

宝塚を見たり、通ったり、読んだり買ったりのファン活動を本格的に始めると、ほんとうに楽しい。また戻ってきて良かったなと思う。

20数年前と違って、自分でコントロールできる時間とお金があって、あの頃とは違う楽しみ方ができている。

仕事でも家庭でもない、役割を持たずに楽しめる世界。

戻ってきて良かったなあと思う。

いま、宝塚をまた楽しめていなかったら…育児と仕事だけだったら?…きっと何かで、パーンと張り詰めていた気がする。

りょうちゃんは、今のこの楽しい世界に連れてきてくれた恩人。ほんとうに感謝してる。

りょうちゃんには幸せになってほしい

そんなりょうちゃんが、明日で大劇場を卒業する。私にとっては、一つの時代が終わる感じ。2回目の宝塚ファン人生の、最初のフェイズが終わる感じ。

桜嵐記はとても良かった。とてもとても良かった。

りょうちゃんが素晴らしい作品で、ぴったりのお役で宝塚最後の舞台に立てて、ほんとうに良かったなと思う。

良かったねと思いつつ、やはりとても寂しい。

私が見始めたときにトップさんだったりょうちゃんが、宝塚からいなくなる。

まだ信じられない。

とても寂しいけれど、りょうちゃんにはこれからの残りの宝塚時間、幸せだと思う瞬間がたくさんたくさん訪れるといいなと、心から思う。

元気でお茶目な月組生たちと、アフロで笑っている姿を思い浮かべるだけでも嬉しい。

りょうちゃんには幸せになってほしい。

無事に大階段を降りられますように。
笑顔でご挨拶ができますように。

月曜日のライブ配信がとても楽しみです。


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