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りょうちゃんには幸せになってもらいたい #04

この記事は、自分勝手連載「りょうちゃんには幸せになってもらいたい」の第4回目の記事です。

今年の8月に宝塚歌劇団を退団するりょうちゃん(宝塚歌劇団現月組トップスター 珠城りょうさん)に向けて、「りょうちゃんには幸せになってもらいたい」と称して、ぽつりぽつりと書いていきたいと思います。

この記事を見た誰かがりょうちゃんに興味を持ってくれたり、何かの間違いで退団後にりょうちゃん本人が見てくれたら嬉しいなと思いつつ。

今回のテーマは、「珠城りょうらしさの正体」

前回の記事はこちら

大劇場、千秋楽

昨日6月21日は、宝塚大劇場の千秋楽でした。改めて、りょうちゃん、お疲れ様でした。さくさくも、お疲れ様でした。

桜嵐記、Dream chaer、そしてサヨナラショーをライブ配信にて拝見しました。…とにかく、胸いっぱいでした。

「桜嵐記」は、とても良いお芝居、脚本でした。

トップ二人の持ち味も存分に生かされ、ストーリーは果てしなく美しく切なく。

登場人物が皆生き生きとしていて、まさに南北朝時代を生きている。

完成度・没入感という意味で、これまで見てきた作品の中でかなり上位に入りました。

観劇の余韻で、翌日べそべそと泣きました。こんなことは、久しぶりです。正行の死後、後村上天皇や弁内侍はどんなに泣き崩れただろう、など、登場人物のサイドストーリーが無限に広がるのが素晴らしいお芝居のよさ。

特に南朝を築き約60年の間そこに暮らした人々にとても興味があり、時間があれば南北朝時代を調べ、後醍醐天皇について夕食時に熱く語る、不思議なお母さんになっています。

「珠城りょう らしさ」

最後の大階段で、りょうちゃんが緑の袴で降りてきたときに、本当にびっくりしました。本当に動揺しすぎて「男役卒業? 寿退団?」と全く意味不明なことを口走ってしまいました。大劇場は黒燕尾だと思いこんでいたからです。

袴を選んだことについて、退団会見では、以下のように語っていました。

宝塚大劇場で初舞台を踏んだ時に袴姿でご挨拶をさせていただいたので、卒業の時も、男役である前に“一人のタカラジェンヌ”として皆さまにご挨拶をしたいと思い、袴を選びました。

読んで納得。普通はこう、とか、誰はこうした、とかではなく、自分の定義に従っただけなのですね。そしてそれも、「りょうちゃんらしいな」と思ってしまいます。

りょうちゃんの魅力のひとつが、「ぶれないところ「珠城りょうらしいこと」だと感じました。いろんな意味で、「いかにも珠城りょうだよね」というところを徹底している。

りょうちゃんらしさといえば、まず思うのが組子思いなところ。「とにかく月組生が、できるだけみんなで舞台に立つこと」に重きを置いたように感じたショー、さよならショーでした。「月組生がみんなで」というフレーズが随所にあふれていました。

ちょっと群舞が多すぎるかな、長いかな、なんて思って失礼しました。

ご本人の見え方という意味では、サヨナラショーの演出や衣装にそれが現れていたと思います。(サヨナラショーについては、また別に書きます)

さて、「らしさ」を我々が感じるということは、本人がご自分をよく分かっているということです。そして、舞台に携わる周りの人もまた「珠城りょうってこうだよね」を分かっているということです。

周りの人の意図と本人の意図がぶれずに合致しているから、生み出すイメージに統一感が出てより強いイメージが出来上がる。そして、統一されたイメージを一貫性をもって発信するから、我々にそれがきちんと届きます。

りょうちゃんらしさの正体は、りょうちゃんの「自分を知る力」「コミュニケーション力の高さ」「周りから愛されている力」そして「ぶれない意思のつよさ」なのだなとぼんやり思いました。

そういった思いで見返すと、芝居もショーも、りょうちゃんらしさであふれているように思います。

りょうちゃんの退団挨拶(宝塚大劇場) 全文

素敵だなと思ったので書き起こし。

皆さま…本日は、月組公演の千秋楽をご観劇くださいまして、誠に、ありがとうございました…
まずは、このような状況下の中、出演者全員が揃って、今日という日を迎えられましたこと、心から、幸せに思っております。
わたくしはこれまで、様々な、色濃い時間を経験してまいりました。
喜びに心が踊ったとき。
幸せに涙があふれたとき。
くるしくて、前を向くことがこわかったとき。(ここで少しの間)
その経験のすべてが、わたくしを成長させてくださいました。
どんなときも、わたくしは強く、前を向いて歩んでくることができました。
その原動力の全ては、ずっと支え続けてくださった方。
不器用な生き方しかできないわたしに、いつもそばで、たくさんのあいを伝えてくれた、大切な大切な、月組の仲間。
そして、そんなわたくしを信じ、共に戦ってくれた、ファンのみんなの存在です。
守るべきものがあると、人は何倍も強くなれる…!
この立場になって、その言葉のほんとうの意味を知ったように思います。
わたくしは、宝塚がだいすきです。
皆さまがだいすきです。
約14年間、男役として、歩んでまいりました日々は、最高に幸せでした。
これまで、珠城りょうに携わってくださいましたすべての皆さまに、心からの感謝を込めまして…ありがとうございました!

毅然としていて、立派で、男役そのもの。つらいことがたくさんあっただろうに、それは「くるしくて、前を向くことがこわかったとき」の言葉の後の余白で表現したように思います。

本当に若く誠実な「月組の王」でした。

最初、ん!?と思った終演挨拶で始まったご挨拶も、そうか、トップスターの退団だと、通常あるべきこの挨拶はスキップされてしまうのかと気づきました。

りょうちゃんはいつも、終演挨拶をキッチリするタイプだったから、たとえ自分の退団挨拶であっても、まずは大前提として、トップとしての終演挨拶を述べたかったのだろうなあと思いました。

どんなときでも、立場と状況を優先して言うべきことを最初に言う、そんな「りょうちゃんらしさ」がここにも見えた気がします。

「月組の舞台の質が落ちたと言われるのは絶対に嫌」

VISA会報誌のりょうちゃんのインタビューはとても良かったです。

若きトップスターを支えてきたものとは? の問いにこう答えています。

「9年目でトップに就任して、未熟なのは自分が一番わかっていました。でもそれで月組の舞台の質が落ちたといわれるのだけは絶対に嫌で。 月組を絶対に守り抜く、素敵な組だと言わせてやる!と。そういう気持ちが原動力であり、ファンの皆さんや組のみんなが私に向けてくれる愛情、それに全力で応えたいという思いがすべてでした」

絶対に嫌、という強い表現を使っていることに驚きます。とても強い意志を感じます。

そして漠然と、ぼんやりと、やはりりょうちゃんは、天海さんに似ているところが多いなあと思ったのでした。若くして抜擢されてトップになると、越えなければいけない障害も多くなる。強くならざるを得ない。時にはかたくなにみえるその強さの下にある苦労をやはり思ってしまいます。

私は東京宝塚劇場で、あと1回、チケットが当たっていればもう1回、観劇予定ですが、同じ空間にいられることを満喫しつつ、また新しい「りょうちゃんらしさ」を発見したいです。

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