見出し画像

サン・セバスチャンを学び、大森を思う。

9月の#モリゼミ オープンレクチャーのテーマは、スペイン、サン・セバスチャン
世界的にも美食のまちとして知られるサン・セバスチャンから、私たちは何を学べるのでしょうか。

そんな思いで聞いていたオープンレクチャーですが、ある話から、私の心は、島根県大田市大森町へと向かっていました。

サン・セバスチャンが飛躍し始めるときの行政マンの言葉

その話というのは、主要産業が衰退し、数多くの戦争により安定しない都市だったサン・セバスチャンが、「ガストロノミー(美食文化)」を軸に文化を紡いでいった流れのなかで、小さな小さな灯だった「食革命」が地域全体のブランドになり、世界から注目されていく話。

料理人の『もっと料理を自由に!楽しく!』という思いから始まったヌエバ・コッシーナ。そこから続く、様々な取り組みは、とっても素晴らしいのですが、料理人界隈に限定されていました。
それを、サン・セバスチャンの観光局が官民連携による観光戦略を打ち出していくのがこのタイミング。
そのときのサン・セバスチャンの観光担当者の言葉がこちら。

ただ、観光客を増やせばいいわけではありません。
地域の文化を、地域住民とともに守りつつ、そこにある時間やものの価値を正しく理解してくれる質の高い観光が必要です。


これを聞いたときに、「あれ、これって大森町住民憲章では…!」と思いました。

私が想いを馳せた、島根県大田市大森町

島根県大田市大森町には、石見銀山があります。
日本では江戸時代、世界では大航海時代。世界に流通していた銀のおよそ3分の1は、石見銀山産だったともいわれています。
そして、2007年には『石見銀山遺跡とその文化的景観』が日本で14番目の世界文化遺産に登録されたまちです。

その大森町の住民憲章が、大好きなんです、私。

画像1

石見銀山大森町住民憲章
このまちには暮らしがあります。
私たちの暮らしがあるからこそ 世界に誇れる良いまちなのです。
私たちは
 このまちで暮らしながら
 人との絆と石見銀山を未来に引き継ぎます。
   記
未来に向かって私たちは
一、歴史と遺跡、そして自然を守ります。
一、安心して暮らせる住みよいまちにします。
一、おだやかさと賑わいを両立させます。
平成十九年八月 制定

ね。何か通じるものがあるように思いませんか?

サン・セバスチャンと大森の共通点

1)まちがなくなるという危機感
バスク地方が、上述のような産業の衰退や戦争による不安定な都市事情を背景に、美食文化を作っていったように、かつては鉱山として世界中に銀を供給していた大森も、1923年に閉山してから人口は減少の一途をたどり、1956年に大田市に編入されたことからもこのまちの文化を、歴史を守らなければという危機感が背景にあり、まちづくりがすすめられてきました。

2)住民起点の行政との連携
サン・セバスチャンでは、料理人の様々なチャレンジを行政が後追いする形で、ガストロノミーの観光戦略や欧州文化都市など様々な取り組みにつながりました。
大森でも、住民の有志によって文化財保存協会や観光協会が立ち上がり、資料館が開設されるなどの動きを経て、自治体が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、世界遺産の認定へとつながります。
住民と行政が、対等なパートナーシップで結ばれ、対話によって丁寧にまちが作られてきている点も、とっても似ているなと感じました。

3)『このまちが好き』という人たち
そして何より、この想いですね。
どちらのまちも『このまちが好き』があるから、自分たちの意思で、自分たちの手で、未来を創り出せている。
『このまちが好き』だから、文化や歴史も大事だけど、このまちの私たちの暮らしも大切。
だからこそ、大衆や世の中に迎合するのではなく、地域や社会と共存しながら発展することを目指す。
そこに暮らす一人ひとりの想いはそれだけでは小さいかもしれないけれど、人任せではなく自分たちで欲しい未来を創る。
それこそが、まちの未来につながるそんな場所だと思います。

大森のことは、これらの記事を全部読んでもらいたいです。
▶︎石見銀山 大森町住民憲章
https://iwamiginzan.jp/hope
▶︎石見銀山の文化財を守ろうとする地元の熱量が行政を動かした。大田市役所・遠藤浩巳さんに聞く、文化財を守り、活かし、伝えるために行政がしてきたこと、これからしていくこと。
https://greenz.jp/2019/02/27/iwamiginzan_endo/
▶︎再生した建物に人が住み、活用されることで町が元気になる。「中村ブレイス」中村宣郎さんに聞く、古民家再生事業40年の歩みがもたらしたもの
https://greenz.jp/2019/02/28/nakamura_brace/
▶︎ゆっくりと変化していくものは美しい。石見銀山生活文化研究所を創業した松場大吉さん、登美さんに聞く、ブランドとまちをつくるということ
https://greenz.jp/2019/03/07/iwamiginzan_seikatsubunka/

自分たちのUniquenessをどこに持つのか

サン・セバスチャンは「美食文化」をUniquenessとしました。
大森は「石見銀山とその文化的景観」をUniquenessにしています。
ふと考えると、美食や銀山は世界にたった1つではありません。
でも、どうして、Uniquenessになれているのか。

それは、美食や銀山を取り巻く人々の想いや活動をがあるから…かな。

では、日本は、自分のいる地域は何がUniquenessと言えるんでしょう。
実は近くにあって、見えていないだけなのかもなあ。
なんて考えも浮かんでいます。
そのヒントになるかもしれないまちは、実は近くにありました。

みなさんぜひ大森にお越しください。

そして、これは余談ですが、考え出したらいてもたってもいられなくなったので、レクチャーの後、実際に車でびゅーんと大森までいってきました。
大森の街並みを歩き、美味しいパンを購入し、
日本三大鳴き砂の海岸、琴ヶ浜へ。
やっぱり大好きなまちです。

画像2

▶︎人口400人の町から世界へ。ドイツパンのマイスター・日高晃作さんがたどりついた、小さな町での理想の暮らし
https://greenz.jp/2019/02/25/backerei_konditorei_hidaka/

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!