ひと夏の人間離れ【#毎週ショートショートnote】
廃病院でお化け役として肝試しに参加することになった。クラスの目立つやつが女子と仲良くしたいがために、数名の男子に声をかけたのだ。
「千円分のギフトカードやるから。ちょっと驚かすだけでいいからさ」
返事を待たずに女子達と盛り上がっていた。悔しいがアルバイト禁止の高校では報酬が千円でも有難い。それに、参加者の中に自分が好きな女子もいるのだ。驚かすと見せかけて仲が深まるのを邪魔してやりたい。
俺達は病院内に散らばって隠れた。
「花岡さんにあんなにくっつきやがって……見てろ」
ドアが少し開いている病室へ移動し様子を窺う。
ーーねえ、手伝ってあげるよ。
「えっ?」
ーー嫌なやつなんだろ?
病室にいた青年の唇から血が流れ、入院着を赤く染めた。
「ぎゃああああ」
俺は人間離れした逃げ足で一目散に病院を出た。
ーーふん、生き生きしてるんじゃねえよ。
勿論、報酬は貰えなかった。
了
#毎週ショートショートnote
#ひと夏の人間離れ
#肝試し
あとがき
人間離れ=人間じゃない=幽霊!
最初はそんな安易なところから書き始めました。
幽体離脱もありだったかなあ。もにょもにょ…
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