なぜInsureTechへの投資が加速しているのか

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保険といえば、伝統あるブランドとリスクに敏感な業界として知られており、素早い変化と古きを破壊していくスタートアップにはフィットしないように見えるかもしれませんが、ベンチャーキャピタリスト達はそうは思っていません。
今年に入ってこれまでのところ、60億ドルがアメリカの保険/insuretech業界へ投資されています。
今年は残り2カ月ありますが、すでに2020年トータルを32%以上上回っています。

シード、アーリーのみならず巨大なレイトステージでの資金調達が行われたり、ベンチャーバックのinsuretechユニコーンがいくつかエグジットするなど、あらゆる側面で動きが活発化しています。
マーケットが成熟するにつれ、投資家はこの分野での投資はリターンがでることを理解し始めています。
「"だれかこのinsuretechの領域で数十億ドル規模の会社を作れた人はいますかね?"のような質問に、起業家が答える必要がなくなってきました。」
とSemper Virens Venture Capitalでパートナーを務めるHonigは言います。
彼はInsuretech Connectカンファレンスシリーズの創業者でもあり、insuretechでは昨年多くのスタートアップが上場したことも指摘しています。
それらすべてが上場後よいパフォーマンスを出しているわけではありませんが、いくつかの会社はいまだ数十億ドル規模の企業価値を維持しています。

今ある疑問は、何を次に作れるのか?ということです。
近年の資金調達データを見ていると、人気のあるアプローチは保険のマーケットプレイスでのニッチな市場にフォーカスする方法や、既存の大企業に対し、変化の激しい市場で競争力を維持するためのツールを提供する方法などです。

Funding has been rising for years

USにおけるinsuretech領域における資金調達はここ最近拡大し続けています。
insuretechへの投資は、5年前は10億ドルを超えたばかりでしたが、現在ではその数倍の規模まで拡大しています。

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投資先は240社に及んでいますが、今年は超大型のラウンドもあり、総調達額に大きな影響がありました。
ヘルスプランを提供するCollective Health社は2.8億ドルを、起業家にフォーカスしたNext Insurelanceは2.5億ドルを、サイバー保険のCoalitionは3.8億ドルを2回に分けて調達しました。
US市場での拡大は、世界市場での拡大も意味しています。

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Niche offerings gain traction

USにおけるスタートアップで直近目立っているトレンドの一つはニッチ志向の保険スタートアップが増加していることです。
これはギグエコノミードライバーへの補償、サイバー保険、小規模運送業など狭い範囲での顧客を対象とする企業を含みます。
Honigはこのトレンドを、2010年代半ばに多くが規模を拡大し始めた第一波に続く、insuretechや保険スタートアップの第2波だと言います。
第一波が幅広いソリューションで大きなセグメントをとらえに言っていたのに対し、この次の波はニッチな機会を捉えることで立ち上がり始めています。

このニッチな市場を狙う流れは、アーリーステージでの巨額調達にも表れています。
メンタルヘルスケアを提供するHeadway、Uberの運転手やその他ギグエコノミープラットフォーム向け自動車保険のBuckle、テナントや地主向けに補償金の代わりとして使える保険を提供するLeaseLockなどです。
サイバー保険の分野でも、At-Bay、Corvus Insurance、Cowbell Cyber、Coalitionなどが巨額の資金調達を行いました。

ニッチ領域以外に人気だった投資テーマは、既存プレイヤーが最新テクノロジーに対応するためのツールです。
「保険のあらゆるワークフローの段階で、それを変えよう、デジタル化しよう、改善しようとする起業家が増えています」とAmerican Family VenturesでMDを務めるKyle Beattyは言います。
この既存企業をサポートするビジネスモデルでも巨額の資金調達がが行われています。保険会社へSaaS型のインフラとAPIを提供するSure、保険会社が利用する航空画像分析を開発するArturo、保険証の真偽や有効性の検証を自動で行うTrustLayerなどです。

Public offerings have not gone that well

資金調達をしているのはInsuretechのSaaSスタートアップですが、上場しているのは保険プラットフォームです。
そしてそれらは浮き沈みがありました。
エグジットや資金調達が増えてくると、上場後のスタートアップも順調なのが普通なので、これはショックでした。
およそこの1年で、少なくとも4社のVCバックのUSユニコーンが上場しました。医療保険のOscar、車保険のRootとMetromile、住宅保険のHippoです。それらすべてが初値から急落しました。
Metromileは2月のピーク値から80%以上も下げました。

Honingは、この上場後のパフォーマンスの原因は、彼らが上場すると株価が完璧さ・完全さで評価されてしまうからだと分析します。上場株の投資家は、リスクのあるビジネスに対し警戒する傾向にあり、少しでも不調になるとさらに許容できなくなるのです。

Risks and rewards ahead

保険というのは、買い手も売り手も誰もこれが使われないことを願う唯一の産業です。悪事に備えることは重要ですが、誰も悪事は起こってほしくないのです。
保険屋にとっては、事業を成り立たせるためには全ての給付申請をカバーできるようにリスクを正確に予測することが必須です。
この業界のスタートアップにとっては、これは非常にチャレンジングです。なぜなら予測の根拠となる給付申請の履歴が十分でないからです。しかしながら、これを正しく行えれば、ビジネスはうまくいきます。
「一番難しいのは、事業の成長と審査の厳格さのバランスを取ることです」とBeattyは言います。
素早く安定して成長することができる企業に対しては、VCからの資金は潤沢に用意されています。

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