VCにおけるパッシブ運用

Tomasz Tunguzのブログよりお届けします
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VCにおけるパッシブ運用(市場全体の値動きと同様の投資効果を目指す運用)というのは比較的新しいアイディアです。
しかしそれが業界を変えつつあるのです。
レイターステージの投資家はVCの領域に踏み込み始めており、スタートアップのインデックスファンドのようになりつつあります。
もし上場株市場が何らかの兆候となるのなら、このパッシブ運用のアイディアは今後も続いていくでしょう。

[USにおける株式ファンドのパッシブ運用比率の推移]

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上場株においては、パッシブ運用をするファンドの運用額はマーケットの合計額の54%を占めています。
従来、VCというのはアクティブなアセットクラスでした。
投資家はボードシートを確保し、ガバナンスに責任を持ち、戦略にアドバイスをし、従業員候補やポテンシャルカスタマーを紹介するなど、様々なことに関与してきました。
PMFを確立し、再現可能なビジネスを作り上げている事業の初期段階では、多くのスタートアップがこれらのベネフィットに価値を感じています。
ここ20年の間で流動化(IPOやM&A)への期間は、4~6年から11~13年へと長期化しています。

上場やM&Aといった出口まで残り僅かとなってくると、この積極的なマネジメントはあまり関係なくなります。
取締役会や経営メンバーはそろっています。
マネジメントチームは、素早い投資プロセス、より巨大な額のラウンド、IPO後も含めた中長期的な株式の保有に惹かれるようになります。つまり、パッシブ運用をするVCマネーのことです。

グロースキャピタル=パッシブ運用VCというわけではありません。レッドポイントのように、グロースファンドでありながらアクティブVCとしても活動するファンドもあります。
しかしながら、グロース投資のほとんどはパッシブ運用にまわるでしょう。なぜでしょうか。グロースステージのラウンドは数は小さいものの、規模はアーリーステージの10倍以上となるからです。

まだベンチャー市場におけるアクティブ運用とパッシブ運用の分岐点に関して分析は行われていませんが、今後はされることでしょう。公開市場のように、半々になるでしょうか?まだ答えはわかりません。しかしながら、こういった考察がされることは、VC業界がアセットクラスとして成熟してきたサインと言えるでしょう。

雑感

クロスオーバー投資家がVCのレイトステージに入ってくるようになり、VCはよりアーリーなステージに移行していることは、これまでお伝えしたニュースでも指摘されている点でした。
このクロスオーバー投資家が、未公開株においてもパッシブ運用を行っていくのでは?という指摘は面白い視点ですね。
米国ではレイターステージでのセカンダリ市場が盛り上がってきているのもこれを可能とする一因でしょう。


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