私のワールドがDMCAテイクダウン!?「意義申し立て」で取り戻せます!

はじめに

  VRソーシャルサービスゲーム「VRChat」は利用規約上、アメリかの法律が適用されますので、クリエイターが著作権侵害被害を受けた場合「Digital Millennium Copyright Act」略称DMCAに基づきVRChatの運営会社のVRChat Inc.に当該侵害行為の排除するなど著作権保護措置を要請することができます。例としてはPublic化禁止条項が利用規約に入ってるワールドデータを何者かがPublic化させた場合、そのワールドをVRChatから取り下げてもらうことが考えられます。しかし、実際のDMCAによる著作権保護措置は権利者から保護要請が来て、「要請されたデジタルコンテンツが本当に権利者の著作権を侵害しているか調べた上、これに必要な措置を行う」より、「とりあえず下げておく」のが一般的なので権利者の権利濫用のトリガーにもなっています。それにより利用規約上禁止されてないコンテンツや、公正利用に認定されるコンテンツがDMCAにより勝手に排除された場合は作成者も「作成者の権利を保護する」ために対抗措置を行う必要があります。この記事ではVRChatを中心にDMCAによる著作権保護措置に対抗する方法についてご説明させていただきます。

「Digital Millennium Copyright Act」とは

  DMCAは1998年10月28日、アメリカで作られた自国内デジタルコンテンツの著作権保護のための法案です。この法案はただ著作権そのものの保護するだけでなく、著作権保護のために技術(コピー防止、不正利用防止技術など)を無効化したり、迂回する装置を製作、輸入、流通すること、制御、実装することなどを全部禁止し、デジタルコンテンツの著作権保護に向けた幅広い法律的根拠を定めています。またコンテンツ作成者からコンテンツを提供してもらったサービス提供者はそのコンテンツの権利者からコンテンツ削除要請を受けた場合、「通知及び掲示中断」手続きに従って適切にその処理をしたのならサービス提供者の責任は免除されるという条項を新設し、著作権保護に対するサービス提供者の積極的な協力を誘導しています。

  DMCAの下で定められた「通知及び掲示中断」手続きは以下の通りです。
1.コンテンツの作成者に権利者からの削除要請でコンテンツが削除(DMCAテイクダウン)されたことを通知
2.作成者の異議申立てがあれば復旧
→ この場合、権利者と作成者ともに自分の連絡先などの身分情報を提供しなければならない

  この手続きでサービス提供者が権利者の著作権侵害コンテンツ削除要請を処理するに当たり、コンテンツに対する法的権利の検討は求められません。また、サービス提供者が正当な理由なしで削除をしなかった場合、著作権侵害幇助の責任が生じる可能性があります。

DMCAテイクダウンの問題点と異議申立て方法

  DMCAテイクダウンはサービス提供者によりますが、大抵権利者のコンテンツ削除要請が正当かどうかを問わず行われるという致命的な問題があります。そのため「通知及び掲示中断」手続きにも記載されている通り、作成者の異議申立てがあれば原則復旧という作成者の権利を保護するための装置が備えられています。

  DMCAテイクダウンをされたコンテンツ作成者はサービス提供者からテイクダウンのお知らせを受けることになります。このテイクダウン措置に対抗するためにはコンテンツ作成者も「カウンターお知らせ」を作成し、サービス提供者に送る必要があります。「カウンターお知らせ」に記載するべき情報はサービス提供者によって異なり、VRChatでは以下の情報が求められます。

• 作成者の物理的または電子的署名*
• DMCAテイクダウンが行われたコンテンツの識別情報**・DMCAテイクダウンが行われる前のコンテンツの位置
• 作成者はDMCAテイクダウンはミスまたは誤解によって行われたことを信じている上、偽証に対する処罰を認めるなどの陳述
• 作成者の名前、住所、電話番号
• 作成者の住所または作成者に適用される司法区域がアメリカ以外の地域の場合、作成者はVRChatが属する司法区域のUS連邦裁判所の管轄権に同意し、権利者または権利者の代理人のサービスプロセス***に応じるなどの陳述

* 本名のフルネームを記載
** ワールドの場合、ワールドの名前、作成者、掲示日、ワールドのIDなど当該コンテンツを特定できる情報
*** 訴訟または法律が定めている紛争解決方法などを意味

英語原文
Counter Notification
• Your physical or electronic signature;
• Identification of the material that has been removed or to which access has been disabled and the location at which the material appeared before it was removed or access to it was disabled;
• A statement under penalty of perjury you have a good faith belief that the material was removed or disabled as a result of mistake or misidentification of the material to be removed or disabled; and
• Your name, address, and telephone number, and a statement that you consent to the jurisdiction of Federal District Court for the judicial district in which the address is located, or if your address is outside of the United States, for any judicial district in which VRChat may be found, and that you will accept service of process from the person who provided the Takedown Notice or an agent of such person
- VRChat Copyright Policy 抜粋 (https://hello.vrchat.com/copyright)

  下は上記のカウンターお知らせに求められる情報を込めた例文です。このようなメールまたは手紙をサービス提供者に送ることで、DMCAテイクダウンを受けたコンテンツを復旧させることができます。ちなみに[]は作成者とコンテンツによる部分で、ローマ字を前提にします。

Dear [サービス提供者の名前],

I am writing to you to avail myself of my rights under the Digital Millennium Copyright Act (DMCA). You recently provided me with a copy of Notice of Infringement from [権利者の名前].
This letter is a Counter-Notification as authorized in § 512(g) of the U.S. Copyright Law, for request that the material be no longer remove or disabled.

[コンテンツの識別情報]

I swear, under penalty of perjury, that I have a good-faith belief that the material was removed or disabled as a result of a mistake or misidentification of the material to be removed or disabled.

My contact information is as follows:

Name: [名前]
Address: [住所]
Phone: +81 [電話番号]

I consent to the jurisdiction of the US Federal District Court for the judicial district of California, and I will accept service of process from the person who provided the DMCA notification or an agent of such person.

Best regards,
[名前]
[日付]

  カウンターお知らせをサービス提供者が提示している適切な方法で提出すれば、作成者のコンテンツは近いうちに復旧されます。権利者が復旧されたコンテンツをまた削除するためにはアメリカの裁判所に訴訟を掛ける必要があります。正当でない件でDMCAテイクダウンをさせたなら海外の裁判所にての訴訟までいくことはほぼないので、これで作成者のコンテンツを守ることができます。

終わりに

  今までDMCAテイクダウンの対抗方法としてカウンターお知らせという異議申立てを送り、テイクダウンされたコンテンツを復旧する方法について調べてみました。DMCAはデジタルコンテンツに対し権利者と作成者どちらの権利保護にも相応の装置を備えていますが、これらを活用するに当たっていくつかの注意点があります。

  まず「テイクダウンお知らせ」、「カウンターお知らせ」共に各当事者の身分情報を求めますし、自分の陳述に善意の心があることを宣言するのでどちらかが法律に反してDMCAテイクダウンを濫用した場合、それに対する責任を問うことは難しくありません。偽りのない主張はもちろん権利者として、または作成者として知っていなければならない情報(当該コンテンツの詳細内容、利用規約、法律が定めた著作権利用特例など)に無知だったことも帰責事由になりえますので十分慎重に検討した上、行動することをおすすめいたします。

  またどのお知らせでも英語にする方がミスリードの可能性を減らし、より迅速な対応を期待できるなどの面で望ましいです。日本語専用窓口があるならそちらを活用することもいいでしょう。DMCAテイクダウンを行う、もしくは異議申立てを送る際に法律的に不明な部分があるなら、アメリかの弁護士または日本のアメリカ弁護士に短くてもいいので相談をしてみるのもいい選択です。

  DMCAテイクダウンの対抗を含めて自分のコンテンツ利用に堂々とできる第一歩はそのコンテンツについて深く理解し、またコンテンツを利用するに当たりどんな保護を受けれるかを知ることだと私は思います。この記事でご説明させていただきました内容の他にもコンテンツの形と利用方法によって作成者も権利者に劣らない様々な法的保護を受けられますので、何かのお困りになったときは慌てずに自分の権利を守る方法を積極的に探してみましょう!


※ 当記事のは情報提供のためのもので法的根拠としてはお使いいただけません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?