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ヒューマンオーケストラ

やっと届いた人もいれば、どうしても見届けられなかった人だっているから、またいつか会える日が来ないかと願ってます。6/16、CRYAMY日比谷野外音楽堂公演までの一週間の日記を書く。タイトルは「世界」がリリースされる前、CRYAMYのセカンドアルバムの製作が発表された当時の告知から。このアルバムタイトルもカッコよくて好きだった。当時は「月面旅行」とテリトリアル、普通、物臭ぐらいしか曲知らなかったけど、次のアルバムがスティーヴ・アルビニのプロデュースになるというニュースを知って気になった。リリースされたセカンドアルバムにとんでもなく食らってしまい、野音が特別な公演になるとメッセージがあったため意を決してチケットを買った。


これまでの人生で自分の住んでいる街を出てライブを見に行ったことは一度しかない。今年の1月にあったYOWLL主催の企画にゆれるが出演することを知って神戸まで見に行ったとき、その一度だけ。当時の思いの丈は散々書いたのだが、このときのゆれるの鮮烈さはライブに行く面白さを初めて知ることができたエピソードだった。150人も入るかどうかの狭いフロアで整番8で見た3人の殺気は映像では残せないインパクトだった。この日は「フェイクファー」が迸り倒していた。同じ土地からこんな台風みたいなバンドが生まれたのかと改めて不思議に思った。世界に名が知られてるかはどうでも良くて、自分の中での生きる伝説というのは彼らのことです。もう少しだけ遡ると、ライブは行けるときに行かなきゃと思ったのはチバユウスケの死去が大きく影響している。結局チバさんには一度も会うことができなかった。


その週は仕事も落ち着いていて、家事や親戚の手伝い、自分の趣味に時間を使うことができた。農作業をしていると思うが「スローライフ」というのは体力的に楽なわけではないということだ。野菜を育てているとスーパーで売られている1個〇円にどれだけの苦労が詰まっているのかを知れるのが面白い。物の価値を知ることで優しさが生まれたらいいのに。コンロ掃除は目に見えて汚れが落ちるから意外と楽しい。家庭内で掃除は自分の担当みたいなところがある。夫婦で仲良くいられるために気を付けていることは「洗剤やペーパーの詰替え・補充は必ず自分がやる、相手にやらせない」ということ。向こうが気付いてるかは知りません。

6/16当日、東京駅についたらまず土産品を買うためにグランスタ東京へ走ったが地下への降り方が全然わからず、いきなり東京に飲み込まれるのかと戦慄した。結局買えたのだが野音の物販につくと500人並んでいて、そのうち列が進まなくなった。どうやら先行販売を終了したとのことで、夕食を買うとか飲み物を補充するとか諸々の計画は大頓挫かました。

リハで1曲だけ聴いて、あとは会場からの爆音をイヤホンでシャットアウトした。たくさんのファンたちがこの曲が聴きたいと毎晩メッセージを届けようとしていて、その人たちの願いが叶ってくれと祈っていた。数日前に見たWASTARがあまりにも良くて、これはいつか誰かの支えになるんじゃないかとCDを買わずにはいられなかった。


開演するとレイさん、大森さん、タカハシさんがそれぞれ位置につき楽器を持ったところで、カワノさんが数秒の間姿を見せなかった。どこから出てくるのかと思ったら普通に舞台袖から出てきたけど、なんというかモノノケみたいな印象を受けた。「WASTAR」の力強くも悲痛な叫びから始まり、会場の緊張感は今までにない張り詰めた感じを受けた。それでもSonic Pop、まほろば、光倶楽部と進んでいくうちに会場の熱気も高まったし俺も拳を掲げていた。光倶楽部はさすがに気持ちが良かったが、終わってからはこんな思いを背負わせるのも少し情けなく感じてしまった。

時折挟まれるMCはどれも過去を振り返ってばかりで、明日が来ない人かのようで恐ろしかった。野次も時折聞こえたけどほとんど反応がないように見えたのも切なかった。友達の話を少し語ってからの物臭、Delay、あと一番聴きたかったGOOD LUCK HUMANも夕暮れの中で演奏してくれた。タカハシさんの後ろに四角く窓みたいに陽が差してしたのも印象に残った。

一度舞台袖に戻ってから再び出てきてからの演奏は「戦争」のキラキラとしたイントロは特に心に残った。あとは完璧な国、そのあとの天国。正直ここまでの流れがあまりにも綺麗で「これ葬唱演奏しない可能性ある?」とまで思ってしまった。3度目の登壇直後に予想は外れて葬唱を見舞われた。圧倒的な演奏で…プラネタリウムでも街月でも葬唱の負のエネルギーが飛ばされることは無かったのだが、ここで演奏された「マリア」がこの日のカッコよさのピークだった。アウトロで生きろと何度も叫ぶ姿には年甲斐もなくウォォオオ!!と叫んでしまった。


この日のMCではツアーや過去の公演で見てきたファンへの想いや、自分の内面や環境の変化と浮き沈み、それでも君たちに対する気持ちに嘘は無いとハッキリ言い切っていた姿がとても美しかった。「大事なことは案外単純なことだったりする」「いい人もちゃんといるから」と自分にも言ってんのかな、という印象を受けた。裏返すと一貫して周りやこれまで支えた人たちへの感謝を公演の最後まで述べていたようにも今となっては思えてくる。

ラストに演奏されたのは「世界」だった。間奏ではたくさん叫んでいたが周りも熱量高くマイクでも拾えない絶叫だったのでほとんど聞き取れていないが、みんなずっと見守っていた。「泣いたって綺麗だ あなたは」の後の短い間奏の時だったか、カワノさんがおもむろにレイさんとタカハシさんのマイクスタンドを動かして客席側に向けていた。ここまで野次に無反応だったとは思えない動きで驚いたけど、しっかり応えたいと思った。叫んでみたところであんなカッコいい声は出ないし、想いが届いたのかも今もわからないけど、見たかった景色が見れていたらいいなと今でも思ってます。野音本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。


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