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ゆりかごで遊ぶ


16年間、連れ添った人がいる。
彼女は俺の友人である。
子どもである。母親である。弟である。
姉である。猫である。ゾウである。
妻である。

夫婦というのはただの関係性に過ぎない。
彼女が俺にとっての何者か。そこに夫婦と言う関係性は必要ない。
彼女は彼女である。俺はそれを愛おしく見守っている。

子どもが親から離れるように。親が子どもから離れるように。関係性は変化するもの。

甘美な愛欲の時代を過ぎ、お互いが何一つお互いを所有していないことに気づく。
ひとりの人間として、尊重し、大切にし、居場所になっていく。
そよ風や陽だまりのような、優しさと安らぎになっていく。

いつまで経っても、親と子、兄妹、親友
同じように、死に別れようが、生き別れようが、音信不通になろうが、どんな関係性だろうと。
愛しい人にかわりはない。

制度の中で結婚や離婚をする。それは「名前」を変えているだけ。
深い底に流れているのは、あなたを愛した時間と、その時間と共に生きてきた自分がいる。

あなたはとっくに、年齢も、性別も、もしかしたら種族すらも超えて、俺に息衝いている。

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