日記_朝

目覚めはいつも曖昧に、だが突如として私に襲いかかる。
まだ身体は寝ていて、ただ意識だけが「朝の湖」にただポツンと浮かんでいる。水面に波を立てることはなく、ただ平穏な湖を見つめていたい。
だが、現実はいつだって酷なものだ。湖にノイズが響き渡る。神聖な湖はいつも数秒しか続かない。

〈生活〉が始まる。
私の朝はどれほど神秘に包まれているのか。
そんな夢を、期待を毎朝考えている。

だが、いつも現実は酷で、今日もラジオ体操の朝だった。
昨日に続き、なんとも朝にしては野太いような声が部屋に響き渡る。
「さあ、今日も元気にやっていきましょう」と言われているようだ。

生活の対義語は「神秘」だな、と心のどこかで感じながら、じきに心は"湖"から姿を消す。

部屋は閉じ切っているのに、鼻と目から"朝の空気"が侵入してくる。
ETCゲートのようにヒュンヒュンと素直に入ってくる空気たちは、瞬く間に脊髄を廻り、全身に染み込んでいく。

寝ている身体が朝への、世界への「同期」を終えたとき、私の本当の生活が今日も始まり、私は顔を洗い出したのだ。


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