35歳、のこと。

35歳になった。

ちょうどよく大人で、でもまだ大人の中では若い、この立ち位置が今、とんでもなく適温。熱くもなく、ぬるくもなく。いつまでも浸かってたい。やがてくる40代の前に、しっかりあたためておかねば。

なった、と言っても実はもうひと月以上前のことだったりして。最近この適温さが徐々に身体に染み渡ってるというか。あと2年もすれば、40代の足音が聞こえてくるのだろう、そしてその音は30代を迎える前と同様にわたしを苦しめることになるのだろう。

わたしはとにかく30歳を迎えるのが怖かった。それは、その頃は「恐怖」という名のひとかたまりの大きな何かだったのだけど、今は何がそんなに怖かったのかよくわかる。年老いていくのが怖いだけじゃない、その年に追いついていないことが怖かったんだと。20代前半で1度、冗談じゃなく、生死をさまよったわたしからすれば、なんなら年をとれることが奇跡みたいな話だし、むしろ喜ばしい気持ちもあるのに、それでも頭から離れることのない恐怖。30歳になるまでに仕上げておきたかった自分への宿題が全く片付いてないことに焦ってたんだと思う。

んで、30代迎えてみたら、わたしが決めてた期限って何なの?はぁ?30までに?知らんがな!という開き直りで意外と楽しめてる、ような。意味のわからないなめられ方をされなくなっただけでも30代最高!だし、40までになんとかすればよくない?それよりワイン飲もうぜ、日本酒ひっかけようぜ、料理の上手な友人と昼間から持ち寄りホームパーティ、幸せじゃね?てのが今、現在。持ってないものもあれば持ってるものも少しだけどある。予定通りにはまったくすすんでないけど、35歳の自分は相当好きだ。気に入っている。

しかし、40代はやってくる。その足音はまだ聞こえないだけで確実に近づいてきているのは確かなのだ。それまでにはいくらなんでも仕上げておかなくてはいけない宿題がたまっている。どうしよう、30代はなんとかやり過ごしたが、40代、もう同じパターンは通用しない気がする。そんなこと考えたこともなかった!と言えるほうの側に生まれたかった。それか、圧倒的武器多数。わたしはわたしであること以外の武器が何もない。ふとそんな風に思った。

30になるのが怖かったのは、わたしがわたしであること、その中でも唯一と言っていいくらいの武器『若さ』の有効期限が切れてしまうというのも大きかったと思う。何もないわたしのような者がすがりつく、『いしのおの』くらい弱い武器。ああ、『勇者の剣』がほしい。

わたしのことは大好きだけど、自己愛を武器に変えたら終わりだ、と思う。それなりに身につけよう、色々と。まわりのPCスキルの高さと、自分の無知さに驚いた、そんな最近。

35歳、のこと。

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