見出し画像

ラーメンのおいしい食べ方

2021年1月。関東にも初雪予報が出て、朝から落ち着かないスタートだった。子どもを送り出して、図書館に本を返しにいき、簡単な買い物を済ませたら、もう体はとうに冷え切っていた。

熱々の、ジャンクフードが思い切り食べたくて、即席ラーメンを作ることにした。ダイエットは通年掲げている目標であるので、ブロッコリーとキャベツも一緒に茹でて罪悪感には気づかなかったことにする。そして、なんだか無性に、コショーをたっぷり入れたくなった。

「コショーをたっぷり入れるとおいしいんだよ」

そう教えてくれたのは、小学校1年生から友達だった、あーちゃんだ。毎日学校が終わると、彼女のマンションに行き、ゲームをしたり漫画を描いたりした。彼女の家は、中高生のお兄ちゃんが2人いて、猫5匹が堂々と寝ていた。わりと散らかっていて、客に気を使わせないところがお気に入りだった。

家では禁止されているインスタントコーヒーを飲めるところも好きだった。あーちゃんが作ってくれるそれは、ミルクと砂糖がたっぷり入っていて、まるで安くてビビットな駄菓子みたいに魅力的だった。あーちゃんのお母さんは、たぶん優しかったけど、ちょっと夜の香りがして、髪を無造作にまとめてタバコを吸う姿がサマになるような、そんな女のひとだった。

ある日、夕方におなかがすいたねと話していたら、あーちゃんがインスタントラーメンを一人分作ってはんぶんこしてくれた。なんの具も入っていない、ただの醤油ラーメン。横にはテーブルコショーが添えられていた。そして、先に述べた秘訣を彼女は簡単に伝授してくれたのである。夕飯間近の夕暮れに食べる、野菜もないラーメンにコショーたっぷりだって!?こんなもの食べたなんて、絶対に母親には言えないと思いながら、言うとおりにしてみたら、なんとまあその美味しいこと!しょっぱいスープにピリッとしたコショーが刺激をくれて、一旦食べ始めたら箸が止まらない。スープを飲み干すころには、私の中で感動が確信に変わっていた。ラーメンにはコショーたっぷり。できるだけ、たっぷり。

あーちゃんとは、小学校高学年ころからもう遊ばなくなって、中学では別々のクラスだったので、廊下でたまに見かける程度になった。もうどこにいるのかわからないけれど、それでも寒い季節になるとやっぱり思い出す。そして、コショーたっぷりのおいしいラーメンを、今も食べているといいなと思う。

あなたのサポート、いつでもウェルカムです!とっても喜びます!